Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「1937年のリセッション」のリフレ派的解釈

リフレ派の世界観が表れている記事です。


【第67回】 米国で始まったマネタリーベースの減少が意味すること | 安達誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」 | 現代ビジネス [講談社]

法定準備率の引き上げによって、金融機関は、資金運用による信用創造に大きな制約を受けることになったため、これが借入依存度の高い中小企業や低格付け企業の資金繰りを急激に悪化させ、それがきっかけで株価が暴落したのであった。マネタリーベースは、金融機関が信用創造を制約され、市中での金回りが悪くなった時点で急減したが、株価はマネタリーベースから約半年遅れで暴落した。

これについては昨年の記事で取り上げています。


デフレ不況脱却途上における財政引き締めのインパクト:1937~38年の景気後退 - Think outside the box

要点は、

  • 預金準備率引き上げ(→超過準備減少)の引き締め効果は確認できない
  • 景気後退の主因は、財政均衡に向けた増税歳出削減の引き締め(財政赤字の対GDP比:1936会計年度5%→1938会計年度0%)
  • 金融面では、海外から流入する金を財務省が不胎化(→マネタリーベースを増やさない)したことの影響が大きい

です。2年間でGDP比5%分の財政赤字縮小*1を無視して、超過準備の法定準備への振り替えで景気後退を説明することには無理があります。結論先にありきの意図的な誘導です。

f:id:prof_nemuro:20141121182451g:plain

f:id:prof_nemuro:20141121222906g:plain

当時の状況は下の記事が参考になります。


Sequestration: Premature Austerity And The 1937 Recession - Business Insider

…, clearly the spending was needed.

銀行が中央銀行から供給された超過準備を'lend out'する、あるいは原資として信用創造するというメカニズムを想定しているものと思われますが、準備預金は銀行が'lend out'して市中に流出させるものではありません。

FRBの懸念は、景気の加速度的な改善や資産価格の急騰によって、超過準備が市中に流出し、景気過熱や資産価格高騰(バブル)をさらに加速させてしまうという点だった。

中央銀行が独占的に供給するマネタリーベースの減少が、金融機関の信用創造機能の低下を意味するというのも意味不明です。

マネタリーベースの減少が今後も続くようであれば、金融機関の信用創造機能が何らかの理由によって低下していることを示唆する

預金準備率引き上げが銀行の信用創造を制約していなかったことは、近年の研究で明らかになっています。


Did the Reserve Requirement Increases of 1936–1937 Reduce Bank Lending? Evidence from a Natural Experiment | All About Finance

Member banks were able to mitigate the contractionary effects of the Fed’s reserve requirements by selling securities.

During this period, monetary policy was tightened not only due to the Fed’s doubling of reserve requirements, but also due to the Treasury’ sterilization of gold inflows from Europe to the U.S. bled reserve requirements. Fiscal policy also became tighter as the Roosevelt administration attempted to achieve a balanced budget by reducing the growth in government spending and increasing taxes.*2


Did Doubling Reserve Requirements Cause the Recession of 1937-1938? A Microeconomic Approach - Working Papers - St. Louis Fed

We find that to the extent that banks increased their reserve ratios during the period of reserve requirement increases, the increases in reserve demand between June 1936 to June 1937 reflected predictable influences related to the structure of the banks, and not increases in reserve requirements imposed by the Fed. This evidence lends support to the Fed’s interpretation of the effects of the reserve requirement increases, and casts doubt on the view that the doubling of reserve requirements caused the recession of 1937-1938. Other policy actions, especially reduced monetary base growth (due to the December 1936 sterilization of gold flows) and the 1936 tax rate increases, seem more likely culprits in causing the recession.

「ブタ積みの増減が景気変動を引き起こす」と信じ込むと、世界がそのように動いているように見えてくるのでしょうか。

f:id:prof_nemuro:20141121190655g:plain

f:id:prof_nemuro:20141122121633g:plain

f:id:prof_nemuro:20141122123922g:plain

"Quantitative easing"より"large-scale asset purchases"の方が、より実態を伝える表現のように思えます。


1997年の二の舞は避けられる:日経ビジネスオンライン

 

おまけ

下のグラフの橙色の矢印が、日本の量的緩和の具体的意味です。銀行等の保有する国債が日銀当座預金の超過準備(金利0.1%)に置き換わっています。

f:id:prof_nemuro:20141121173541g:plain

*1:日本の1997年度の「9兆円の負担増」を2年連続で行ったようなもの。これを無視することはあり得ません。

*2:強調は引用者