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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

政策の空白カテゴリとサイレントマジョリティ

政治・歴史・社会

衆議院選挙への関心が低調だと報じられていますが、「政策面で支持できる政党が無い」有権者(≒無党派層)の多さ、裏を返せば「相当数の有権者の要求に対応した政党の不在」を反映したものと考えられます。

そこで、政策を外交と内政に二分し、外交と内政それぞれにおいて対立軸を想定してみます。

外交の対立軸は、宥和政策(弱腰外交)への賛否になります。たとえば、いわゆる「従軍慰安婦」や「労働者強制連行」に関して韓国の謝罪・賠償要求に応じるか応じないかです。便宜的に、前者をハト、後者をタカと表現します。

内政の対立軸は、先進国を蝕むネオリベラル思想への賛否になります。

totb.hatenablog.com

株主価値最大化のために従業員を搾取することを「正しい」とするのか(IBM)、従業員を含むステイクホルダーにフェアに報いることを優先する(Johnson & Johnson)のかということです。

失われた〈20年〉

失われた〈20年〉

失われた〈20年〉 (岩波書店)

「企業は,株主にどれだけ報いるかだ.雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」

「それはあなた,国賊だ.我々はそんな気持ちで経営をやってきたんじゃない」

94年2月25日,千葉県浦安市舞浜の高級ホテル「ヒルトン東京ベイ」.大手企業のトップら14人が新しい日本型経営を提案するため,泊まり込みで激しい議論を繰り広げた.論争の中心になったのが「雇用重視」を掲げる新日本製鉄社長の今井敬と,「株主重視」への転換を唱えるオリックス社長の宮内義彦だった.経済界で「今井・宮内論争」と言われる.
…経済界にとってはここが大きな節目だった.日本型経営の維持か,株主利益重視の米国型に変えるのか,経営者たちが必死で探っていた時期だからだ.

日本に株主価値最大化の思想が広まった切っ掛けはバブル崩壊金融危機でしたが、アメリカでも事情は似ています。第二次大戦後、圧倒的な競争力を誇っていたアメリカ企業も、1970年頃になると日独企業の追い上げなどによって経営の見直しを迫られました。そこに登場したのがフリードマンの株主価値最大化だったわけです。

「溺れる者は藁をも掴む」と言われるように、事業に行き詰った経営者がM資金詐欺に引っ掛かったり、人生に悩む人が怪しい新興宗教にはまってしまうことがありますが、アメリカに続いて日本も「フリードマン教」に洗脳されてしまったことになります。日本の場合、企業行動が「増益でも人件費抑制」に変化したことが、家計所得・消費の伸び悩みや財政赤字の原因になっています。

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totb.hatenablog.com

国際決済銀行(BIS)のチーフエコノミスト等を務め、アメリカの金融バブルの危険性をいち早くしていたWilliam Whiteは、先月のFT紙への寄稿で、企業利益よりも家計消費を増やす政策が有効と指摘していますが、そのためにはフリードマン教からの「脱会」が必要となります。脱会(脱洗脳)するかしないかが内政の対立軸ということです。

フリードマンは反ケインズだったので、便宜的に「脱会しない」をフリードマン、「脱会する」をケインズと表現すると、政策は、

  1. タカ/フリードマン
  2. タカ/ケインズ
  3. ハト/フリードマン
  4. ハト/ケインズ

の4つにカテゴライズされます。

容易に気付くのが、2.の現実的政党の不在です。「朝日新聞慰安婦“誤報”には怒り、実質可処分所得の減少に不安を感じる」サイレントマジョリティの受け皿が存在していないわけです*1。タカ/ケインズ政策を掲げる政党が登場すれば、サイレントマジョリティの支持を集めて政治への関心が高まるのではないでしょうか。

そういえば、1930年代にタカ/ケインズ政策を掲げて大恐慌からいち早く脱却し、国民の圧倒的支持を集めた政党があったような。

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

党の経済問題担当のあるスポークスマンは、ドイツは資本からみずからを解放したと言明した。「党は資本それ自体にはなんら反対するものではないが、平和への希求を平和主義と同一視し、国防への意思を軍国主義と同一視したくないのと同様に、資本を保持し増大させようとする努力を資本主義と同一視したくないのである」と。

「経験によって確かめられたことだが、経済はその赴くままに放置するならば、現在の諸困難の悪用から生じうる深刻な損害を未然に防ぎうるような、内的権威も規律も生み出しはしない。利潤追求は一般に全体の福利にたいする道徳的義務よりも強力なのである。これまで幾度も、国家の責任ある機関による多かれ少なかれ強力な介入が緊急に必要となったことがあったのである」。

www.businessinsider.com

*1:日本社会がそれだけ新自由主義に毒されたということなのでしょう。