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年金の世代間格差の文句を言うべき相手

公的年金制度が筋違いの難癖を付けられている件の続きです。 

shukan.bunshun.jp

ネット上の若者達の反応も「年金をこれまで納めていたけど払う気がなくなった」、「責任転嫁がひどい」、「官僚馬鹿すぎる」といった具合だ。

哲学が専門の津田塾大学萱野稔人教授も懸念する。

「こんなHPでは、逆に世代間格差を煽りかねない。若者の貧困がこれだけ問題になっているのに厚労省は何を考えているのでしょうか。ただでさえ今の学生は『年寄りが憎い』などと高齢者に不寛容になっています。直感的に自分たちの世代は損していると分かっているのでしょう」

自分の現況に漠然と不満を持つ人たちが、「世代間格差」の意味を理解することなく(≒直感的に)、不満を政府にぶつけているだけのように思えます。

次世代からの所得移転(保険料)を給付原資とする賦課方式では、出生率の低い世代の給付額が少なくなることは必然です。なので、年金額減少を防止する抜本策が「子供を産む」以外に存在しないことは厳然たる事実です。これを「短絡的」「あまりに安易」と否定することは建設的ではありません。

www.zakzak.co.jp

漫画の内容を簡単に言えば、[…](3)世代間格差を少なくするには子供をたくさん産む必要があること-である。

今回、ネット上で、厚労省漫画が炎上した背景は、具体的な問題解決が難しいにもかかわらず、(3)の子供を産めという短絡的な解決策を漫画で言ったことだろう。特に、(3)は漫画の最後でノリで締めくくったようなところでもあり、あまりに安易な方法であることは、だれでもわかってしまう。

柳澤発言に対する評価も不適当です。「産む機械」は、文脈を無視して発言の一部を切り出した印象操作です。柳澤発言を批判するのであれば、「人的資本」も使用禁止用語にしなければ筋が通りません。

かつて、柳沢伯夫厚労相(当時)が、「女性は子供を産む機械」という趣旨の発言をして、大きな話題になったことをほうふつさせる。

賦課方式の年金には「老後に子供がいないことに対する保険」の機能があります。自分に子がいなくても、他人の子からの所得移転で老後の困窮を避けられます。

Pension insurance is insurance against childlessness and the resulting old-age poverty. Even if people do not have children of their own, they will not become destitute when they are old because the children of other people will provide for them. Mutual insurance protection is a great advantage for all participants.

この保険機能には大きな意義があるものの、子無しの人が増えるほど、その世代の出生率は低下し、1人当たりの給付額は減少します*1。1950年代生まれまでの世代の出生率は約2でしたが、1965年生まれでは約2割低下しており、1995年生まれでは約3割低下すると推計されています。出生率低下は、その世代の「連帯責任」なので、政府を批判するのはお門違いです。

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世代間格差に文句を言うのであれば、その相手は現在の高齢者ではなく、産まない自由」を満喫する同世代の人々です。

政府を批判するのであれば、「出産を強要するな」ではなく、現行制度が出産を抑制していることに対してです。

This is not an argument for a state population policy that would interfere with the free decisions of its people and dictate the choice for children. Quite the contrary. Today the state intervenes massively in family planning by way of the pension system when it socialises the pension contributions of the children and thus suppresses the natural provision motive behind having children.

若者の貧困の原因は公的年金制度ではありません。厚生労働省には、理不尽なバッシングに屈しないことを期待します。

厚労省担当者の弁。

「当初見ていただいた社労士や大学教授の方からは概ね好意的な反応でした。今年に入って突然ネット上で批判が湧き、正直困惑しています。ご批判もありますし、文言や内容を変更することも考えています。でもあのマンガ、そんなに悪いですか?」 

totb.hatenablog.com

*1:フリーライドの問題。