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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「住み分け」は予防的措置

政治・歴史・社会 人口・少子化

曽野綾子産経新聞のコラムについて考察してみます。*1

www.huffingtonpost.jp

www.sankei.com

曽野綾子氏「私は文章の中でアパルトヘイト政策を日本で行うよう提唱してなどいません。生活習慣の違う人間が一緒に住むことは難しい、という個人の経験を書いているだけです」

曽野が「出稼ぎ労働者」のことを定住・日本国籍取得をイメージさせる「移民」と書いたことが誤解と混乱を招いているようですが、仮に低賃金・単純労働のために外国から出稼ぎ労働者有期契約で受け入れるのであれば、特定地域に居住させることは一考に値します。なぜなら、大部分の人間にとって、異なる生活習慣・価値観・文化の他人と同じコミュニティで生活することは強いストレス要因であり、トラブルの原因になるからです。仕事付き合いよりも、同じコミュニティで暮らすことのハードルが高いことは、曽野が「言っている」通りです。

爾来、私は言っている。

「人間は事業も研究も運動も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい」

人間が「似た者同士」集まって住みたがるのは自然なことです。*2

tokyodeep.info

アメリカでも、黒人のsegregationは必ずしも人種差別の結果ではなく、自発的意思が働いているという現実があります。白人に囲まれて働くことのストレスを、黒人コミュニティに戻ることで解消しようとする心理です。*3

www.washingtonpost.com

He said many residents find comfort, after spending the day in a predominantly white workplace, in returning to a home where all their neighbors are other African American professionals.

“They’re where they want to be,” Landry said. “They’re not thinking about integration. It’s not on their radar screen. . . . Their goal is to live in a community of like-minded, like-valued people, and these are other middle-class blacks.” *4

www.eurekalert.org

The researchers find that, conditional on income, households prefer to self-segregate on the basis of both race and education.

Similarly, blacks are willing to pay $98 more per month to live in a neighborhood that has 10 percent more black households, compared to a negative willingness to pay on the part of white households to live in a similar neighborhood. 

この黒人のself-segregationから得られる政策的インプリケーションは、政府が「ゲスト労働者」のために住居を出身国別に用意することが、彼らをメンタル的に支援することにもなることです*5。住み分けは、人種・民族間トラブルや不法滞在の予防の観点からも、お互いにとって合理的です。*6

条件を納得の上で日本に出稼ぎに来た人たちに、その契約を守らせることは、何ら非人道的なことではないのである。不法滞在という状態を避けなければ、移民の受け入れも、結局のところは長続きしない。*7

そもそも、異質なものを一つにまとめることが危険なことは、シャルリー・エブド事件やユーロ危機*8など、最近のヨーロッパの惨状が示しています。犬好きの人たちと犬嫌いな人たちを同じコミュニティに住まわせればトラブルが必至であることは、火を見るよりも明らかでしょう。

リベラル派は「曽野はレイシスト」「外国人を受け入れない日本はヨーロッパに比べて遅れている」と考えるかもしれませんが、ヨーロッパのエリートと普通の日本人と、果たしてどちらが「差別的」でしょうか。*9

移民の時代

移民の時代

仏エリート校であるエコール・ノルマル・シューペリウール(仏高等師範学校)で哲学教授資格を取得。INSEE(仏国立統計経済研究所)やINED(フランス国立人口研究所)の研究職を務め、1999年からINEDの第六代目の所長となり、現在に至る。 

移民や彼らの子どもたちの多大な貢献がなければ、誰が我々のオフィスを掃除し、ゴミを回収し、家を建て、ビルの清掃を引き受けるのであろうか。自動車の組み立てや造船現場はどうなるのであろうか。誰が大型スーパー・マーケットのレジ係や小規模店舗の店番を引き継ぐのであろうか。誰が我々のレストランの厨房を切り盛りするのであろうか。[…]さらには、誰が我々の子どもの面倒を見るのであろうか。また、我々の病人の看護や、在宅であろうが、高齢者施設であろうが、高齢者の世話をするのは誰であろうか。*10

www.asahi.com

――でも、労働力として移民を求めたのはフランス自身ですよね。財界の要請でしょう。

「確かに、指摘された通りです。給料を下げるために、40年にわたって移民を利用してきたのです。今、そのツケをみんなが払わされている。許せません」*11

これが「自由・平等・博愛」を建前とする国の実態です。このような社会が行き詰ることは自明に思えますが。

jp.reuters.com

参考

www.bbc.com

www.spiegel.de

www.theguardian.com

*1:アパルトヘイトを肯定している」という批判があるようですが、「団地に深夜でも大騒ぎする○○人が大量に入居したため、日本人が耐えられずに転居した」と似たことを書いているだけです。明らかな(意図的?)曲解です。

*2:大量の外国人を受け入れているシンガポールでも、フィリピン人、インドネシア人、ミャンマー人、インド人、日本人などグループ化する傾向が見られます。

*3:この心理を「人種差別」と非難する人はまずいないでしょう。

*4:強調・下線は引用者、以下同。

*5:A国の企業がB国の人を採用する場合、広義の福利厚生としてB国人が多く住む地域に住居を用意することはよくあることです。日本にも六本木周辺等に駐在外国人向け高級マンションが存在しますが、それを「アパルトヘイト」と非難する人はまずいないでしょう。

*6:政府が住み分けを主導することは許されないが、出稼ぎ労働者が自然に集まってコミュニティを作ることはOK、という意見がありますが、後者の場合、先住日本人とのトラブルが不可避です。トラブルの芽を事前に摘むことも政府の役割です。

*7:この記述からも、曽野の主張がアパルトヘイト政策ではないことが分かります。

*8:ドイツとギリシャギリシャバルファキス財務相は「ユーロは"house of cards"なので、ギリシャを引き抜けば崩壊する」と開き直っています。

*9:"Dirty work"を外国人に低賃金でやらせることを、普通の日本人は「差別的」と捉えるでしょうが、ヨーロッパ人のエリートは「多文化共生・雇用創出」と肯定的に捉えるという違いです。

*10:これは、フランス社会は失敗したという告白に他なりません。

*11:移民を大量に受け入れる→元々のフランス人の生活悪化→元々のフランス人だけによる社会システム運営が不可能に→移民に頼らざるを得なくなる→…