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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

ボーヴォワールの自己正当化革命

男女の教育水準格差がなくなると、女が仕事(ここではいわゆるpaid workのこと)で男と対等を求めるようになるのは自然なことです。成績優秀な女ほど、この傾向が強くなると考えてもよいでしょう。

一方で、生物学的には育児も女の「自然」です。

mainichi.jp

動物のオスは子孫に遺伝子を提供することはあっても、常時子供の世話をする父親になることはまれだ。哺乳類では、育児がメスに偏っており、オスが育児に参加するのはオオカミなどの肉食動物にほぼ限られている。

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

このころ*1の人類の暮らしは、男性たちが食料採取に出かけ、女性は安全な場所で待ちながら子どもたちを育てる、という形式だったと考えられます。男性を保護者とし、特定の女性とその子どもたちが連合して家族を作りました。

これが、現代でも根強い「夫は自分より同レベル以上」という女の欲求の根底にあると考えられます(生物学的な自然)。

www.news-postseven.com

「女性には今の自分が最低ラインと考えて、男性に自分より上を求める『ステップアップ思考』があります。身長は自分より高くて学歴も年収も自分と同じかそれ以上を願う。*2

問題は、いくら優秀な女でも、同レベル以上と結婚する限り、夫婦の分業では「夫が仕事/妻が家事・育児」が効率的になってしまうことです。そうなると、仕事においては、優秀な女が平凡な男に後れを取ってしまうことになります。

そのため、家事・育児(unpaid work)よりも仕事(paid work)の方が価値が高いと考える女が、

  • 出産・育児は女の生物学的自然ではない(→男に強制された奴隷労働)
  • 家事・育児の家庭外へのアウトソース
  • 分業へと導く結婚・家族の否定
  • 自分より劣った男の待遇引き下げ

を主張することは不思議ではありません。

president.jp

「プレジデント読者の奥さんだって、仕事をさせたら自分よりよっぽど優秀なんじゃない? それを、たった一人の馬鹿男に仕えさせてさ(笑)」*3

その典型がボーヴォワールです。

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。それに、職業的にも私が若かったころは本格的に勉強をする女性はわずかで、哲学の教授試験合格に合格することはエリート女性であることを意味しました。要するに私は男性に自分を認めさせたわけです。

ボーヴォワールにとっては、男たちに自分の優秀さを認めさせることが何よりも重要であり、「他者のために自分が労力を割く」こと、すなわち家事・育児は隷属と感じていたわけです。

隷属から解放されるためには、家事・育児をアウトソース(市場化または社会化)する必要がありますが、それは家族の形骸化につながります。自分が家事・育児をやりたくないことが、ボーヴォワールの家族破壊の主張の根底にあります。

男性にも家事をさせるべきであり、家事は白日のもとになされるべきです。コンミューンで行なったり、全員が働いている共同体で行うべきです。[…]家族のゲットーを破壊しなければ。

そもそも、子供自体が邪魔です。

最近になって、子どもを産むことは女性にとって厄介な罠だと思うようになりました。だから母親になるな、と女性に忠告したいのです。

下は「子どもを産まなかったことを後悔していますか?」との質問への返答です。

後悔などするものですか! そのことで毎日、自分を祝福していますよ。自分自身のためのわずかな時間さえももてずに、孫のお守りをさせられているおばあさんたちを見るときなんか。あのひとたちにしてもうれしいとは限らないのに……。

ボーヴォワールがとことん利己主義者であったことが窺えます。「女性解放」と言えば聞こえが良いのですが、その本質は、自分が出産・家事・育児をしないことを正当化するために、社会の価値観をひっくり返すこと(革命)と言ってもよいでしょう。

イタリアで私はあるスローガンを読み、なんと正しいことかと思いました。「女性解放なくして革命はありえない。革命なくして女性解放はありえない」というのです。

30年以上も前の次の論文では、この「革命思想」に無理があることが指摘されています。長くなりますが、非常に的確なので引用します。

一夫一婦の制度は基本的には子どもの養育に、言葉を換えれば、極端なところ相続にかかわる制度です。ボーヴォワールの考えでは、自由な男女関係の創出のためには育児の集困化、ひいては子どもの社会化を急務とするわけです。

「男は尊敬できる相手でなくてはならない。」サルトルを選ぶ過程は、幻滅を味わわなくてもよい男に出会うことに費されました。自分より頭が良く、思想的に優れていることが必要だったのです。しかしながら、男と女との関係は決してそのようなことには還元できないでしょう。もちろん、夫婦関係つまり結婚を前提にすればの話ですが…ここには知識に対するコムプレックス、男は女より優秀であってほしいという願望があるのは明白です。したがって、ボーヴォワールの言う男女の平等にはどうしても例外的な男性という観念がつきまとう印象を拭えないのです。

「男と女は平等であるべきだ。」サルトルだけは別で、その他の男と女とは本質的に同等の能力をもっている。意地悪く言えば、ボーヴォワールの男女平等論はこういう構造をもっています。サルトルと自分との間には確固として個体差を承認するボーヴォワールが、人間のあいだに千差万別の個体差を認めることを忘れているように思われます。すべての男が作家になれるとは限らないように、すべての女がただの主婦というわけでもありません。能力のない女よりかえって能力のない男のほうがもっとひどい劣等感にさいなまれているというほうが現実ではないでしょうか。男女平等の社会、つまり、男にも同じような機会を与えるかわりに、同じような仕事も課すような社会は、かえって女にとって苛酷な社会のように思われてなりません。与えられた能力を十分に発揮しあうことが平等の真の意味だと思われるからです。

上のPRESIDENT Onlineの記事では、上野千鶴子

「今、新卒女子の約半数が非正規労働市場に入るんですよ。これでは先が見えず、子どもなんて産めません。一方、正社員として就職できた女性はハッピーかといえばそうでもない。男並みに働いて疲弊するか、2級労働者として扱われるか。我々世代は、女がこんなに生きづらい社会しかつくれなかったのかと思うと、忸怩たる思いです」

と語っていますが、これは革命が失敗したからではなく、かなりの程度成功した結果ということです。「これがあなたの望んだ世界そのもの」でしょう。

革命が成功した国・スウェーデンにおける自由な男女関係や育児の社会化の帰結については下の記事が参考になります。

totb.hatenablog.com

共産主義革命は最終的に失敗に終わりましたが、PC(political correctness)革命は、キリスト教がローマ世界を乗っ取ったように成功するのでしょうか。人間の本性を否定する社会制度が、多数派に住みにくい社会となることは、共産主義の経験からも明らかなのですが。

[補足①]

ボーヴォワールの革命思想の弱点は、出産しない女が増えると、社会が持続不能になることです。また、出産しないことは、年金制度等を通じて出産・育児した人々にフリーライドする(たかる)ことを意味します。フェミニズム系の論者が年金と出産を結び付けられることに激高するのは、そこが自分たちの主張の穴になっていることを薄々感付いているからではないでしょうか。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com 

wotopi.jp

[補足②]

事実を認めない"rabid feminists"は認知的不協和を起こしているとの指摘です。

www.businessinsider.com 

Lara333 on Mar 27, 10:19 PM said:

(Part of the problem with rabid feminists is that they aregue with facts, and if you argue back, they hate you. It's called Cognitive Dissonance. Look it up.)

こちらも的確な指摘です。「馬鹿男(笑)」と公言しても許されることに通じます。

www.businessinsider.com

DM on Mar 27, 7:21 PM said:

You know, men are far worse to each-other than they are to women.... They put on the kid gloves and tiptoe around women's sensibilities, while playing hard-ball with each-other. If anything, there is a serious aspect of female privilege in the workplace, where they evade criticism and gain special treatment.

[参考]

ボーヴォワールは語る』からの引用ですが、どうやら人間の本性に反していたようです。

セックスはおそろしい罠となりうるでしょう。不感症になった女性もいます。しかし、不感症は最悪のケースではありません。もっとも悪いのは女性がセックスにおいて、多少とも男性の奴隷となることに一種の幸福を感じることです。これが抑圧者と女性を結ぶ鎖を強化するのです。 

www.theguardian.com

A Dangerous Liaison: A Revalatory New Biography of Simone DeBeauvoir and Jean-Paul Sartre

A Dangerous Liaison: A Revalatory New Biography of Simone DeBeauvoir and Jean-Paul Sartre

www.dailymail.co.uk

And while Simone de Beauvoir preached her ideal of feminist independence and equality, eschewing such 'bourgeois' concepts as marriage and children, and claiming women should behave just like men, the truth is such a lifestyle made her bitterly unhappy and she became obsessively jealous over Sartre's countless conquests. 

The couple had never wanted children - it had been part of their creed - yet in 1965 Sartre adopted his 25-year-old Algerian mistress Arlette El Kaim as his child. 

For de Beauvoir, who lived her entire life with posterity in mind, it was the ultimate betrayal - for now she was no longer her mentor's executor in control of his posthumous reputation.

ボーヴォワールとサルトルに狂わされた娘時代

ボーヴォワールとサルトルに狂わされた娘時代

*1:[引用者注]音声コミュニケーションを始めた頃

*2:[引用者注]日本の20代男女をランダムにペアにすると、20組強に1組は男よりも女の身長が高くなりますが、現実にはそれほど多くありません。

*3:強調は引用者、以下同。