Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「フェミニズム→ネオリベラリズム→猿社会」の大躍進政策

フェミニズムネオリベラリズム新自由主義)について、再度考察します。

女が「自分と同等以上の男」と結婚して子を産むと、「夫が稼得労働の主担当/妻が家事・育児の主担当」の分業が効率的になりますが、ボーヴォワールはこの分業が「女の隷属」であり、男と同じように稼得労働することを「解放」と主張していました。

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。*1

子どもから解放されないと女性は解放されない

個人的な面では、一番大事なことは働くことです。そしてできれば結婚を拒否すること。

女が解放されると、家庭内で行われていた家事・育児を①市場の専門サービス、②公的サービス、のどちらかにアウトソースする必要が生じます*2ボーヴォワールは①ではなく②を支持していましたが、現代の資本主義社会では非現実的であり、必然的に①の市場化が主流となります。

将来、私たちは家事をする新しい方法をみつけなければなりませんね。女性だけが家事をするのではなく、みんなでし、なによりも孤立して行うべきではないのです。

一時期、ソ連にあった専門サービスのことをいっているのではありません。それは危険です。なぜならその結果はより進んだ労働分業であり、一生のあいだ掃除をしてばかり、アイロンかけをしてばかりのひとがいることになるからです。それでは解決になりません。

ひじょうにいいと思うのは中国にあるようなもののことです。みんなが――男も女も子どもも――ある一日に集まり、家事を公的な活動にするのです。これだと楽しくなります。 

ボーヴォワールが主張した「女性解放*3」は、家事・育児の市場化と「より進んだ労働分業」をもたらすわけです。これは市場原理を重視するネオリベラリズムと合致します。

さらに、「夫が妻の分まで稼ぐ」モデルを否定し、夫と妻が個別に市場で稼得労働するようになると、賃金の分布が下方向に伸びます。低賃金層には、家庭からアウトソースされた家事等の「専門サービス」労働者(主に女)が多く吸収されることになります。夫の稼ぎでは家計を維持できないので、妻も家計を助けるために働かざるを得なくなるのです。家事・育児奴隷が賃金奴隷になるだけです。*4

www.theguardian.com

One contribution was our critique of the "family wage": the ideal of a male breadwinner-female homemaker family that was central to state-organised capitalism. Feminist criticism of that ideal now serves to legitimate "flexible capitalism". After all, this form of capitalism relies heavily on women's waged labour, especially low-waged work in service and manufacturing, performed not only by young single women but also by married women and women with children; not by only racialised women, but by women of virtually all nationalities and ethnicities.

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

「過去の婦人運動は36人の婦人国会議員と数十万のドイツ女性を大都市の路上に狩り出した」と、ある女性の党支持者は書いた。「それは1人の女性を高級官僚にし、数十万の女性を資本主義的経済秩序の賃金奴隷たらしめた。働く権利を奪われている男はいまや約600万もいる。女だけが、安価でいつでも利用できる搾取の対象として、いまなお仕事を見つけることができるのである」。 

上野は「会社に出たり入ったり」を推奨していますが、これを雇用形態の標準とすることは、長期雇用とは逆のネオリベラリズム的"flexible capitalism"につながります。

president.jp

女性を組織で本当に活躍させるためには、「雇用や評価のルールを変えるなど大胆な組織改革が必要」だと強調する。

[…]日本型雇用慣行では、育児のために会社に出たり入ったりができないんです」

夫婦の分業・協力を否定して家族の解体と個人化(及び自己利益の最大化)を実現すると、ボーヴォワール社会主義の夢とは逆に、市場原理を重視して格差拡大を肯定(称賛)するネオリベラリズムになってしまうのです。夫婦分業という「小悪」を潰したら、ネオリベラリズムという「巨悪」が勢力を拡大したことに困惑している、考えの足りないフェミニストたちがいるようです。

資本主義を打倒し、生産手段を変えるだけでなく、家族制度をも変えなければ。[…]家族は廃止されるべきです。 

男女を問わず、勝ち組にとっては「安価でいつでも利用できる」労働力(搾取の対象)が増えることは歓迎すべきことです。ビジネス界で成功した一握りの女が格差拡大に無関心なのも当然でしょう。

nation.com.pk

The theft of feminism is nothing nascent to anyone studying the chronological order of feminist waves but in the past decade – or more now – one cannot help but notice that female liberation has become ensnared in a perilous liaison with neoliberal efforts to construct a free-market society. This is what we call neoliberal feminism; […] Under neoliberal feminism, women aspire to corporate ideals of success that – like it or not – largely infringe upon the basic rights of the working class. There is a reason why young women are being purposefully advised by the likes of ex- State Department officials such as Sheryl Sandberg to ‘lean in’ instead of critically questioning the dynamics of elite liberal feminism.*5

シェリル・サンドバーグに代表される"elite liberal feminism"を唱える勝ち組女がボーヴォワールと異なる点は、高所得・同レベル以上の夫・子供などすべてを得よう("have it all")と貪欲であることです。

www.theatlantic.com

www.theatlantic.com

ボーヴォワールが自分より成績が上のサルトルをパートナーに選んだように、勝ち組女には平凡な男を見下し、結婚して養おうとしない傾向が強くあります*6。"Have it all"と平気で唱えることにも、「何かを犠牲にする覚悟」が微塵もないことが表れています。ボーヴォワールの望んだ「女性解放」が、結果的に社会全体での格差を拡大させています。

toyokeizai.net

今回、3人の女性たちの話を聞くかぎりにおいては、独身である今の自分が「やっていること」「できていること」を犠牲にしてまで、男性を養ってもいいという気配はみじんも感じられなかった。

いくら経済的に余裕がある女性が増えたとしても、男性を養うため何かを犠牲にする覚悟を女性が持ってくれないかぎり、高所得女性と低所得男性のカップルは増えることはないだろう。

これは日本社会が後進的だからではありません。欧米でも事情は同じです。「男に養わせる」が女の本性(進化の産物)であることを示唆しています。(“主義者”ではない普通の人にとっては当たり前で"mystery"ではないでしょう。)

www.theatlantic.com

Evidence suggests that couples are less likely to get married if the woman's income exceeds her partner's. Once married, a wife earning more than her husband is more likely to be unhappy in the marriage, more likely to feel pressured to take fewer hours, and more likely to get divorced.

www.theatlantic.com

“Hong Kong women are highly qualified and independent, but the marriage norm of men marrying down and women marrying up has remained largely intact. So some men may be unable to find a local wife due to their comparative socioeconomic disadvantages.

But while Hong Kong women are not necessarily prepared to “lower their standards,” they are willing to go to greater lengths than ever before to meet their dream partner.

ボーヴォワールが目の敵にした家族(と男女分業)ですが、ゴリラ学者の山極寿一によると、えこひいき原理の家族と、平等・互酬性原理の共同体を両立(複数の家族が集まって共同体を形成)させたことこそ、人間が栄えた理由です。*7

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

このころ*8の人類の暮らしは、男性たちが食料採取に出かけ、女性は安全な場所で待ちながら子どもたちを育てる、という形式だったと考えられます。男性を保護者とし、特定の女性とその子どもたちが連合して家族を作りました。

人類は共同の子育ての必要性と、食をともにすることによって生まれた分かち合いの精神によって、家族と共同体という二つの集団の両立を成功させました。

これが人間の本性であるなら、家族や出産・育児を否定するボーヴォワールの主張に沿った政策を実施すれば、「分かち合いの精神」が薄れ、平等社会が格差社会へと変化して当然でしょう。山極が言うところの「効率的で自由」な「サル社会」は、ネオリベラリズムの理想そのものです。

サルの社会は、個体の欲求を優先します。

サルは群れの中で序列を作り、全員でルールに従うことで、個体の利益を最大化しています。 

サルの社会に近づくということは、人間が自分の利益のために集団を作るということです。そうなれば、個人の生活は今よりも効率的で自由になります。しかし、他人と気持ちを通じ合わせることはできなくなってしまいます。

もしも本当に人間社会がサル社会のようになってしまったら、どうなるのでしょうか。サル社会は序列で成り立つピラミッド型社会です。人を負かし自分と勝とうとする社会、とも言い換えられます。そんな社会では、人間の平等意識は崩壊するでしょう。 

人間がひとりで生きることは、平等に生きることには結びつかない」という事実です。家族を失い、個人になってしまったとたん、人間は上下関係をルールとする社会システムの中に組み込まれやすくなってしまうのです。 

ボーヴォワールは21歳で1級教員資格に2位*9で合格した秀才でしたが、その社会革命理論は秀才にありがちな机上の空論・猿知恵に過ぎなかったようです。『ボーヴォワールは語る』で、

マルクスが夢みたように人間を変革する社会主義はどこにも実現されなかったのです。生産関係は変化した。しかし、生産関係を変えるだけでは真に社会と人間を変革するには十分でないことがわかってきました。だから経済制度がちがっても、男と女の伝統的役割は残っているのです。

と語っていますが、「経済制度がちがっても、男と女の伝統的役割は残っている」ことを人間の本性の反映と認識できないことに、非科学的な頑迷さが表れています。

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

生産手段が我々の思考や政治、意識に影響を与えるのは、我々が受け継いできた生物学的な特徴を通じてなのだということに気づくべきときがきている。

ダーウィニアン・レフトは以下のことをすべからず。

  • 人間の本性の存在を否定すること、ならびに人間の本性は元々よいものである、あるいは限りなく変えられると主張すること

ボーヴォワールは、

体制と男性を攻撃しなければなりません。

とも語っていましたが、家庭の大黒柱として地道に働いていた普通の男(雀)を叩いた結果、勢い付いたのはネオリベラリズム(イナゴ)でした。中国の大躍進政策とよく似た構図です。

ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト

ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト

毛沢東は、権力の頂点にあった時期に、スズメに戦争を仕掛けた。農業の大増産を図る毛沢東は、スズメが穀物の収穫高を減らす害鳥であると判断した。 

毛政権が、スズメは収穫を盗む害鳥ではなく、生態系のバランスを保つために不可欠な存在だと気づいた時には、すでに手遅れになっていた。スズメが消えると、それらが食べていた昆虫が勢いづいた。イナゴがどうしようもないほど増え、バッタも同様だった。昆虫は穀物を食べつくし、飢饉が起きた。

www.youtube.com

甚大な損害を出した大躍進政策は短期間で終了しましたが、ルサンチマンの宗教・キリスト教ローマ帝国の国教になったように、男(ただし勝ち組を除く)への敵意と憎悪に満ちたフェミニズム的"political correctness"教は、今日の先進国で支配的イデオロギーになっています。「PC版大躍進政策」が継続中であることが、先進国が混迷・停滞・衰退に陥っている大きな原因でしょう。

(下はPRESIDENT Online記事の上野千鶴子の発言)

「プレジデント読者の奥さんだって、仕事をさせたら自分よりよっぽど優秀なんじゃない? それを、たった一人の馬鹿男に仕えさせてさ(笑)」

余談ですが、強硬な「小さい政府」論者だったアイン・ランドは、公的年金や公的医療制度に反対していたにもかかわらず、自分が肺癌に罹ると受給していたそうです。

www.huffingtonpost.com

In the end, Miss Rand was a hypocrite but she could never be faulted for failing to act in her own self-interest.

肩をすくめるアトラス

肩をすくめるアトラス

ボーヴォワールは左派、ランドは右派と正反対のようですが、徹底した利己主義者という点で、両極端は一致しています。

自称ダーウィン的左派のピーター・シンガーは、過度に競争的に傾いた社会を協力的に戻すことを主張していますが、

ダーウィニアン・レフトは以下のことをすべし。 

  • 競争よりも協力が育む社会構造を展開させ、皆が望んでいる競争の終わりという方向へ事が進むよう努力すること

極左と極右の両翼がネオリベラリズムで一致している以上、猿社会化へのブレーキはかかりそうにありません。

SFドラマ 猿の軍団 デジタルリマスター版 DVD-BOX

SFドラマ 猿の軍団 デジタルリマスター版 DVD-BOX

www.j-cast.com 

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com 

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

*1:強調は引用者、以下同。

*2:③夫が引き受けるという手もありますが、分業のメリットが失われます。

*3:現在の日本では「女性が輝く」と表現。

*4:誰もが家庭内で行っていたサービスで、労働市場で十分に高い賃金を得られるはずがありません。それが分からなかったとすれば、フェミニストは経済の基本すら理解していなかったことになります。

*5:下線は引用者。

*6:若い男を愛人にするのは別の話。

*7:『「サル化」する人間社会』の第六章、第七章だけでも読むことをお勧めします。

*8:[引用者注]アフリカで音声コミュニケーションを始めた頃。

*9:1位はサルトル