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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

男女同等化とジャンクフードの共通点

少子化・ジェンダー

男女平等が叫ばれる一方で依然として残る「“妻の稼ぎ<夫の稼ぎ”であるべき」という規範が、職場の「ガラスの天井」や結婚減少、離婚増加、出生率低下の原因になっているという研究です。

Economic consequences of gender identity | VOX, CEPR’s Policy Portal

… the prescription that women should earn less than men plays a role in marriage rates, the labour market supply of women, and marital satisfaction. The interaction of economic progress and changing gender norms could therefore explain the lower marriage and fertility rates among educated women.

印象的な'Figure 1.'は、女に「一家の稼ぎ手になる(→夫を養う)」ことを忌避する性向が備わっているとも解釈できます。 

実際、妻が夫より高収入を得られる可能性が高まるほど、妻は労働参加を避ける傾向が強まります。家庭と職場の「ガラスの天井」は、「夫より稼がないようにする」という妻の選択の結果とも言えます。

  • We show that when the probability that the wife's income would exceed her husband's actual income is higher, the wife is less likely to participate in the labour force.

Moreover, if she does work, the gap between her realised and her potential income is greater (in part due to lower hours of work). In other words, women are bringing a glass ceiling from home to work.*1

面白いのは、妻の稼ぎが夫を上回ると、“妻がbreadwinner/夫がhomemaker”の効率的分業を進めるのではなく、その逆に妻が家事を増やすことです。

…, when the wife starts to earn more than the husband, she starts taking on more of the household chores. Perhaps these ‘threatening’ wives do this in order to assuage their husbands’ unease with the situation. The wife, of course, may ultimately get tired of working this ‘second shift’ (Hochschild and Machung 1989), which might be one of the mechanisms behind our results on divorce.

論文の著者は、その理由を「夫の(低収入に起因する)精神的苦痛を和らげるため」と推測していますが、「家事はしなくてよいからもっと稼いで来い」と夫に心理的プレッシャーをかけている('threatening')とも解釈可能です*2。プレッシャーをかけても効果が上がらないと、離婚の可能性が高まります。

男女平等先進国のスウェーデンでも、妻が夫より稼ぐようになると離婚リスクが高まっています。

MPIDR - Does divorce risk depend on spouses´ relative income? A register-based study of first marriages in Sweden in 1981–1998

… couples where the wife earns more than the husband have a relatively high divorce risk not only in a traditional set up but also in a society that is organized on the principles of gender equality and with dominant egalitarian gender views.

冒頭の引用記事の著者は規範の由来を社会・文化面に求めようとしていますが、人類に普遍的であることや、男女平等が進んだ先進国でも強固であることは、むしろ人間の本性(進化の産物)であることを示唆していると考えられます(nurtureではなくnature)。

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

性による役割も文化によってほとんど変わることがない。子どもを育てるのに大きく関わるのは常にほとんど女であるし、集団の中にせよ集団どうしの争いにせよ、体を張った戦いに関わるのは女よりは男である。[…]どんな文化にも共通する人間の性質というものは存在するのである。

アフリカにおける長い進化の過程において、“夫がbreadwinner/妻がhomemaker”が人間の本性として形成されたということでしょう。

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

このころ*3の人類の暮らしは、男性たちが食料採取に出かけ、女性は安全な場所で待ちながら子どもたちを育てる、という形式だったと考えられます。男性を保護者とし、特定の女性とその子どもたちが連合して家族を作りました。

女の“遺伝子”に「夫は稼ぐ人(→稼がなければ夫ではない)」とプログラムされているにもかかわらず、「男女は入れ替え可能」という前提で男女同等化を進めた結果、非婚化や少子化等、社会の持続可能性を損なう事態が生じていると考えられます。

これは、急激に変化した食生活と進化の過程で獲得された形質のミスマッチが肥満や糖尿病を急増させている構図と似ています。男女同等化は社会にとってのジャンクフード、非婚化・少子化生活習慣病ということでしょうか。

進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命

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肥満は進化の産物か?: 遺伝子進化が病気を生み出すメカニズム (DOJIN選書)

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totb.hatenablog.com

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*1:強調は引用者

*2:必ずしも意識的とは限らない。

*3:[引用者注]アフリカで音声コミュニケーションを始めた頃。