読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

ドイツ第四帝国の東方拡大

ギリシャ問題が重大局面を迎えています。ドイツの強硬姿勢が目立ちます。

www.bloomberg.co.jp

27日のブリュッセルでのユーロ圏財務相会合は、ギリシャ側が求めた救済プログラムの延長を拒否。各国財務相ギリシャが銀行を守るための措置が必要だと指摘した。

ショイブレ独財務相は会見で記者団に、今後数日間「ギリシャが重大な困難を経験するだろう」と述べた。

そのドイツも、1990年代半ばから2000年代半ばまでは「ヨーロッパの病人」と言われる経済停滞が続いていました。それが2000年代半ばから急速に勢いを取り戻し、2008年のリーマンショック後もその勢いは止まっていません。その急激な変貌は、第一次世界大戦敗戦後の混乱から立ち直ったナチスの時代を想起させます。

f:id:prof_nemuro:20150628214410g:plain

旧共産圏の崩壊後にドイツが低迷することになった背景には、旧東の再建に巨額のコストを要したことに、東欧への生産流出(アウトソーシング/オフショアリング)が重なったことがあります。これは経常収支の赤字化に表れています。

f:id:prof_nemuro:20150628214520g:plain

ドイツの経済研究所CESifoのSinn総裁は2003年のコラムで、中小企業の東欧進出によってドイツ経済が構造変化を起こしていることを指摘していました。

Now German mid-sized businesses are establishing ties with Eastern Europe. These firms did not dare to venture into Asia but are now willing to risk involvement in Eastern Europe because the start-up costs are very much lower there. Eastern Europe also offers very low wages, but lies at Germany’s doorstep and is part of our cultural area. In addition, the former Communist countries have overcome their transformation crises, have established stable legal systems, and a majority will join the EU in a few months.

企業の東欧進出→ドイツ国内の賃金抑制→単位労働コストの相対的低下→輸出競争力強化、がドイツ経済復活の大きな流れだったことは、下の記事で説明されています。

The astonishing transformation of the German economy is due to an unprecedented process of decentralisation of wage bargaining that led to a dramatic decline in unit labour costs and ultimately to an increase in competitiveness of the German economy.

f:id:prof_nemuro:20150628214408g:plain

ドイツは東欧の生産拠点化と国内産業の競争力回復(←賃金抑制)を両立させたわけですが、エマニュエル・トッドも同様の分析をしています。

最近のドイツのパワーは、かつて共産主義だった国々の住民を資本主義の中の労働力とすることによって形成された。 

規律と上下関係という価値が浸透しているがゆえに、ドイツでは人びとが競争的なインフレ抑制策を受け容れたのです。

トッドは、ドイツの東欧を巻き込んだ経済構造改革によって「ドイツ帝国」が出現したと指摘しています。強大化したドイツが東欧に進出してロシアと衝突する歴史が繰り返されているというわけです。

ドイツはロシアに取って代わって東ヨーロッパを支配する国となったのであり、そのことから力を得るのに成功した。

①ここ五年の間に、ドイツが経済的な、また政治的な面で、ヨーロッパ大陸のコントロール権を握った。

②その五年を経た今、ヨーロッパはすでにロシアと潜在的戦争状態に入っている。 

ギリシャへの容赦ない圧力や、ウクライナの反ロシア(ソ連)勢力への肩入れは、第二次大戦時を思い出させます。

gendai.ismedia.jp

www.sankei.com

困ったことに、ドイツ帝国は日本の同盟国ではなく脅威になる可能性があるというのがトッドの「日本人への警告」です。

ドイツ帝国は」最初のうちもっぱら経済的だったが、今日ではすでに政治的なものになっている。ドイツはもう一つの世界的な輸出大国である中国と意思を通じ合わせ始めている。

ユーラシアの西では独露対立、東では日中対立、そこに海洋勢力のアメリカが絡んでくるという地政学的構図です。前回は中ソ米vs日独でしたが、今回は中独vs日露でしょうか。

経済学者には不可能な刺激的な分析が読める『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』はお勧めです。

新ヨーロッパ大全〈1〉

新ヨーロッパ大全〈1〉

世界像革命 〔家族人類学の挑戦〕

世界像革命 〔家族人類学の挑戦〕

totb.hatenablog.com