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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

グローバル化は薬か毒か

アベノミクス

アベノミクス、特に第一の矢の量的・質的金融緩和の効果が、リフレ派の想定を下回っていることは明らかでしょう。

diamond.jp

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鉱工業生産指数を見る限り、アベノミクスは「海外要因による2012年の景気後退からのリバウンド」にとどまっています。*1

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toyokeizai.net

脱却のルートはこうだ。日銀が1年半から2年程度でインフレ目標を達成するとコミットし、大量の長期国債買いオペでマネタリーベースを増やす。そうすると、予想インフレ率の上昇から、予想実質金利が低下し、株価が大幅に上昇して投資と消費が増える。一方、実質実効為替相場で見て円の価値が下がり、輸出が増加し、輸入品との競争力も高まって内需も増える。この二つのルートから、総需要が持続的に増加し、デフレ脱却ができる。*2

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株高(日経平均株価は9000円前後から2万円へ)と円安(1ドル=80円前後から120円台へ)は想定通り(以上?)だったので、問題は株高と円安の実体経済刺激効果が乏しいことにあります。株高の投資・消費刺激効果が乏しいことは当たり前のことなのでさておき、円安の輸出拡大効果が乏しいことについて見てみます。

実質実効為替レートは、変動相場制移行後の最低水準にまで減価しています。

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しかし、輸出数量は微増にとどまっており、リーマンショック前の「史上最長の景気拡大期」の勢いは見られません。

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鉱物性燃料を除いた貿易収支にも、「アベノミクスの絶大な効果」を見て取ることはできません。

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製造業就業者も「減少が止まった」ものの、長期減少トレンドの反転には至っていません。

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実質実効為替レートの大幅減価に輸出が反応しない理由については、次の記事が参考になります。

Depreciations without exports | VOX, CEPR’s Policy Portal

The figure shows that those countries that are more tightly integrated in German supply chains (Poland, Hungary, Czech Republic and Slovakia) saw a much stronger flattening of the relationship between real effective exchange rate (REER) growth and export growth to Germany than those that are more loosely integrated in German supply chains (Bulgaria, Latvia, Lithuania, Romania, and Slovenia). While other factors were certainly at play, this evidence suggests that cross-border production linkages may contribute to reducing the effectiveness of depreciations to boost exports.

ドイツ企業のサプライチェーンへの統合度が高い国々は、低い国々に比べて為替レートと対独輸出の相関が弱まっているとの分析です。

輸出企業がグローバルサプライチェーンを発達させるほど、為替レート減価の景気刺激効果は低下することになります。

… the role of exchange rates in promoting export growth (and, more broadly, export-led growth) and in the macroeconomic adjustment process needs to be carefully re-evaluated in a world where global value chains are increasingly important.

実際、日本を代表する輸出企業のトヨタ自動車でも、円安が国内生産拡大にほとんど寄与していません。

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伊東光晴の19年前の指摘が的を射ていたようです。

「経済政策」はこれでよいか―現代経済と金融危機

「経済政策」はこれでよいか―現代経済と金融危機

東アジアは日本を始めとする先進国の対象地域になっている。これを先進国側から見れば、政府が景気政策を打ち、その結果、企業は経営に余裕が出ると、投資のより多くが海外にという傾向になる。[…]中小企業までが海外投資による海外生産と国内生産とのバランスとリンケージを企業経営の中心に置くようになった。[…]

このことはマクロ経済政策としては、海外に投資される分が有効需要として海外に漏れるということであり、有効需要の減少を意味する。[…]こうした民間企業の行動を放置して財政に支援を求めても効果が生まれない

もしケインズが生きていたならば、市場万能、グローバルな経済に対して、制度、習慣の違いを重視していきながら、競争と調和とを妥協させていくという考え方に動いていくだろう。

日本再興のために企業のグローバル化を促進したら、人口が減少して過疎化が進む地元(日本)を見捨てて、需要拡大が見込める地域(外国)に軸足を移してしまったわけです。

薬と思って飲み続けてきた「グローバル化」は、確かに一部のグローバル化した企業にとっては薬でしたが、日本国(と多くの日本人)にとっては毒だったという皮肉なことになりそうです。*3

グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書)

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自由貿易という幻想 〔リストとケインズから「保護貿易」を再考する〕

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totb.hatenablog.com

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*1:グラフは8月31日公表の7月速報を反映させています。

*2:強調は引用者、以下同。

*3:男女共同参画」も同様。