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鹿児島県知事の三角関数発言は妄言か

ジェンダーのタブーに触れた鹿児島県の伊藤知事の「三角関数発言」は、例によって批判の嵐を浴びる羽目になってしまいました。

nlab.itmedia.co.jp

wotopi.jp

しかしながら、この発言に的を射ていた点がないわけではありません。批判は「高等教育にはメリットはあるがデメリットはない」という信念に基づいているようですが、장하준はその信念が誤りであることを指摘しています。

世界経済を破綻させる23の嘘

世界経済を破綻させる23の嘘

「教育の向上が国を富ませる」というあたりまえのように思える主張を裏付ける証拠がほとんどないというのはどういうわけか? それは端的に言えば「生産性向上にとって教育はわたしたちが思っているほど重要ではないから」である。

生産性向上に重要と考えられている数学や理科といった科目さえ、大半の勤労者の仕事には関係ないものだ。

男女共同参加の進んだ北欧諸国でも、女は高等数学を必要とする工学系の仕事よりも、不要な対人サービス業に就く傾向が見られます。この傾向は、大学の専攻の段階から顕著です。

sciencenordic.com

Only one in five who opts for studies in the health and social sciences fields is a man. Just one in four who works toward a degree in teaching is male.

On the other hand, only a third of those who study mathematics, natural sciences or technological fields are women.*1

totb.hatenablog.com

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장하준は、多くの先進国で高等教育そのものが過剰(大学進学率が高過ぎる)になっているとも指摘しています。

アメリカ、韓国、フィンランドといった国々の大学教育の少なくとも半分は、本質的にゼロサムである雇用・就職ゲームではむだということになる。

富裕国では、高等教育へのこだわりすぎが緩和されないといけない。このこだわりすぎで不健全な学歴インフレが発生し、多くの国で高等教育への過剰投資がおこなわれることになるからだ。

totb.hatenablog.com

  • 高等教育は過剰(大学進学率は高過ぎる)
  • 女は高等数学をあまり必要としない職業を選択する傾向が強い

のであれば、伊藤知事の発言にも一理はあることになります。もちろん、知事としては不適切発言ですが、100%「妄言」と切り捨てることもまた妥当ではないでしょう。

人生において、三角関数よりも妊娠適齢期の知識を必要とする女のほうが多いと思われますが、「三角関数は教えよ/妊娠適齢期は教えるな」と叫ぶ人たちは、一体誰のためになることを目指しているのでしょうか。*2

www.sankei.com

gendai.ismedia.jp

女子大生に必ず聞くんです。「いくつまで妊娠できると思う?」って。そうすると、「50歳」とか、真顔で言う子が必ず1クラスに何人かはいます。「40代までは普通に妊娠する」ってみんな思っているんですよ。

間違いだらけの高齢出産

間違いだらけの高齢出産

名古屋市立大学病院の杉浦真弓教授らが、独身女性約250人に対してアンケート調査を行っています。

「あなたはいくつまで自然に妊娠できると思うか」という質問に対し、約37パーセントの女性が「45~60歳」と回答したそうです。

女性は35歳を過ぎると妊娠の可能性が減少し、40歳を超えると大幅に落ち込みます。

教育の過当競争は、非婚化・晩婚化・出生率低下⇒人口減少を招くことにも要注意です。

経済幻想

経済幻想

直系家族的社会の教育熱心と出生率の低下傾向は、一つの全体的構造をつくる。それは、少数の子どもをつくって、彼らに集中的に教育するという世界である。この過程は、一定の論理的ループをもって進行する。というのも、長い修学期間は、遅い結婚、遅い出産を意味し、これが今度は低い出生率を助長するからである。

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totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

*1:この記事では、学科ごとの男女比の偏りの原因を、生得的な男女差ではなく「根強いジェンダーのステレオタイプ」に求めています。ノルウェーが科学ではなくイデオロギーに支配されていることを示す内容です。

*2:三角関数で思い出しましたが、2003年の東京大学の入試問題「円周率>3.05を証明せよ」の正答率が意外に低かったという話には驚かされました。教えられても使えなければ「生きる力」にはならないでしょう。