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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

日本経済の植民地化

2014年度の日本の名目GDPは491兆円で、1997年度のピーク521兆円を6%下回り、1992・93年度とほぼ同水準です。グラフにすると、日本経済の「大停滞」が一目瞭然です。*1f:id:prof_nemuro:20150912225326g:plain

日本経済が停滞に陥った原因を探るために、「法人企業統計調査」と比較します。*2

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  • 名目GDPと人件費計はほぼ連動している。
  • 21世紀に入ってから経常利益と配当金計が名目GDPから乖離して急増している。

企業(特に製造業)の行動が「人件費を抑制して利益を増やす」に変化したことの反映と考えられます。

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賃金が増えない理由として次のような見方もありますが、

blogos.com

実質賃金を上昇させるためには、最終的に企業の生産性を向上させる以外に方法はありません。しかし日本企業は現在の事業モデルを大きく変えることには消極的で、その結果、賃金の伸びも限定的なレベルにとどまっています。

金融危機が生じた1990年代末から、生産性と賃金の連動が切れています。先進国中、日本の単位労働コスト低下は突出しています。

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人件費を抑制して増やした利益は、配当や内部留保(→自己資本)に回っています。これでは家計消費が伸び悩むのは当然でしょう。

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企業行動が変化した背景には、「雇用重視」から「株主重視」への価値観の大転換があります。

失われた〈20年〉

失われた〈20年〉

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0222080/top.html 

「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」

「それはあなた、国賊だ。我々はそんな気持ちで経営をやってきたんじゃない」

94年2月25日、千葉県浦安市舞浜の高級ホテル「ヒルトン東京ベイ」。大手企業のトップら14人が新しい日本型経営を提案するため、泊まり込みで激しい議論を繰り広げた。論争の中心になったのが「雇用重視」を掲げる新日本製鉄社長の今井敬と、「株主重視」への転換を唱えるオリックス社長の宮内義彦だった。経済界で「今井・宮内論争」と言われる。*3

「これまで企業が社会に責任を負いすぎた。我々は効率よく富をつくることに徹すればいい」という宮内のドライな発言に今井が鼻白む場面もあった。

www.sankei.com

www.sankei.com

外国人株主の増加も影響しています。

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ヨーロッパ人の植民地支配に当てはめて、

  • 外国人株主―植民地に投資するヨーロッパの資本家(支配層)
  • 経営者―ヨーロッパ人に取り入った現地の有力者あるいは異民族(白人の手先)
  • 労働者―搾取される現地人あるいは奴隷

とすると、現状が理解できそうです。

diamond.jp

2000年代に入ってから、従業員の平均的な名目賃金が下がるデフレの最中でも、上場企業経営者の報酬水準は趨勢的に上がり続けてきた。

こうした経営者達を、株価連動型の報酬制度をニンジンとしてぶら下げることで、いわば「買収」しようというのが、投資家・株主側の集団的な意図であり、同時に政府・財界(≒経営者クラブ)の「作戦」(「政策」と呼ぶよりも、感じが出る)なのだ。

diamond.jp

実際、武田の役員報酬は、国内製薬会社で突出する。しかも、そのメンツは、米国籍を持つ山田忠孝CMSO(6月26日付で退任)の9億円超えを筆頭に外国人ばかりだ。

追い打ちとなるロジェ氏の退任に、武田の日本人社員からも「正直、やる気が削がれる」と士気低下の声が漏れる。

なお、法人税減税(→配当金と内部留保の原資増)&消費税増税(→実質賃金減)は、この傾向を一段と強化するものです。

ところで、リフレ派エコノミストの片岡剛士が次のように語っています。

www.asahi.com

今こそ国内総生産GDP)の6割を占める消費の政策的な底上げが急務なのです。具体的には1人あたり3万円の定額給付金支給などを主眼にすえた、総額5兆円規模の経済対策を早急に実施すべきです。

「企業の賃金抑制&定額給付金」よりも、企業に賃上げを促す方が正常ではないでしょうか。*4

結局のところ、日本経済の低迷を打開すると期待されたアメリカ型株主重視経営は、日本の一般労働者にはむしろ「毒」だったということなのでしょう。

もっと歴史から学ぶべきでした。

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

「経験によって確かめられたことだが、経済はその赴くままに放置するならば、現在の諸困難の悪用から生じうる深刻な損害を未然に防ぎうるような、内的権威も規律も生み出しはしない。利潤追求は一般に全体の福利にたいする道徳的義務よりも強力なのである。これまで幾度も、国家の責任ある機関による多かれ少なかれ強力な介入が緊急に必要となったことがあったのである」。

最後の転落 〔ソ連崩壊のシナリオ〕

最後の転落 〔ソ連崩壊のシナリオ〕

ケインズ理論の主たる帰結は、もちろん景気後退期における国家による投資であるが、それより目に付きにくいが構造に関わるものだけにより重要な帰結は、自国の労働者階級を豊かにすることが得策であるという考えを西側ブルジョワジーが受け入れた、ということである。経済発展期における労働者の賃金の持続的上昇は、消費の規則正しい上昇をもたらし、それが生産の総体を吸収する。

より詳しくは、以下に紹介する本をご参考に。

賃上げはなぜ必要か: 日本経済の誤謬 (筑摩選書)

賃上げはなぜ必要か: 日本経済の誤謬 (筑摩選書)

The Road to Recovery: How and Why Economic Policy Must Change

The Road to Recovery: How and Why Economic Policy Must Change

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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*1:グラフの橙色の線は2014年度の水準を表す。

*2:金融業、保険業以外の業種

*3:強調は引用者、以下同。

*4:リフレ派によれば、日本銀行がインフレ目標を掲げて国債を大量に買い入れ、日銀当座預金を激増させれば、家計のインフレ予想が高まって消費を活発化させるはずではなかったのでしょうか。リフレの具体策が「定額給付金」になるとは予想GUYでした。