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クルーグマンと(旧)日銀理論の勝敗

リフレ論と言えば「中央銀行によるインフレターゲット+準備預金大幅増(⇔国債買い入れ)」ですが、最近ではリフレ派エコノミストが経済対策として定額給付金を主張する事態となっています。

www.asahi.com

今こそ国内総生産GDP)の6割を占める消費の政策的な底上げが急務なのです。具体的には1人あたり3万円の定額給付金支給などを主眼にすえた、総額5兆円規模の経済対策を早急に実施すべきです。

元祖リフレ派(教祖?)のクルーグマンも、「中央銀行財政赤字をファイナンスせよ」「資産ではなくモノを買え」と、財政出動を主張するようになっているので不思議ではありませんが。

When you print money, don’t use it to buy assets; use it to buy stuff. That is, run budget deficits paid for with the printing press.

この記事で注目されるのがクルーグマンのマネーに関する理解です。

When central banks like the Federal Reserve or the Bank of Japan print money, they generally use it to buy government debt. In normal times this starts a chain reaction in the financial system: The sellers of that government debt don’t want to sit on idle cash, so they lend it out, stimulating spending and boosting the real economy.

マネーストックの増加を「中央銀行国債を買い入れて銀行に準備預金を供給する→銀行が金利を稼ぐために準備預金を貸し出す→貸出先の預金が貸出の原資となってさらに貸出が増える→…」の連鎖反応として理解していることは明らかです。下の記事と同じです。

www.zakzak.co.jp

正常に景気が回転している場合、預金は貸し出しと連動する。預金が増えれば銀行は貸し出しを増やし、貸し出されたカネは預金となって還流するからである。

しかし、イングランド銀行はこれを「誤解」と断じています。準備預金は銀行(と中央銀行)間で貸し借りされるもので、企業や家計に貸し出されるものではないからです。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/quarterlybulletin/2014/qb14q102.pdf 

A related misconception is that banks can lend out their reserves. Reserves can only be lent between banks, since consumers do not have access to reserves accounts at the Bank of England.

This is because, as explained earlier, banks cannot directly lend out reserves. Reserves are an IOU from the central bank to commercial banks. Those banks can use them to make payments to each other, but they cannot ‘lend’ them on to consumers in the economy, who do not hold reserves accounts. When banks make additional loans they are matched by extra deposits — the amount of reserves does not change.

準備預金はクルーグマンが考えているように、連鎖反応(貨幣乗数効果)によって新たな貸出と預金を作り出すものではありません。

…, the new reserves are not mechanically multiplied up into new loans and new deposits as predicted by the money multiplier theory.

そもそも、中央銀行による準備預金供給は、銀行にとって貸出のインセンティブには(ほとんど)なっていないわけです。

— the newly created reserves do not, by themselves, meaningfully change the incentives for the banks to create new broad money by lending.

日銀OBも著書で同じことを主張しています。横山がこの本を執筆した最大の動機は「この誤りを論駁・修正すること」だそうです。

準備預金は、銀行の対企業融資の原資を提供するのではなく、日銀勘定にじっと留まったまま、銀行間決済の場、日銀による金利操作の舞台、という役割を務めるもの。

“銀行がこれを引き出し、これを原資にして、対民間融資を拡大することが望まれる”と書き、あるいは“なかなかこれが有効活用されずに、日銀に眠ったままなので困ったことだ”などと嘆いたりしている。残念ながらこうした解説は、理論的に全くのピントはずれであり、これが世間の誤解を増幅し、世論の混迷を招いているのである。

衝撃的だったクルーグマンの1998年のリフレ論が「世間の誤解を増幅し」た「全くのピントはずれ」だったとすれば、リフレ派が現実の経済の動きに合わせた結果、財政出動論者になってしまったとしても不思議ではないでしょう。

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この17年間は一体何だったのでしょうか。

totb.hatenablog.com

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