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不妊治療の増加と大学進学率上昇

不妊治療を受ける人が増えています」という記事について。

http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160114/biz/00m/010/024000c

headlines.yahoo.co.jp

記事に出てくる「智子さん」が不妊治療を始めたきっかけは

あるとき智子さんは、「卵子の老化」を警告するテレビ番組を見ました。不安になり、

とのことですが、この時すでに30代後半です。スポーツ選手でも30代後半になると衰えが顕著になるのは常識ですが、女の「妊娠・出産能力」も30代後半になると衰えることはなぜか常識にはなっていないようです*1。もちろん、個人差は大きいものの、「40代までは普通に妊娠する」はずがありません。*2

gendai.ismedia.jp

女子大生に必ず聞くんです。「いくつまで妊娠できると思う?」って。そうすると、「50歳」とか、真顔で言う子が必ず1クラスに何人かはいます。「40代までは普通に妊娠する」ってみんな思っているんですよ。

知識不足が不妊増加の一因であるなら、妊娠と年齢に関する知識の啓蒙に反対する理由はないはずです。

wotopi.jp

www.sankei.com

精神科医の香山リカさんは「加齢に伴う卵子の老化など女性の妊娠、出産にはタイムリミットがあるが、これまで、学校でも家庭でもその知識が伝えられる機会は少なかった」と指摘。

元の記事には奇妙な分析もあります。

今の日本社会には、ある程度の年齢になったら結婚し、夫、妻、子ども2人という標準的な家族を持つことが「当然である」という見方があります。この「普通の」モデルから外れると、周囲から疎外されたり、圧力をかけられたりします。人によっては、「不妊」という負の烙印(らくいん)を押され、自己評価の低下や、男や女としてのアイデンティティーに悩まされます。その解決策の一つとして不妊治療を選択するのです。

子供を持ちたい気持ちを「文化的・社会的な理由」で説明していますが、それよりも、子孫を残したいという動物としての本能のほうが重要でしょう。少子化問題においては、この「動物としての自然」が無視されがちですが、それが「出産のタイムリミット」に関する無知にもつながっているように思えます。

そもそも不妊が増えている背景には、結婚年齢の上昇があります。*3

女の平均初婚年齢は1970年代半ばから上昇基調にあり、1990年代に入るとそのペースを速めました。それに連動して第1子出産年齢も上昇し、2011年には30歳を超えてしまいました。

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20代の出生率の劇的な低下が合計出生率を引き下げています。

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ところで、1990年代以降に上昇したものといえば大学進学率です。

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「女の大学進学率上昇→初婚年齢上昇→第1子出産年齢上昇→低出生率」の関係が見えて来るようですが、これはエマニュエル・トッドの指摘そのものです。

経済幻想

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直系家族的社会の教育熱心と出生率の低下傾向は、一つの全体的構造をつくる。それは、少数の子どもをつくって、彼らに集中的に教育するという世界である。この過程は、一定の論理的ループをもって進行する。というのも、長い修学期間は、遅い結婚、遅い出産を意味し、これが今度は低い出生率を助長するからである。

直系家族的社会は、この一時的な成績の良さを、人口面でツケを払わされることになる。子どもを少なくすることによってきわめて手厚い教育を施せたのであるが、同時に、人口減少は、アメリカの文化的停滞と同じく、織り込み済みのことなのである。

個々人にとっても社会全体にとっても肯定的に評価される大学進学(率上昇)が、個人ベースでは不妊の増加、社会全体では低出生率(→人口減少)という深刻な問題を引き起こしているのかもしれない、という話でした。

人生というギャンブルに、大学進学は必ずしも有効なベットとは限らないということでしょう。

若い人は長山のメッセージをよく噛みしめてください。

晩婚化、非婚化が解消されていない理由は、単純にいうと男女共に自分のレベルを棚上げにして高望みをしており、しかもそれを高望みと自覚していないことにある。ここにも現実の自分を把握できず、理想化された「本当の自分」 にこだわるという時代的弊害が表れている。

生物学的に考えれば、子供を残す者が真の勝者だ。生命の絶対性は、勝ち組だの負け組だのといったレベルではないのである。*4

totb.hatenablog.com

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*1:野球選手のパフォーマンスと女の出産能力のaging curveはよく似ているように見えます。興味がある人は"baseball aging curve"で画像検索してください。

*2:山本昌を自分に当てはめてはいけないことは、男にとって常識でしょう。

*3:子供を持つのであれば「ある程度の年齢になったら結婚」する必要があります。

*4:強調は引用者。