読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

少子化の原因に関する簡単なまとめ

人口・少子化

少子化の原因が分かった」と称する某記事について知人にコメントを求められたので、ついでに書くことにします。

団塊世代の人口が多いのは出生率上昇ではなく死亡率低下の結果ということですが、団塊世代の出生数は「産めよ増やせよ*1」の時期を大きく上回っています。団塊世代が多い主因は死亡率低下ではなく出生率上昇です。第二次大戦後の出生率の一時的上昇(ベビーブーム)は多くの国々で生じたことです。

f:id:prof_nemuro:20160119235530g:plain

日本のベビーブームは短期間で終わりましたが、その主因は1948年の人工妊娠中絶合法化にあります。出生と人工妊娠中絶の和「潜在的出生数」はベビーブーム後も高水準を維持し続け、急低下を始めるのは1970年代に入ってからです。

f:id:prof_nemuro:20160119150229g:plain

戦後の出生率急低下の背景には、国ぐるみで人口抑制が図られたことがあります。そもそも、国内の余剰人口の受け入れ(押し付け?)先が必要とされたことが戦前の大陸進出の一因だったわけですが、敗戦によって受け入れ先がなくなってしまったために、人口抑制が急務とされ、「子供は二人」が定着することになりました。*2

出生率抑制策と言えば中国の一人っ子政策が有名ですが、今では日本よりも低い出生率に悩むシンガポールも「子供は二人」への誘導策を打ち出していました。日本も同様のことを行っていたわけです。*3

www.bbc.co.uk

某記事では死亡率低下が出生率低下の原因としていますが、死亡率低下が避妊の普及と相まって出生率低下を引き起こすことは「人口転換」としてよく知られています。出生率低下によって生まれる「人口ボーナス」が経済成長率を高めることもまた常識であり、何ら驚くことではありません。

人口転換 - Wikipedia

第1段階…多産多死型

第2段階…多産少死型

第3段階…少産少死型

多産多死から少産少死が、死亡率低下によって引き起こされる「第一の人口転換」ですが、日本をはじめ、東アジア、東南アジア、ヨーロッパの多くの国が現在直面しているのは、合計出生率が人口置換水準を大きく下回る「第二の人口転換」です。

f:id:prof_nemuro:20160119141722g:plain

少産少死の第3段階では各夫婦から平均二人の子供が生まれます。第二の人口転換においては、夫婦(事実婚を含む)から平均二人の子供が生まれることは変わりませんが、結婚しない女・子供を産まない女が増えることで、社会全体の出生率が低下します。*4

日本でも、結婚した女の出生率はほぼ一定であり、1970年代からの未婚率の上昇が合計出生率の低下を引き起こしています。

f:id:prof_nemuro:20160119141715g:plain

f:id:prof_nemuro:20160119151416g:plain

f:id:prof_nemuro:20160119233825g:plain

未婚率上昇は乳児死亡率低下とは直接的には無関係であるため、第二の人口転換の原因は別に探さなければなりませんが、1960~70年代に進んだ「男女の社会的役割(地位)の変化」「個人主義化」というのが定説です。*5

「自己責任」とは何か (講談社現代新書)

「自己責任」とは何か (講談社現代新書)

ウォーラーステインは、世界的な若者の反乱の年である1968年を世界革命だと位置づけています。現在主流となっている新しい社会運動(フェミニズム、同性愛解放運動、少数民族解放運動、環境保護運動など)は、60年代にルーツがあります。

原俊彦が言うところの「究極の個人主義」が蔓延した結果です(下のリンク先の資料はお勧め)。

ドイツと日本における無子の増加 -子どものいない社会へ? 

とりわけ 1960 年代に本格化した高学歴化は、女性自身が自らのキャリアを自ら築く可能性を生み出し、同時に起きた女性解放運動は、従来の専業主婦モデルというライフスタイルが持つステレオタイプな価値観を問題化した。さらに問題化は女性のみに留まらず、一家の養い手としての父親という男性のライフスタイルにも及ぶこととなり、最終的には家族を形成し、子どもを持つこと自体が自明なことではなくなり、究極的な自己実現との関連において、改めて検討されるべき問題となった。

このような究極の個人主義ともいえる状況においてパートナー選択を行うには、他者とは異なる、自由で独立した、自己実現を求める個人同士のライフスタイルが、奇跡的に一致するのを待たねばならず、また、仮に、そのような奇跡が起きたとしても、それが安定的に推移するという保障はない。

女の男との同等化の結果、「結婚相手として満足できる男」が少なくなり、それが非婚化・無子化を引き起こしているわけです。「若者にカネを渡せば少子化問題は解決する」と思いたがる(→政府を悪者にしたがる)人が多いようですが、事はそう簡単ではありません。

www.thelocal.de

Childless Germans under 50 said the most common reason they had not plumped for parenthood was that they had not found the right partner, …

… a quarter of German women born between 1964 and 1968 did not have children primarily because they believed motherhood was incompatible with pursuing a career.

Any government financial or social incentives could not compete against personal reasons for putting off having children, the paper said. *6

jp.reuters.com

高学歴で高収入を得て都会で働く女性にとって、ふさわしい夫を見つけることは至難の業だという。

中国では、20代後半までに結婚せず「売れ残った」キャリアウーマンは「剰女」と呼ばれる。

14億人近い人口の中国では多くの男性がいるはずだが、社会的地位といったことが独身のキャリアウーマンにここでも立ちはだかる。[…]剰女とは違い、「剰男」はたいてい大都市で生活せず、収入も低い。

f:id:prof_nemuro:20160114104358g:plain

business.nikkeibp.co.jp

残念ですが、非戦を貫く社会が存続できないように、「個人の自由」を絶対視する社会も存続できないということなのです。*7

関連記事もご参考に。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

学校の授業でダンスのために男女のペアを作らせることを想像してください。タイムリミットを設けずに「好みの相手を見つけてペアになれ」という指示を出せば、いつまでたっても相当数の男女がペアを作れずに残ることは容易に想像できるでしょう。全員をペアにするためには、教師が圧力をかけて生徒の希望を封印(妥協、我慢)させる必要があるわけです。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

フランス全体のおよそ8パーセントがムスリムであり、パリの20歳以下においては45パーセントがムスリムであるとされる。これらの値は今後も増加する一方だろう。 

↑「少子化を克服した国」の実態。ちなみに、スウェーデンの人口の7%はアジア・アフリカ出身者(一世)

*1:「人口政策確立要綱」(1941)では夫婦の平均出生数5が目標。

*2:1950年代になると中南米への移民が奨励されました。「ドミニカ棄民」もその一例です。

*3:韓国でも朴大統領が強力に出生率抑制を推進しました。

*4:第一の人口転換の本質は「死亡率低下に対応した出生率低下」ですが、第二の人口転換の本質は「非婚化・無子化」であり、二つは本質的に異なります。

*5:第一の人口転換が男女同等化を促した面はあるので、遠因ということは可能です。

*6:下線は引用者。

*7:人口競争に負けるということ。ヨーロッパへのイスラム系や黒人の流入が好例。