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マイナス金利に関する“?”な記事

昨日の日本銀行マイナス金利導入に関して、奇妙な主張をする記事がありました。

www.sankei.com

行員が机から離れなくても銀行は日銀から巨額の利払いを受ける。おまけにこの金利は市場金利の目安になるので、一般的な貸出金利を下げ止まらせる。日銀がカネを大量に刷って、金融機関に流し込んだところで、カネは動かない。日銀は昨年末、前年比で30%増、79兆円を新規発行したが、金融機関の日銀当座預金は同73兆円増と大半が日銀内にとどまっている。その間の銀行貸出増加額は10兆円にすぎない。カネが増えても回らないので、ヒト、モノ、サービスへの需要が増えず、デフレ圧力は減らない。

2014年12月と2015年12月の平残の変化は次の通りです。

  • マネタリーベース:+79.0兆円
  • うち日銀券+貨幣:+5.5兆円
  • うち日銀当座預金:+73.5兆円

「日銀がマネタリーベースを増やしたのに銀行は当座預金に寝かせている(→貸出に回していない)」という批判のようですが、銀行が国債売却と引き換えに日銀から受け取る日銀当座預金は、その名の通り日銀の当座預金口座にある預金であり、口座間は移動するものの、市中への貸出に出回るものではありません。「日銀当座預金を貸出に回さない」は銀行に対する筋違い(意味不明)の批判です。

準備預金は、銀行の対企業融資の原資を提供するのではなく、日銀勘定にじっと留まったまま、銀行間決済の場、日銀による金利操作の舞台、という役割を務めるもの。

また、超過準備への0.1%の付利にも批判的ですが、付利には当座預金の量的目標と金利水準を両立させるなどの重要な意味があります。他の中央銀行も行っていることであり、銀行への(不当な)補助金という見方は不適切です。

www.frbsf.org

…, paying interest on reserves allows the Fed to place a floor on the federal funds rate, since depository institutions have little incentive to lend in the overnight interbank federal funds market at rates below the interest rate on excess reserves. This allows the Desk to keep the federal funds rate closer to the FOMC’s target rate than it would have been able to otherwise.

…, the Fed can change the rate for interest on reserves to adjust the incentives for depository institutions to hold reserves to a level that is appropriate for monetary policy.

新規の貸出金利も下げ止まっていませんが、0.1%の付利が貸出金利低下を妨げているでしょうか。

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銀行は日銀から供給された当座預金を

  • そのまま当座預金口座に寝かせる(←付利がプラスの場合)
  • 貸出や有価証券買い入れに回す(←付利がマイナスの場合)

と認識している点では、下の記事も同じです。*1

headlines.yahoo.co.jp

銀行が日銀に預ける預金の一部がマイナス金利となることで、銀行はこれ以上日銀に預金しても損をする。そうすると、(預けるよりも)貸し出しに回すことが期待できます*2

nikkan-spa.jp

今回のマイナス金利導入により、「日銀当座預金」に利息収入ではなく手数料がかかることになってしまいました。こうなると銀行は利益を確保するために、こぞって企業にお金を貸し出すようになるだろう。*3

diamond.jp

日銀が金融機関から国債を買い取っても、金融機関はそれで得たお金を日銀に預けるだけだった。だがマイナス金利となれば、そういうわけにはいかなくなる。投資や貸し出しなど他に資金を振り向けざるを得ず、経済の活性化につながるだろう。

(井出真吾・ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト)

toyokeizai.net

日銀がマイナス金利の導入により意図しているのは、銀行が日銀にお金を預けても損をするようにして、そのお金を積極的に中小企業などへの融資に回すように仕向けるということです。 

gendai.ismedia.jp

日銀は0.1%の利息をつけている。[…]筆者には、日銀が銀行などに2200億円程度の「お小遣い」を与えているようにしか見えない。

もし、銀行などがこれまでのように、買い取りされた国債のかわりに、日銀への当座預金を積み増しするなら(いわゆるブタ積み)、800億円ほどの手数料を日銀に払うことになる。

それをきらって、銀行などが、日銀当座預金するのではなく貸出などに回せば、その分経済活動が活発になる。それが、日銀の狙いでもある。  

日本の識者のなかで、量的緩和を理解していない人がほとんどである。*4

business.nikkeibp.co.jp

日銀が国債を購入するなどして銀行などに資金を供給しても、その資金が日銀当座預金に滞留していては、景気は良くなりません。そこでマイナス金利を適用することにより、銀行などが当座預金から資金を引き出し、融資や債券投資に回すよう促す。これがマイナス金利導入の狙いです。 

様々な「識者」が説明するように、銀行は日銀から供給された当座預金を企業等への貸出の原資にする(転貸する)と思っていた人も多いでしょうが、それが誤解であることをイングランド銀行四季報で説明しています(どちらを信用するかは読者次第)。*5

Money creation in the modern economy

A related misconception is that banks can lend out their reserves. Reserves can only be lent between banks, since consumers do not have access to reserves accounts at the Bank of England. 

今回のマイナス金利導入に関しては下の記事で考察しています。

totb.hatenablog.com

マイナス金利

マイナス金利

*1:追加しています。

*2:[引用者注]明治大・飯田泰之准教授のコメント

*3:[引用者注]これまで積み上げられた当座預金にはマイナス金利は適用されないことを理解していないようです。

*4:強調は引用者。

*5:このような解説をする「識者」のあまりの多さには戦慄させられます。