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マイナス金利と「識者」の錯誤

この度の日本銀行マイナス金利導入は、多くの「識者」が根本的な思い違いをしていることをあぶり出すことになりました。

既に下の記事の後半に数例を挙げていますが、

totb.hatenablog.com

今回は新たに二例を追加します。

diamond.jp

日銀は銀行の銀行だから、銀行間の決済は日銀口座で行われる。

黒田緩和の開始で、日銀は銀行から国債を買い上げるようになった。支払いには日銀券(ベースマネー)が使われる。毎月、兆円単位のカネが銀行に注がれる。銀行にとって日銀マネーは飯のタネのはずだった。貸出に回して利ザヤを稼ぐのが銀行の商売だ。

銀行の当座預金に日銀がカネを流せば、市場に出回る通貨が増えビジネスは活気づく、というのが金融論のイロハである。*1

「ブタ積み」がある限り、カネは日銀の外に出て行かない。ならばマイナス金利をつけて利息を徴収すれば、さっさと出てゆくだろう、というのが今回の政策だ。

gendai.ismedia.jp

本来なら、そもそも日銀が当座預金に0.1%の金利を付けていること自体が、まったくおかしい。銀行は日銀に預金しているだけで、何もしなくても0.1%の金利収入を得られてしまうからだ。つまり、銀行に営業努力をしないように促している政策なのだ。

銀行は本来、企業に資金を貸し出して成長を支援するのが役割である。ところが、銀行は日銀に資金を預けているだけで金利収入を得られるのだから、汗水流して貸出先を見つけようと努力するわけがない。

日銀が超過準備に利息を付けているために、日銀マネーが市中に出回らず、景気拡大が進まない、という理屈ですが、これは「理論的に全くのピントはずれ」です(バカげた妄想?)。 *2

新聞・雑誌等の殆どの経済解説は[…]“銀行がこれを引き出し、これを原資にして、対民間融資を拡大することが望まれる”と書き、あるいは“なかなかこれが有効活用されずに、日銀に眠ったままなので困ったことだ”などと嘆いたりしている。残念ながらこうした解説は、理論的に全くのピントはずれであり、これが世論の混乱を招いているのである。

準備預金は、銀行の対企業融資の原資を提供するのではなく、日銀勘定にじっと留まったまま、銀行間決済の場、日銀による金利操作の舞台、という役割を務めるもの*3

銀行は自ら預金を創造して貸し出すのであって日銀から供給されたマネーを転貸するのではありません。*4

長谷川は2013年の量的・質的金融緩和の開始時に 

gendai.ismedia.jp

そうした資産を買うことによって、市中に出回る日銀券を増やそうという政策である。日銀が市場調節する操作目標も、従来の無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベース、すなわち「日銀券+日銀当座預金+貨幣」に変更した。平たくいえば、短期金利の水準を目標にせず、市場に出す一万円札を増やす。いわゆる量的緩和政策である。

と書いていましたが、どうやら「日銀が国債等の買入れと引き換えに当座預金を供給する→銀行を経由して日銀券が市中に流れる」と本気で考えているようです。この「本来の流れ」が、超過準備への付利(銀行への補助金)によって滞ってしまっているために、QQEの効果が減殺されてしまっている、と考えているのでしょう。「銀行ダム論」とでも言えるでしょうか。

しかし、超過準備に利息を付けるのは、短期金融市場の取引の円滑化と量的目標を両立させるためであり、「銀行に営業努力をしないように促している」ものではありません。

“Why is the Fed Paying Interest on Excess Reserves?” (アトランタ連銀)

日銀が2013年4月にQQEを開始した時点でも、2012年末→2014年末への量的増加を

  • マネタリーベース:138兆円→270兆円
  •   うち銀行券 :87兆円→90兆円
  •   うち当座預金:47兆円→175兆円

と想定していました。銀行券は「自然増」にとどまり、マネタリーベース増加の大部分は当座預金です。そもそも、QQEは「超過準備(ブタ積み)を激増させる→企業や家計の予想インフレ率が上昇する→円安・資産価格上昇・支出増加が生じる」というメカニズムを想定しているものであり、「日銀が大量供給した銀行券が銀行を経由して市中に溢れてインフレ好況が生じる」というものではありません。

付利は超過準備を安定的に増やすもので、リフレ政策には有効なツールのはずなのですが、なぜか付利をリフレ政策の障害と見做して攻撃するリフレ派が多く見受けられます。QQEの効果が期待外れに終わっていることに焦りを感じていることの表れでしょう。「QQEが本来の効果を発揮していないのは日銀と銀行が悪いからだ」と、責任を「抵抗勢力」に転嫁しているわけです。「革命が成就しないのは裏切り者がいるためだ」という左翼過激派の理屈とよく似ていますが、転向者が総括されないか心配です。

なお、日銀当座預金が増減する仕組みを知りたい人には、日本銀行のwebサイトにある「日本銀行の金融調節を知るためのQ&A(解説ホ.)」がお勧めです。

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totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com 

マイナス金利

マイナス金利

本当に日本銀行が悪いのか

本当に日本銀行が悪いのか

*1:強調は引用者、以下同。

*2:リフレ派が「日銀は当座預金をもっと増やせ」と主張する一方で、「日銀が供給したマネーがブタ積みになっているのはけしからん」と批判するのは支離滅裂です。

*3:強調は原文では傍点。

*4:あるいは銀行貸出によって預金が創造される。