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超過準備の付利撤廃/マイナス金利と緊縮財政

一つ前の記事では、リフレ派が「銀行が日本銀行から供給されたカネを当座預金に積み上げているだけなのはけしからん」と、意味不明の銀行批判を始めたことについて書きました。銀行を批判する論者によると、銀行がそのような行動をとる元凶は、日銀が超過準備に付ける0.1%の利息です。リスクフリーで0.1%の利息収入を稼げるため、銀行はリスクを取った貸出に日銀から供給された資金を回さないのだ、というロジックです。

www.news-postseven.com

高橋:マイナス金利導入は、日銀が銀行に、お前たちもっと仕事しろということ。日銀が買いオペで国債を取り上げたら銀行は当座預金に回したので、今度は当座預金から利息を取り上げて、逆に手数料を払わせてカネを外に出させることにした。

ところが銀行は自分で投資先なんて考えたくないから、リスクだリスクだと言うんです。手は3つある。1つは貸し出し、2つは株式投資、3つめは海外投資。つまり、銀行がやるべき当たり前のことをやれって話ですね。

高橋:でも、黒田(東彦・日銀総裁)さんもまだ甘いですね。マイナス金利は当座預金のうち新規分についてだけで、これまでの250兆円の残高のほとんどには依然として0.1%が付く。

長谷川:本来なら、いまある残高の0.1%をなくすべきです。 

こちらの「解説」も同様です。

thepage.jp

当座預金については、法定準備金を超える部分について0.1%の金利が付与されるため、銀行はわざわざこれを引き出して運用しようとしません。このため、日銀がいくら国債を追加購入しても、市中にマネーが出回らないという状態が続いていたわけです。

以前の記事に書きましたが、超過準備への付利は、日銀が短期金融市場の金利を目標水準に誘導するための効果的なツールです。実際、日銀当座預金の増加分への付利を-0.1%にすることが始まった2月16日から、コール市場金利はゼロ近辺に貼り付き、残高も急減しています。

www.bloomberg.co.jp

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もう一つ重要なのは、付利がなければ、銀行の資産の無視できない割合が「利息を稼げない資産」になってしまうことです。さらに、2月16日から始まった日銀当座預金の増分へのマイナス金利適用は、銀行の「利息を稼げる資産(国債)」を「減損する資産」に変えてしまいます。量的・質的金融緩和という「日銀の事情」で銀行にこのような負担を強いることは"fair"とは言い難いでしょう。

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超過準備への付利に関するこれらの批判については、先日、イェレンFRB議長が議会で回答しています。

www.bloomberg.com

Doesn't paying interest on excess reserves encourage banks to hoard reserves?
The banks don't really decide how much reserves they have. The Fed controls the level of reserves by buying and selling Treasuries and other securities. (That's how reserves got so big in the first place.) So, no risk of hoarding.
But is it fair for the banks to be getting all those interest payments?
That's debatable, but here's the case: The Fed is earning interest on all those Treasury bonds it owns. So much interest that it's been forking over about $100 billion a year in profits to the Treasury each year, which helps narrow the federal budget deficit. You can think of the interest on excess reserves as the Fed's payment for the assets it bought. If it didn't pay any interest on reserves, it would essentially be getting those assets for free. Which also seems a bit unfair. *1

www.bloomberg.co.jp

イエレン議長は、超過準備と表裏の関係にあるのは米金融当局の多額の資産保有だとし、こうした保有から米財務省に多額の国庫納付を行っている点を指摘。「金融当局は08-15年に約6150億ドルもの資金を議会、納税者、財務省に移転し、政府の資金繰りに大きく貢献した」と語った。

日本でも仕組みは同じなので、量的・質的金融緩和は、日銀の利息収入と国庫納付金の増加に寄与しています。

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付利を撤廃すれば、国庫納付金をその分増やせます。一方、銀行は国債からの利息収入を失ったままです。要するに、量的緩和する+超過準備への付利撤廃」と「量的緩和しない+銀行への国債利払停止」は実質的に同じということです。付利撤廃は、財政を助けるために銀行に負担を押し付ける方策ということになります。マイナス金利はそれをさらに強化します。

マイナス金利の恩恵、最大は政府の1.2兆円=三菱UFJMS証券 | Reuters

政府は国債発行などで1010兆円を資金調達しており、負担部分と差し引いても1.9兆円とマイナス金利導入で最も大きな恩恵を受ける。日銀の負担0.7兆円と合算したネットの政府では、1.2兆円のプラスとなる。

当座預金に適用するマイナス金利をマイナス0.5%にすると、その恩恵の規模は4.6兆円に膨らむ。

一方、銀行の負担規模は、現状のマイナス0.1%で0.7兆円。マイナス金利の拡大シナリオでは、5.3兆円に負担額が膨らむ。手数料引き上げ時は、2.3兆円に負担額を抑制できる。

付利撤廃を叫ぶ人の多くが、財務省の緊縮路線に反対しているようですが、実のところは、財務省工作員なのかもしれません。

補足

「リフレ政策は世界標準」と叫んで白川前日銀総裁を攻撃したリフレ派が、FRBイングランド銀行なども行っている超過準備への付利については「世界標準」と認めるどころか、「白川前日銀総裁が始めた銀行への補助金」と批判するのは不可解です。

*1:下線は引用者。