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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「そこまで言って委員会NP」における日銀のマイナス金利に関する論議

金融

同じような内容を繰り返すのは気が進みませんが、本日(21日)放送された「そこまで言って委員会NP」での“問題発言”について簡単に書くことにします。

一つ目は、元金融庁長官(大蔵省出身)の「使う予定のないお金を預かって、それを必要とする人に融通して付加価値を生むのが信用創造」との発言です。一般人がこのように誤解しても仕方ありませんが、この経歴としては問題があるでしょう。*1

二つ目は、日本銀行出身の野党議員の発言です。*2

  • 金融機関は約200兆円余計に日銀に預けているので年間2000億円儲けている。
  • 付利がプラスの時はもらってマイナスになると顧客に転嫁しようとしている。
  • 付利は0%に戻す(撤廃する)のが筋。

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銀行等の資産として200兆円超の超過準備が積み上がったのは、日銀が量的・質的金融緩和(QQE)のために銀行等から国債を大量に買い入れた結果です。もしQQEをしていなければ、銀行等の国債保有額は約200兆円多くなっていたはずです。

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このことは、銀行等が受け取るはずだった国債利息を代わりに日銀が受け取っていることを意味します(→国庫へ納付)。実際、2015年度上期の日銀の国債利息収入は、QQE開始前より3000億円も増加しています。一方、超過準備への付利は半期で1000億円です。

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銀行等は超過準備から0.1%の利息を得られる前提で日銀に国債を売却していたので、これまで積み上がった超過準備への付利を撤廃されることは、詐欺の被害に遭うようなものです*3。日銀も、銀行等の総資産の1割強を占める日銀預け金をいきなり「利息を稼げない不良資産」にするわけにはいかないので、これまで通り0.1%の利息を続けるのでしょう。日銀当座預金が主に国債と引き換えに銀行等に供給されていることの意味を考えれば、安易に「付利は不当な補助金だから撤廃せよ」などとは言えないはずです。

今後の日銀当座預金の増加分には-0.1%の金利が適用されるわけですが、そうなると、銀行は収益確保のためにより高い価格での国債売却を求めるようになります(→国債金利低下)。実際、1月29日のマイナス金利政策導入発表後、国債金利は付利の変化幅(-0.2%ポイント)とほぼ同程度低下しています。

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日銀が1月29日に公表した参考資料「本日の決定のポイント」で

Q2.長期国債の買入れが困難になることはないのか?

A.マイナス金利分だけ買入れ価格が上昇(金利が低下)することで釣り合うので、買入れは可能と考えられる。 

と説明しているように、超過準備への付利引き下げは、より高値での国債買い入れと引き換えです。 

日銀が国債市場の投機色を強めているとの懸念も出ています。QQEは当初のシナリオから外れて、行き当たりばったりになってきたように見えます。*4

マイナス金利

マイナス金利

国債金利がマイナスならば、キャリーは基本マイナスだ。そうすると国債を投資対象として持つためには、キャリー収益を相殺するだけのキャピタル収益を確保しなければならない、ということになる。価格によって購入量が変わるわけではない日銀の定期的な買い切りオペは、マイナス金利国債を購入しても、さらにマイナスの金利(債券価格は上昇)で国債を売れば収益が得られる環境を補助してきたともいえる。言い換えると、マイナス金利がますますマイナス金利を呼ぶということだ。

キャリーがなくてキャピタルを狙うというのは、やや誤解を承知で言えば、投資というよりは投機的な側面が出てくる。[…]マイナス金利国債取引を投資から投機に変えてしまう。 

totb.hatenablog.com 

totb.hatenablog.com

おまけ

「浜の真砂は 尽きるとも…」

www.news-postseven.com

第一生命経済研究所・主任エコノミストの藤代宏一氏が日銀のマイナス金利導入の狙いを解説する。

「銀行は多くの資金を利子目当てで日銀の当座預金に預けていました。マイナス金利の導入によって、銀行はこれまでのように資金を日銀に寝かせておくのではなく、積極的に投資に回して経済を活性化させることが期待される。その狙い通りにいけば、株高の流れを後押しするでしょう。また、金利の低い通貨は売られる傾向が強いので今後は円安トレンドへと進み、輸出企業の業績を盛り立てることも期待される」 *5

「正義のミカタ」の没グラフ

もし日銀がマイナス金利を導入していなかったら、今頃リーマンショックのときと同じように、もっとひどいことになっていたということです。

マイナス金利政策の結果、民間の銀行はおカネを日銀に置いておくことができなくなって、手元に資金がダブついています。 

銀行の日銀預け金が増加する仕組みを「企業は銀行から借り入れたカネをそのまま銀行の当座預金口座に寝かせておくだけで、投資に回さない」と同じように考えているようです*6。これが「日銀が当座預金に0.1%もの利息を付けるのはけしからん」「日銀に預けっぱなしにしないで市中に貸し出せ」につながるのは自然です。

totb.hatenablog.com

このような考えが誤解であることを解説した入門書としてお勧め。

本当に日本銀行が悪いのか

本当に日本銀行が悪いのか

イングランド銀行季報の"Money creation in the modern economy"での説明。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/quarterlybulletin/2014/qb14q102.pdf

In the modern economy, most money takes the form of bank deposits. But how those bank deposits are created is often misunderstood: the principal way is through commercial banks making loans. Whenever a bank makes a  loan, it simultaneously creates a matching deposit in the borrower’s bank account, thereby creating new money.*7

Rather than banks receiving deposits when households save and then lending them out, bank lending creates deposits.

クルーグマンと比べてください。

http://krugman.blogs.nytimes.com/2012/03/27/minksy-and-methodology-wonkish/

If I decide to cut back on my spending and stash the funds in a bank, which lends them out to someone else, this doesn’t have to represent a net increase in demand.

ちなみに、クルーグマンは自分とイングランド銀行は同じことを言っていると主張しています。

*1:なお、その他の発言は筋が通ったものでした。

*2:東京新聞中日新聞論説副主幹も同内容をさらに過激に叫んでいました。

*3:国債の大部分は固定利付です。

*4:好意的に評価すれば、「臨機応変・柔軟な対応」になるのでしょうが。

*5:強調は引用者、以下同。

*6:銀行は日銀から借り入れたカネや国民から集めたカネを(0.1%の利息目当てで)そのまま日銀の当座預金口座に寝かせておくだけで、貸出に回さない

*7:強調は原文。