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マイナス金利に関する“?”な記事③

リフレ派の代表的論者の一人がマイナス金利について解説するインタビュー記事ですが、“謎解説”がいくつもあります。

business.nikkeibp.co.jp

銀行は現金を市中からかき集め(→預金)、それを貸し出すと説明しています。

みずほとか、りそなとか、あとは地銀や信金などの市中銀行は皆さんから預金を預かって、その預かった預金のほとんどを貸し出しに回して、預金金利と貸出金利の利ざやで稼ぐのが商売です。

実際には、銀行が貸し出す預金(負債)は、貸出(資産)によって創造されるものです(信用創造)。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/quarterlybulletin/2014/qb14q102.pdf

Rather than banks receiving deposits when households save and then lending them out, bank lending creates deposits.

銀行が現金をかき集めるのは、貸出の原資ではなく払い戻しの原資にするためです。*1

金融ビッグバンの幻想と現実

金融ビッグバンの幻想と現実

私たちは、銀行が預金集めをするのは貸し出しのための「原資」を調達しなければならないからだと考えがちですが、実際にはそうではなく、銀行はある預金の払い戻しに必要な資金を別の預金で調達しているのです。簡単に言えば「預金で預金の支払いをしている」――これが現代の銀行なのです。

法定準備についても謎解説です。

非常時はともかく、日常の一般的な引き出しには耐える余力があるという証明が欲しい。そのために各銀行は、預金の一定割合(準備率という)を、日銀の当座預金残高に積まなきゃいけない。

日本銀行の説明は以下の通りです。*2 

準備預金制度の現在の意義は、日本銀行が金融機関から受け入れる当座預金(日本銀行当座預金)の残高について、日々の資金決済需要を安定的に上回る一定の水準に維持するように促す仕組みを設けることにあります。これにより、日本銀行当座預金への需要、すなわち、短期金融市場における資金の需要を概ね安定的かつ予測可能とし、金融市場調節を円滑に行うことを可能にしています。

法定準備(所要準備)は、預金者の現金引き出しへの備えではなく、資金決済への備えが目的です。

下はサンフランシスコ連銀の解説ですが、「日常の一般的な引き出しには耐える余力」 は"vault cash"です。

www.frbsf.org

Depository institutions may hold their required reserves as:

  • Vault cash
  • Deposits at their regional Federal Reserve Bank

Depository institutions normally keep a certain level of vault cash on hand to meet the operating needs of their offices and branches. Required reserves above the amount of vault cash are met by holding reserve balances with Federal Reserve Banks. 

次の説明における「市中のお金の量」は、マネタリーベースではなくマネーストック(旧マネーサプライ)です。日銀はマネタリーベースの量はコントロールできますが、マネーストックは直接的にはコントロールできません。

日銀は市中銀行が持っている国債などの資産を買い取ったり、売却して、コールレートや市中のお金の量(マネタリーベース)をコントロールしようとするようになりました。

「巨額の超過準備(ブタ積み)がある=ゼロ金利が続く」も現実的ではありません。

「ずっとゼロ金利、長期でやりますから信じて」と口で言うだけよりは、「こんなにブタ積みがあるから、これがなくなるまでは金利上げませんよ」のほうが信じやすいでしょう。

アメリカではFedが昨年12月にfederal funds rateの目標レンジを0-0.25%から0.25-0.50%に0.25%ポイント利上げしましたが、超過準備は依然として2兆ドルを超えています(アメリカのGDPは約18兆ドル)。

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超過準備に付ける利息(IOER)を0.25%から0.50%に引き上げることで、巨額の超過準備とFFレートの引き上げを両立させています。*3

巨額のブタ積みがあっても利上げは可能なので、 「ずっとゼロ金利、長期でやりますから信じて」ということにはなりません。*4

本題のマイナス金利の説明に入る前に謎解説が続出しているので、後編にも“期待”できそうです。

totb.hatenablog.com

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*1:リフレ派は、中央銀行が供給する銀行券が何らかのルートを経由して市中に流れる→銀行は銀行券が余っている主体から銀行券を集め、借り入れ意欲のある主体に貸し出す、というモデルを想定しているわけです。ここから、中央銀行がマネタリーベースを供給し続ければ、予想インフレ率上昇・マネーストック増加が必然的に生じる、というリフレ理論が導かれます。

*2:日銀webサイト「準備預金制度とは何ですか?超過準備とは何ですか?」より。

*3:所要準備に付く利息もIOERと同水準。

*4:「景況が改善してインフレ率が上昇しても、日銀はゼロ金利を継続して借入金利の上昇を抑制する」と民間に信じさせることは、需要見通しが好転して実質金利が低下するその時点まで借入を先延ばしにすればよい、という行動を促進する可能性もあります。