Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

国と企業の利害の不一致

1953年のウィルソンGM会長の有名な発言は、当時のアメリカの経営者に「国と企業の利害は一致している(運命共同体)」という観念があったことを示しています。

…  what was good for our country was good for General Motors, and vice versa. The difference did not exist. Our company is too big. It goes with the welfare of the country. Our contribution to the nation is considerable.

しかし、現在の日本ではこの観念が失われつつあり、それが経済にも悪影響を及ぼしています。 

https://www.imf.org/external/japanese/np/blog/2016/031416j.pdf

日本がデフレから決別するには賃金上昇が必要である―これは全ての人が同意するところです。1995 年から正社員の賃金は僅か 0.3%しか上昇していません!たとえば、利益が史上最高を更新したトヨタ自動車が 2015 年に決めた基本給の引き上げは 1.1%です。また経団連に加盟する 219 社の平均は 0.44%にすぎません。和製英語で「ベースアップ」と呼ばれる基本給の上昇は久しく実現していないのです。

IMFエコノミストの指摘にあるように、トヨタ自動車当期純利益リーマンショック後の落ち込みから回復して史上最高益を達成しています。*1

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しかしながら、賃上げに消極的なだけでなく、設備投資の重心も国内から海外に移りつつあります。

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現地生産化が進んだため、大幅な円安にもかかわらず輸出はリーマンショック前のピークの2/3以下の水準で停滞しています。国内販売も停滞しているため、国内生産はピークの3/4にとどまっています。

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企業のグローバル化が進むことは、企業と国の利害が一致しなくなってくることを意味します。グローバル化した企業にとって、日本は「人口減少に伴い需要の先細りが必至の魅力に欠ける市場」であり、積極的な投資先にはなりにくいでしょう。このような状況において「企業にとって良いことは日本にとっても良いこと」と、内外のグローバル企業を優遇する政策を行えば、都合よく「つまみ食い」されるだけになりかねません*2グローバル化した企業は「日本で儲ける目的で滞在している外国人」のような存在と考えたほうがよさそうです。

法人税減税や雇用規制緩和など「企業にとって良いこと」を追求した結果が閉塞感が強まる日本の現状であるなら、国民生活を改善するためには「企業にとって悪いこと」を実行する必要があるのではないでしょうか。*3

国家戦略特区の正体  外資に売られる日本 (集英社新書)

国家戦略特区の正体 外資に売られる日本 (集英社新書)

経済のグローバル化の問題のひとつが、経済活動が国内で完結していれば可能だった「税制を通じた富の再分配」 という政治機能が働かなくなる点にある。

国にも、国民にもメリットがない。負担は国民と国民が支える国家へ、利益は企業へ。これが国家戦略特区の正体である。

おまけ

ヒト・モノ・カネの内外の移動を容易にすると、日本国内にとどまっていた「優良資産」が海外流出して日本の弱体化に拍車がかかる恐れがありますが、その国内版が大阪の衰退ではないかと考えられます。

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現在は一極集中で繁栄する東京も、いずれは大阪化して「日本終了」となりかねません。

グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書)

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自由貿易は、民主主義を滅ぼす

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自由貿易という幻想 〔リストとケインズから「保護貿易」を再考する〕

自由貿易という幻想 〔リストとケインズから「保護貿易」を再考する〕

*1:以下、企業業績はトヨタ自動車に関するもの。

*2:有望な若手社員(や官僚)を会社が費用負担して海外留学させたものの、帰国後に外資系企業に転職されてしまった、というようなもの。

*3:たとえばグローバル化(≒開国)の逆の鎖国政策など。