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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

ノルウェーの保育の“根底”の違い

保育 人口・少子化

保育園事情に関して、先進国・北欧諸国を引き合いに、後進国・日本を批判する記事が多く見られます。*1

保育園増やせば解決か 「子育ては母」日本、「夫婦で育児」ノルウェーを比較 

ノルウェーでは、そんな1歳過ぎの子供を含め、9割を超える幼児が保育園に通っている。どんな子供でも保育園に入る権利がある、と国が保障しているからだ。

そもそも保育園に入るのは「権利」なので、希望者は入園を断られない。満員を理由に拒否される待機児童は存在しない。行政側が「ご期待に沿えませんでした」などと入園不可を通知するだけで誰も責任を問われず、母親が泣く泣く仕事をあきらめようが、あとは自分で手当てを、と放っておく国とは“根底”が違う。

重要なことは、ノルウェースウェーデンは男女平等*2を基本理念とする一種のイデオロギー国家であり、それこそが「“根底”の違い」であることです。*3

男女平等イデオロギーでは性別分業が否定されるため、女を家庭内でのアンペイドワークから「解放」することが必要となります。「女を家庭に縛り付ける育児から解放して男と同じように賃金労働させる」ことが目標とされるわけです。

ボーヴォワールが参考になります。*4

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。

子どもから解放されないと女性は解放されない

個人的な面では、一番大事なことは働くことです。そしてできれば結婚を拒否すること。

「女は家庭で子育てせずに賃金労働するべき」という観念が浸透した結果、保育園利用率は急激に上昇し、2歳児以上では90%を超えています。民間保育園の増加が目立ちます。

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利用時間も長時間が進んでいます。1歳児でも6割以上、3歳児では9割が週41時間以上の利用となっています。これが「女の育児からの解放」です。

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「まだ自宅で子育てしてるの?」という観念が「“根底”の違い」を生んでいます。

www.slate.com

The entire society has an attitude that both parents should be working. That means that the workplace has to be flexible toward parents with young children. It is very rare that mothers choose to be stay-at-home moms, and many who do feel that they are looked down on. In Oslo, I've never met a stay-at-home mom.*5

北欧諸国では、主に女が家庭内で行っていた育児が保育園にアウトソースされていますが、その引き受け手の多くもまた女です。その結果、ノルウェーでは公的セクター雇用の2/3が女、労働力人口の1/3が公的セクター雇用となっています。日本とは対照的です。

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良好な北欧の保育園事情は女の公的セクターでの大規模雇用に支えられており、またそれが「1歳児も週41時間以上保育」につながっているということです。北欧を見習うということは、これらの根底にある男女平等イデオロギーを日本の基本理念にするということですが、果たしてそれが可能でしょうか。

なお、男女平等の「副作用」は、人口減少または移民の大量流入です。これも含めて見習うべきでしょうか。

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totb.hatenablog.com

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totb.hatenablog.com

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*1:ノルウェーの施設barnehage(英訳はkindergarten)は日本の保育所と幼稚園の機能を併せ持つもの。本記事では保育園と訳す。

*2:「平等」と言うよりも「性差の存在の否定」あるいは「結果の同等化」と言う方が実態に近いと思われます。

*3:スウェーデンは外交方針として"feminist foreign policy"を掲げています。男女平等は北欧諸国が道徳的優位を示すソフトパワーと言えます。

*4:このような思想が「正しい」とされる社会が持続不能であることは明らか。

*5:強調は引用者。