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[グラフ]円高とソロスチャート

円相場は対ドルで1ドル=110円を割り込み、いわゆるアベノミクス相場(円安&株高)始まってから、最大・最長の円高局面を迎えています。

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この円高を、リフレ派が好んで用いるいわゆるソロスチャートで説明できるかを見てみます。

gendai.ismedia.jp

マーケットの今後の金融政策に対する予想は、「従来のQQE政策に限界が差し迫った結果、導入を余儀なくされたのがマイナス金利政策だが、そのマイナス金利政策の限界も意外と近い。そうであれば、日本の金融政策はまもなく限界を迎える」というものになるのは、ある意味当然であり、その予想が反映されての円高転換であったと推測される(もしくは、そういうロジックで投機筋が円高アタックを仕掛け、他の参加者がそれに乗った)。

円高は1月29日に日本銀行マイナス金利政策導入をアナウンスした後で急速に進みましたが、ソロスチャートは、日米のマネタリーベース比と為替レートの乖離が昨年夏から進んでいたことを示しています。*1

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「マネタリーベース比が為替レートを決定する」というリフレ派の主張に疑問が生じるわけですが、グラフの時間軸を過去に伸ばすと、さらにその疑問が深まります。*2

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リフレ派は

  1. マネタリーベースの量がインフレ率を左右する*3
  2. マネタリーベース比が為替レートを決定する
  3. マネタリーベースの量が景気を左右する(←クルーグマン

と、マネタリーベースの「神通力」を強調していましたが、1.が量的・質的金融緩和の現実によって否定された以上、2.も疑った方がよさそうです。

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totb.hatenablog.com

おまけ

クルーグマンのこの(↓)エッセイが、中央銀行とマネタリーベースの神通力を過信する人を増やしたように思えます。

Krugman: Baby Sitting the Economy

訳者付記: ……とクルーグマンが書いたのが 1998 年。その後、だんだんこの説のシンパは増えているし、それに株価も日銀が金融緩和を発表するたびにドカッと上がるから、これまでなにやら批判的なことを口走っていた連中まで、だんだん「日銀が金融緩和を! インフレを!」と騒ぐようになってきているのは、みっともないけれど、でもまあよい傾向かも。

中央銀行が短期金融市場に出回る「クーポン」の量を増やしたからといって、市中に出回るクーポンが増えたり予想インフレ率が高まるとは限らないことは、各国の量的緩和が実証しています。

意欲的な人々に誤解を植え付けた罪なエッセイでした。

ケインズに学んでいれば…ですが、後の祭りです。

デフレ不況をいかに克服するか ケインズ1930年代評論集 (文春学藝ライブラリー)

デフレ不況をいかに克服するか ケインズ1930年代評論集 (文春学藝ライブラリー)

物価上昇それ自体を目的とし、その救済的価値を過大に強調することは、「回復」の手段としての物価の役割について、重大な誤解につながりやすい。総購買力の増加によって生産を刺激することが、物価上昇の正しい方途であり、その逆ではない。*4

「回復」の初期段階における主要な原動力として…公債によって資金調達された政府支出の購買力の圧倒的な力を、私は強調したい。

*1:アメリカの2016年3月の数値は30日までの平均。

*2:乖離した際には「投機」が原因とするのが通例です。

*3:目標インフレ率へのコミットメントが必要。

*4:ルーズベルト大統領への公開書簡」より