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[グラフ]大恐慌~第二次大戦のアメリカ経済

先月の国際金融経済分析会合で大規模な財政支出を提唱したクルーグマンは、財政政策の成功と失敗の例として大恐慌~第二次大戦のアメリカに言及していました。 

The important point about the war from the macroeconomic point of view is that it was a very large fiscal stimulus. That fact that it was a war is very unfortunate. It was simply something that led to a fiscal stimulus that would not otherwise have happened. In fact, the story in the 1930’s was that the New Deal, Roosevelt backed off the fiscal stimulus in 1937, because then, as now, there were many calls for balancing the budget. That was a terrible mistake. It caused the major second recession.

成功が戦時支出、失敗が1937年の早まった引き締めです。

この時期のアメリカ経済の主な指標をグラフ化してみます。

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GDPの価格指数は1929-33年が平均で年率-7.0%、33-40年が同+1.3%、40-45年が同+4.9%でした。1933年の金本位制停止=金融政策のレジーム転換は、物価と景気を底打ちさせることには成功したものの、景気回復の牽引役としては力不足だったと言えそうです。鉱工業生産指数が長期トレンド線を上回るのは正式に参戦してからです。

Mobilization(1940年~)による生産活動の活発化と政府支出の激増が、市中の金回りを著しく改善してアメリカ経済を大恐慌から完全に脱却させたことは明らかと言えるでしょう。

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Fedは主役ではなく、巨額の国債発行のサポート役を務めました。Fedのバランスシート拡大の中心は、1933-40年の「資産は金証券・負債は準備預金」から41年以降は「資産は国債・負債は銀行券」にシフトしています。 

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リフレ政策(高目のインフレ目標+マネタリーベース大量供給)を提唱した1998年の"It's Baaack"と比較すると、クルーグマンが完全に転向したことがはっきりします。

http://cruel.org/krugman/krugback.pdf

ここでの要点は、大恐慌の終結――これは一時的財政刺激が継続する回復を生み出せるという見方を支持するときによく挙げられる、というより唯一の、事例だ――は、実はあまりうまくその話にはまっていない、ということだ。経済回復のすべてとは言わないまでもかなりの部分が、インフレ期待によって実質金利がかなりマイナスになったことに依存しているようだ。

スティグリッツも金融政策より財政政策の有効性を主張しています。

世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠

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アメリカが大恐慌から抜け出しはじめたのは、世界戦争にそなえるべく、政府の支出がうなぎ上りになってからだった。わたしたちは単純明快な真実を把握する必要がある。回復をもたらしたのは政府の財政出動だ。金融政策の修正でもなく、銀行制度の復活でもなく、ケインズ主義的な景気刺激策なのだ。

ケインズ主義的な景気刺激策」は、ケインズの「ルーズベルト大統領への公開書簡」に示されています(いわゆるリフレ政策には否定的)。

デフレ不況をいかに克服するか ケインズ1930年代評論集 (文春学藝ライブラリー)

デフレ不況をいかに克服するか ケインズ1930年代評論集 (文春学藝ライブラリー)

物価上昇それ自体を目的とし、その救済的価値を過大に強調することは、「回復」の手段としての物価の役割について、重大な誤解につながりやすい。総購買力の増加によって生産を刺激することが、物価上昇の正しい方途であり、その逆ではない。

「回復」の初期段階における主要な原動力として…公債によって資金調達された政府支出の購買力の圧倒的な力を、私は強調したい。*1

結果的にはケインズの提言が実践され、その有効性が実証されたことになります。 

なお、こちら(↓)は日本のリフレ派の定説です。

経済学者たちの闘い―脱デフレをめぐる論争の歴史

経済学者たちの闘い―脱デフレをめぐる論争の歴史

恐慌脱出に本質的に寄与したのは金融政策のレジーム転換であったことは最近では定説になっている。…大恐慌を克服したのはこの基本的なフレームワークの変更だった。

リフレ派の教祖・クルーグマンは、この定説を棄ててリフレ派を事実上脱会したようですが。

参考

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(政府最終消費支出は医療保険介護保険等の現物給付を含む。)

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おまけ

普通の人がグラフを眺めれば、アメリカ経済を大恐慌前を大きく上回る水準まで拡大させた(大恐慌から完全脱却させた)原動力は「極めて大規模な戦時政府支出」以外には見当たらないでしょう。それが、“頭のいい”経済学者やリフレ派には「インフレ期待によって実質金利がかなりマイナスになったこと」に見えるわけです。頭のいい人は凡人とは思考回路が異なるようです。

*1:強調は引用者。