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日本の政府支出は「反社会的行為」

一つ前の記事(↓)では、第二次世界大戦時の巨額の政府支出が、アメリカ経済を大恐慌から完全に回復させたことを見ました。

totb.hatenablog.com

大恐慌期のアメリカの名目GDPは4年でほぼ半減したものの、1941-45年の急拡大によって、戦争終結時には1929年の2.2倍になっていました。

一方、日本の名目GDPは、1990年の株価暴落後も緩やかに増加を続けましたが、金融危機が始まった1997年を境に増加が止まり、未だに1997年を下回っています。

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この長期停滞から脱却する手段として、国際金融経済分析会合でスティグリッツクルーグマンは大規模な財政出動を提唱しています。この記事では、これまでの日本の政府支出についてグラフで確認します。*1

政府最終消費支出は増加を続けているものの、公的固定資本形成は 1990年代末からの10年間でほぼ半減しました。そのため、公的需要は1990年代半ばから120兆円前後で横ばいを続けています。

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政府最終消費支出を「保健・社会保護*2」とその他の「公共サービス*3」に分けると、保健・社会保護は高齢化を反映して増加を続けているものの、公共サービス等は1990年代末から横ばい圏にあります。

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保健・社会保護を除いた政府支出「公共サービス等+公的固定資本形成」はこのような推移となっています。

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  • 1990年代 :急増~高水準を維持したことでGDP縮小を阻止
  • 2000年代~:減少~低水準を維持したことでGDP拡大を阻止

と言えそうです。仮に1990年代後半の水準を維持していれば、現在の日本経済は全く違う状態になっていたでしょう。*4

政府支出削減が支持された理由の一つは「GDPが増えない→政府支出は増やせない」という素朴な考えにあると思われますが、これが「政府支出を増やさない→GDPが増えない」結果を招いてしまったことになります。

また、政府支出に対する不信感が「改革派」に根強く、その「改革=政府支出削減」の論理が多くの国民に支持されたことも無視できません。

わが国は“官僚経済”の国だ。いや、社会主義経済の国といってもいい。金を上から下へと流しこみ、途中で政官権力が掬い上げる“流しそう麺”式の社会主義計画経済の性格がきわめて強いのである。

わが国の経済では、政府に関連したおカネにかかわる部分が異常に大きく、市場経済活動の成果は極めて小さい。*5

結局のところ、ケチケチ根性と誤った正義感が政府支出を削減させ、日本経済を長期停滞へ引き込んだということでしょう。

デフレ不況をいかに克服するか ケインズ1930年代評論集 (文春学藝ライブラリー)

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ここにわれわれは、全体の利益と個別の利益との不調和の例を見る。……今日、人気があり、支持されているすべての救済策は、この共倒れの特徴を有している。賃金切り下げ競争、……、通貨の切り下げ競争、競争的な節約キャンペーン、そして新しい資本開発の競争的な縮小――これらはすべて近隣窮乏化の方策である。*6

個人や諸機関、そして公共団体が自発的に、そして不必要に、有益であると認められた支出を削減したり、延期したりするのは、反社会的行為なのである。*7

政治家と国民の多数が支持する「反社会的行為」が続くほど、窮乏化によって「日本が自滅する日」が近づいてきます。「地獄への道は善意で舗装されている」という通りです。

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*1:出所は内閣府

*2:医療保険の現物給付など

*3:教育、経済業務、一般公共サービス、公共の秩序・安全、防衛、環境保護、住宅・地域アメニティ、娯楽・文化・宗教の8項目の合計

*4:2000-14年度に90兆円を維持するための追加必要額は累計180兆円。

*5:この論理はネオリベそのものです。それまでの「体制」がバブル崩壊後の経済運営に失敗したことが、ネオリベ陣営の「我々こそ正しい」というプロパガンダに説得力を持たせてしまいました。これが体制側にもあった「小さな政府」志向≒行政改革と方向が一致して、1990年代後半から2000年代前半にかけてのネオリベ革命を成功へと導きました。国民の多くが支持した革命の結果が、経済停滞と格差拡大です。ネオリベ改革派が『動物農場』における豚、国民がその他の動物になるでしょうか。

*6:強調は原文では傍点。

*7:1932年5月「 世界恐慌と脱却の方途」