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「メガバンクの日銀批判」への批判は筋違い

メガバンク日本銀行マイナス金利政策を批判しているとの記事(↓)に対して、 

gendai.ismedia.jp

リフレ派国会議員が「耳を疑う」「国民の苦しみを思うべきだ」とツィートしています。

超過準備への0.1%の付利を「濡れ手で粟の大儲け」と断じる残念な内容です。なぜ残念かと言えば、量的緩和とは銀行資産の国債を日銀当座預金と交換するものなので、利付国債のように日銀当座預金にも利息を付けることは何らおかしなことではないからです(詳しくは下の関連記事を参照)。保有する国債からの利息収入を「濡れ手で粟の大儲け」と批判することと本質的には同じであり、リフレ派の理解不足を示す「耳を疑う」ツィートです。

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「銀行は日銀当座預金からの利息に頼らず、本業の貸出を増やせ」との批判もあるようですが、これも現実を見ていません。

中堅企業・中小企業への貸出態度はバブル崩壊後で最も緩くなっています。

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それにもかかわらず、民間企業は資金余剰を続けており、借入に消極的な姿勢を崩していません。

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「銀行は貸出を増やせ」と言われても、資金需要が乏しければお手上げです。ダイエットの意思を固めた人々が相手では、美味な料理を安価で提供しても無意味であることと同じです。問題は「借り入れを増やして積極投資」よりも際限のない財務改善を優先する企業側にあるのに、銀行を非難することは筋違いです。

「銀行が無能だから潜在的な優良貸出先を見つけられない」という批判が的外れであることは、日本振興銀行新銀行東京の大失敗が示しています。銀行はNINJAローンのようなリスクを無視した無責任な貸出はできません(NINJA: No Income, No Job or Aseets)。

それにしても、「国民が苦しんでいるのだから銀行も苦しめ」というSchadenfreudeが、全体の利益を損なう共倒れを招いていることがどうして理解できないのか不思議です。*1*2

デフレ不況をいかに克服するか ケインズ1930年代評論集 (文春学藝ライブラリー)

デフレ不況をいかに克服するか ケインズ1930年代評論集 (文春学藝ライブラリー)

ここにわれわれは、全体の利益と個別の利益との不調和の例を見る。……今日、人気があり、支持されているすべての救済策は、この共倒れの特徴を有している。賃金切り下げ競争、……、通貨の切り下げ競争、競争的な節約キャンペーン、そして新しい資本開発の競争的な縮小――これらはすべて近隣窮乏化の方策である。*3 

www.bloomberg.co.jp

補足

史上最高益でも賃上げや設備投資は抑えて内部留保を増やし、経済の好循環を妨げる企業部門への批判が少ないどころか、むしろ支持する声もあるのもまた不思議です。

gendai.ismedia.jp

安倍晋三政権が民間企業の賃上げ交渉にまで口を出す「官製春闘」に対して、複数の主要大企業で不満が高まっている。そして「もはやこの政権は支持できない」といった声も出始めている。

ベースアップを実施することで、ただでさえ労務コストの高い日本国内の固定費が上昇し、それが業績を圧迫し始めているからだ。

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*1:日銀が超過準備に付ける利息を減らすことは、国債の利払いを減らすことと本質的に同じであり、民間への資金供給を減らす一種の緊縮策です。「銀口ざまあみろ」と喝采する人は、政府の緊縮政策を支持していることになるわけです。リフレ派に銀行叩きをする人が多いようですが、リフレ派が根本的に緊縮財政志向であることの表れなのでしょう。

*2:公共事業の甘い汁を吸っている」と建設業界を叩きまくった結果、就業者は1997年のピークから18年間で185万人減少(-27%)しましたが、日本経済はよくなったでしょうか。

*3:強調は原文では傍点。