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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「マツコ案」試算の非現実性

人口・少子化

こんな記事があったので、問題点を指摘しておきます。

dot.asahi.com 

とくに参考になるのはフランスだ。柴田氏によると、出生率に異変が起きたのはフランス革命(1789年)以降、避妊や出産制限の動きもあり、出生率が低下し始めたという。

「児童手当と税制優遇から始まり、少子化対策には100年以上取り組んでいます。その効果が顕著に出たのは1990年代。保育サービスを充実させた直後に出生率が回復しました」(柴田氏)

少子化対策を100年以上取り組んで、効果が出たのは1990年代」というところに怪しさが漂っています。実際、フランスの合計出生率の1970年代以降の低下と90年代の反転上昇は、主に出産のタイミングの変化によるもので(テンポ効果*1)、コーホート出生率はむしろやや低下していることは下の記事で説明済みです。

totb.hatenablog.com

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フランスが比較的高い出生率を維持していることは事実ですが、今後もその水準を維持できるかは定かではありません。

wotopi.jp

大学無償化も副作用を考慮していません。 

大学卒業までのすべての教育費(公立相当分)を無償化した場合はどうか。あくまで進学率は現状のままを前提にするが、財政負担額はそれぞれ小学校が約0.7兆円、中学校約0.6兆円、高校約0.9兆円、大学約1.6兆円。 

「あくまで進学率は現状のままを前提」とありますが、無償化されれば進学率が上昇する可能性は極めて高いと考えられます。そうなると、既に供給過剰の大学卒業生がさらに増えるため、無償化前は比較的容易に就職先を見つけられた大学生も、不毛な就職競争に巻き込まれてしまいます。

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最近では歯科医師や弁護士などの資格職でも供給過剰のために高所得が保証されなくなっていますが、大学の無償化も大学卒業の価値を低下させてしまいます。そうなると、より高い価値(競争優位)を求めて学士より修士修士より博士の「軍拡競争」(学歴インフレ)が発生するため、教育費は減らず、就職年齢(と結婚・出産年齢)は高くなる、誰も得しない結果が生じます。

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totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

中国の大躍進政策で「害鳥」の雀を退治したら害虫が大発生してしまったように、個々人ベースでの「よいこと」が社会全体では逆効果になることは珍しくありません。個々人にとっての「よいこと」を追究する限り、日本が復活する可能性はほとんどなく、没落は不可避でしょう。

ご参考までに、トッドの指摘です。

シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 (文春新書)

シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 (文春新書)

中等・高等教育のコストの大部分を国家が負担してくれるから、「管理職および知的上級職」が将来における自分たちの社会的自殺を覚悟することなしに子作りができるわけで、その階層の人口学的な堅調さはそのように説明できる。そうとも、フランスでは福祉国家が今日も生き延びている。しかし、それはまず、中産階級福祉国家になったからなのである。

失業率10%の脅威の下で生きる庶民層に、管理職層の子女の教育費を負担させるようなやり方には臆面のない反社会性が指摘されてしかるべきだ。

totb.hatenablog.com

*1:コーホート出生率が一定でも、出産のタイミングが高年齢化していく過程では合計出生率が低下し、高年齢化が止まると合計出生率が元の水準に戻る。