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2015年度の資金循環:企業部門の資金余剰が再拡大

17日に日本銀行から2015年度の資金循環統計が公表されました。

日本経済の停滞の根源にある企業部門の資金余剰は前年度比+21兆円と再拡大しました。一般政府も前年度比+7兆円なので、“ダブル緊縮”の年度だったと言えます。

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企業部門の資金余剰は、純資産の増加につながっています。

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資産の内訳を見ると、現預金と対外投資の増加が目立ちます。 

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財務省の「法人企業統計」と併せると、企業の「人件費を抑制して現預金と対外投資を積み上げる」行動が続いていると判断できます。*1

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一方で、国債残高は増加を続けています。

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3年以上が経過したアベノミクスですが、

  • 企業の資金余剰
  • 国債残高累増
  • 家計所得と消費の低迷

の解決には程遠いと言わざるを得ません。これらの根源にあるのは、いわゆる「リフレ派」が唱えていたような日本銀行の金融緩和不足ではなく、企業が株主重視経営に行動原理を大転換させたためと考えられるからです。*2

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失われた〈20年〉

失われた〈20年〉

「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」

「これまで企業が社会に責任を負いすぎた。我々は効率よく富をつくることに徹すればいい」という宮内のドライな発言に今井が鼻白む場面もあった。

www.sankei.com

株主重視経営が人件費抑制の強力なインセンティブとして働いているわけですが、アベノミクスでは日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」にすることが目指され、アメリカ流のコーポレート・ガバナンスが一段と強化される方向にあります。日本が薬と思って飲んでしまった毒を、増量して飲み続けようというのだから、日本経済の先行きを楽観視することは極めて困難です。マクロ政策ではエンジンをふかしているように見えるものの、ミクロ政策ではフルパワーで逆噴射をしているのがアベノミクスの実態です。*3

最近では、リフレ派が鳴りを潜めた代わりに、大規模な財政出動を待望する声が大きくなってきたようですが、企業の行動原理を再転換させない限り、効果は一時的・限定的とならざるを得ないでしょう。*4

business.nikkeibp.co.jp 

ある時期から日本人自身がやみくもに舶来の経営手法を信奉して、「日本のやり方は時代遅れで最先端の米国型経営に移行するべきだ」ってなっちゃった。ご存じのようにその後、ソニー富士通も経営がおかしくなった。

もうね、「こんちくしょう」と叫びたくなったよ。1990年代後半以降、ソニーは何をやっていたんだろうと悔しくてね。

日本も何をやっていたのでしょうか。*5

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*1:家計の資金余剰の対GDP比は1980~97年度平均が9%、1998~2015年度平均が3%

*2:因果関係は「デフレ→企業が資金余剰」ではなく「企業が資金余剰→デフレ」です。

*3:株主重視経営は、消費性向が高い層(労働者)から低い層(資本家・投資家)への所得移転になるため、構造的なデフレ圧力として作用します。これに中央銀行が金融緩和で応じたことが、株主重視経営が広がった1980年代以降、世界各国で資産バブルが多発している一因です。

*4:リフレ派や反緊縮派などによる日銀叩き、財務省叩き、銀行叩きはありますが、大企業叩きは全く見られないのはなぜでしょうか。(大企業を叩くべき、ということではないので念の為)

*5:日本人が拒食症の経済版のような心理状態になってしまったように思えます。