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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

Brexit~「極右」vsネオリベ&リベラル連合

政治・歴史・社会

トピック「イギリス」について

イギリスの国民投票の結果に対して、イギリス以外の国々でもエリートが大騒ぎしているようです。

business.nikkeibp.co.jp

この決定はまず、6月24日のポンド暴落が象徴するように、英国経済にとって激震となる。‥‥同国はスイスやノルウェーのようにEUと交渉して、少なくとも関税廃止などの利点を維持しようとするだろう。

しかし、イギリスはユーロは導入していない上、シェンゲン協定にも参加していません。スイスやノルウェーと同じ立場になるだけで、経済が大混乱を来すでしょうか(両国に比べて所得水準が低いのは弱みですが)。スウェーデンフィンランド、オーストリアもEU加盟は1995年と比較的最近ですが、加盟によって飛躍的に経済力が高まったようには見えません。*1

イギリスの財務省は、EU離脱によって大きな経済損失が発生するとの試算を発表していますが、日本の財務省が財政危機を煽っているのと似た魂胆があるのではないかと疑ってしまいます。

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イギリス経済を支えるシティの金融セクターに打撃との見方もありますが、장하준は強すぎる金融サービス業が、経済全体のバランスを損なってきたと指摘しています。ポンド安を利用して製造業を再建する方が、長期的な成長にはプラスになるということです。

www.theguardian.com

At the root of this inability to stage a real recovery is the serious imbalance that has developed in the past few decades – namely, the over-development of the UK financial sector and the atrophy of manufacturing. 

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エリートはリベラリズムグローバリズムに反対する人々を「ポピュリスト」「極右」とネガティブなレッテルを貼って批判します。*2

欧州の右派ポピュリスト政党には、共通点がある。彼らはイスラム教徒の移民に批判的であり、多文化主義や複数主義に反対する。彼らは自国民の利益を優先し、リベラリズムに批判的だ。さらに、これらの政党は反グローバリズム、反ユーロ、反EUという点でも一致している。ポピュリストにとって、EUによる政治統合や経済統合は、自国の利益をないがしろにする、グローバリズムの象徴なのだ。*3

「自国民の利益を優先しない」ことを批判しているわけですが、このロジックにエリートが正気を失っていることが示されています。自国民の利益を追求しない政治を、イデオロギーに洗脳されていない一般大衆が支持するはずがありません。

ヨーロッパのエリートからも同じような懸念が出されていますが、

www.thelocal.no

“This should be a warning for the leaders of the EU and national leaders of the European countries, that giving young people hope for the future by ensuring job creation is among the most important things we do,” Solberg said.

低賃金の移民が職を奪うことが、若者の希望も奪っていることを無視した発言です。

フランスの国民戦線(FN)のルペン党首は、エリートが移民を歓迎する真意は賃金抑制にあると批判していました。エリートが国民全体の厚生よりも金儲けを重視するネオリベ化したことが背景にあります。

www.asahi.com

「そのあげく先進国で支配的になったのは経済的合理性。利益率でものを考えるような世界です」

ネオリベが金儲けのために移民を推進し、それに一般大衆が反発すると、ネオリベに代わってリベラルがポリコレを振りかざして「レイシスト」と攻撃するという、ネオリベとリベラルの二人三脚が続いていたわけです*4。2014年にはイギリスの人口に占める外国出身者の割合は13%、ロンドンに限ると37%に達しています。*5

The Silencing: How The Left is Killing Free Speech

The Silencing: How The Left is Killing Free Speech

totb.hatenablog.com

ネオリベとリベラル連合による「自国民の利益を優先しない政治」に、イギリスの投票者の過半数がノーを突き付けたわけですが、早速他の国でも「極右」が活発化しています。

www.thelocal.fr

www.thelocal.de

過去記事から再掲します。

エリートはトランプやルペン支持者を「頭が悪い」「差別主義者」と批判しますが、トランプやルペン人気の本質は庶民のエリートへのプロテストと見るべきでしょう。ネオリベラリズムに染まったエリート=腐敗したカトリック教会、ポリティカル・コレクトネスに異議を唱えるトランプ/ルペン=ルター/カルヴァンといったところでしょうか。

"Professional class"を養成する米欧のエリート大学は、各国のエリートに自国の庶民よりも他国のエリートを同胞と見做す選民意識を植え付ける機関となっているようにも見えます。米欧のエリートがヨーロッパ統合、NAFTA、TTIP、TPPなど、自国の庶民よりも他国のエリートのための経済政策を推進する根底には、カネだけではなく思想的なものもあるのでしょう。 

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政治の対立軸が従来の「右―左」や「保守―革新」から、「PCを信奉するリベラル/ネオリベラル連合―反PC」に転換したと言えそうです。

Listen, Liberal: Or, What Ever Happened to the Party of the People?

Listen, Liberal: Or, What Ever Happened to the Party of the People?

Professionals are a high-status group, but what gives them their lofty position is learning, not income. They rule because they are talented, because they are smart.*6

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

二〇世紀に入り、人間は完全であるという夢は、スターリンソ連文化大革命下の中国、ポル・ポト政権下のカンボジアで大変な悪夢と化した。そしてこの悪夢から目覚めた左派は大混乱に陥ったのである。

ネオリベ&リベラル連合と「極右」の対決からは目が離せません。*7

(続く ↓) 

totb.hatenablog.com

gendai.ismedia.jp

過去記事も参考にどうぞ。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

おまけ

フェミニズムネオリベラリズムの手先になったことを嘆くアメリカのフェミニズム学者(女)ナンシー・フレイザーの論考です。

www.theguardian.com

フェミニストの主張は、上野千鶴子と同じものでした。

president.jp

世帯を養える賃金を男1人に払う家族給に支えられた 「男性稼ぎ主モデル」こそ、女性差別の根源なのですよ。

正規雇用者の給料を下げて、夫に600万円払っているのなら、夫に300万円、妻に300万円払うようにすれば、納税者も増えます。 

その結果、低賃金で苦しい生活を余儀なくされるワーキングプア女が増加したことを嘆いているわけですが、学者とは思えない思考力の低さです*8。単純な正義感に燃えたリベラルの連中が、強欲なネオリベの手先となって一般大衆の生活を破壊してきたのがこの20~30年だったのでしょう。

*1:イギリスの加盟は1973年。

*2:極右こそ中道で、エリートが「極左」なのではないでしょうか。

*3:強調は引用者、以下同。

*4:リベラル過激派(SJW)は文化大革命における紅衛兵に相当。

*5:ロンドン、パリ、ジュネーブなど、ヨーロッパの主要都市の雰囲気が激変したことを実感します。

*6:[引用者注]グローバリズムリベラリズムを信奉する"professionals"は、反対する一般大衆を見下す傾向にありますが、その根底には「自分は賢い(⇔大衆はバカ)」との信念があるとの指摘です。

*7:リベラリズムの武器がpolitical correctnessだとすれば、グローバリズムの武器は主流派経済学でしょう。クルーグマンが「自由貿易のメリットを理解できない素人たち」を嘲ってきたことがその例証です。クルーグマンは投票直前にも「Brextixでイギリスは貧しくなる」と離脱派を脅していました。

*8:社会学者は「学者」ではなくイデオローグに分類されるべきでしょう。