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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

Brexitと先進国の南アフリカ化

トピック「イギリス」について

イギリスを二分したEU離脱Brexit)を問う国民投票は、エリート/エスタブリッシュメントと中下層の対立を鮮明にしました。*1

www.thelocal.de

It was Britain’s poorer and less-educated citizens — angry at not having shared in the economic benefits of a new world order — who pushed it out of the European Union, in a vote that threatens elites, analysts say.

At the root of this surge in anti-establishment sentiment is a feeling of fear, loss of control, and traditions and identity lost among those who are struggling economically, analysts say.*2

gendai.ismedia.jp

EU離脱をめぐる国民投票は様々な二項対立で説明されたが、その一つが「残留支持のエリート層と離脱支持の庶民層」という構図だった。

“完全な統合を急ぐという観念に取り憑かれ、我々は庶民、EU市民が我々と(統合への)情熱を共有していないということに気付かなかった”

欧米に広がる反エリート意識を理解する参考になるのが南アフリカ事情です。

下の記事は多民族共生を肯定する「南アフリカ在住のアーチスト」が曽野綾子を批判したものです。*3

blogos.com

私はヨハネスブルグ市内の小さな一軒家に住んでいる。我が家の隣はインド系。敬虔なイスラム教徒の一家だ。斜め向かいはユダヤ系。その向こうには黒人、マレー系、英系白人・・・。人種も文化も育った環境も異なる、様々な人々が同じ通りに居住している。共通するのは、現在の経済状況が中の中程度というくらいか。

しかし、私と隣人たちは、近所の公園が草ぼうぼうで荒れていることに心を痛めている。皆で少しずつお金を出し合い、コミュニティーで警備会社と契約して、少しでも犯罪を減らそうと努力している。計画停電には皆で愚痴をこぼす。肌の色が違う子どもたちが、通りで一緒にスケートボードを楽しんでいる。 

ロンドンの残留派に通じるコスモポリタン的思考ですが、このアーチストが綺麗事を言っていられるのは、南アの人口の大部分を占める貧しい黒人を排除した、警備会社に守られたコミュニティに暮らしているからでしょう。南アフリカで生じているのは人種ではなく経済力に基づく「新たなアパルトヘイト」です。

america.aljazeera.com

“Many of the people who live in these gated communities want to feel they are part of the new South Africa while also feeling protected from it,” … “For these people, the [gated] estate is a way of exiting the city in order to re-enter the country.”

1994年にアパルトヘイトが撤廃されてから20年以上が経ちましたが、南アのジニ係数は0.6を超える世界最高水準です(世界銀行によると1993年0.59→2011年0.63)。

gakumado.mynavi.jp

www.huffingtonpost.jp

ちょっと前のことになりますが、ケープタウンの高級住宅地キャンプス・ベイでこんな広告が地元のフリーペーパーに掲載されて多くの人の怒りを買いました。

急募通いの家政婦(子どもの世話を含む)、週5日勤務一日7時間労働、月給1万5千円(交通費込み)、南ア人か正規の移民のみ対象。 

このような労働条件で人を雇おうとしている南アに住む富裕層は、彼らの人権とか生活に無頓着だからです。

問題は、こんな待遇で働く人などいないだろう、と思いきや、仕事がない人たちはこんな待遇でも仕事にありつければ、という思いで仕事を受けてしまうのです。

昨年には南アフリカで黒人が黒人を襲撃する反移民暴動が起こりましたが、その背景には、周辺国から流入する移民のために生活が圧迫されているという地元民の怒りがありました。

www.theguardian.com

移民反対派を批判する人々は「移民が雇用環境を悪化させることはない」と力説しますが、現実に低賃金労働に従事する移民が大勢いる以上、全く説得力がありません。これはイギリスでも同じです。

toyokeizai.net

雇用者が最低賃金を合法的に支払っていても、「エージェント(代理人)などによる中間搾取が激しく、移民労働者は約3分の1しか実質受けとっていない」という。それでも喜んで働くのだと。

「そうした低賃金で働くことが不可能な英国の労働者を、結果的に追い出すことになる」とさらに続いた。 

さらに、「よく分からないよそ者が大挙して押し寄せて住み着く」ことに対する抵抗感は、人間の自然な感情です。*4  *5

www.asahi.com 

「英国民は自分たちの国の支配権や国境を取り戻したかった。人々は身元不明な人間が自国に流入するのを望んでいるわけではない」と語った。

同じことは米国でも起きている」とも強調した。

www.sankei.com

英メディアは、「地元当局が人種問題を避け、長年にわたり対応を怠ってきたことが問題を深刻化させた」と指摘する。

過去記事にも書きましたが、欧米で進行した「リベラリズムネオリベラリズムグローバリズム」は、白人が世界を支配していた時代への回帰と捉えることが可能です。

白人は植民地の少数派(民族)や他地域から連れて来た他民族を利用する分割統治で現地人を支配しましたが、現代では「グローバルエリートが移民を利用してネイティブの一般大衆の不満を抑え込む」構図です。植民地時代の有色人種のような立場に追いやられつつある一般大衆の不満が高まるのは必然です。*6

アパルトヘイト南アフリカには、自由主義的・民主主義的ルールにしたがって申し分なく機能する平等な市民の集合体があったのだけれども、その自由や民主主義は被支配者たちが存在するという条件でのみ成立していた。

人種差別時代のアメリカと同じだ。アメリカでは、白人グループ内の平等が、アメリカ原住民および黒人に対する支配によって保障されていた。 

白人の有色人種支配は、大日本帝国が大暴れしたことによって崩壊に向かいましたが、その日本が現在では欧米型の多民族・格差社会を目指していることは興味深いところです。*7

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

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*1:「エリート」は、Thomas Frankが言うところの"professional class", "creative class"に相当。人口の約1-2割を占める。

*2:強調は引用者、以下同。

*3:アーチスト⇒creative class⇒エリート

*4:日本でも、K県N村に教団施設を建設して大人数の信者を移住させようとした新興宗教Aと村とが激しく対立した事件がありました。村民を差別主義者と責められるでしょうか。

*5:この「人間の自然」を否定するpolitical correctnessが、リベラルによる大衆抑圧の武器となっています。「人間の自然」を否定した共産主義は自壊しましたが、ポリコレもその後を追うのでしょうか。

*6:上:現地の成功者+グローバルエリート、中:現地の一般大衆、下:貧しい国からの移民、の三層構造。国家間の緊張が薄れると、各国のエリートが意気投合して排他的クラブ化し、「劣った一般大衆」を搾取の対象と見なすようになるのでしょう。国際平和と経済的平等はトレードオフだったことになります。

*7:成功してgated communityに住む南アの黒人は、貧民地区の同国人よりも、同じコミュニティのグローバルエリートにシンパシーを感じるようになるでしょう。日本のエリートが移民受け入れに積極的な反面、格差解消に消極的なのは、これと同じ思考に染まっているからでしょう。