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賃上げ・内部留保・コーポレートガバナンス改革

「進まぬ賃上げ/激増する内部留保」について財務省「法人企業統計調査」で検証します。*1*2

business.nikkeibp.co.jp 

1990年代半ばから人件費の増加が止まっていますが、利益剰余金(内部留保)と投資その他の資産は金融危機後から急増に転じています。

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約20年間売上高と人件費の増加が止まっていますが、利益はいわゆる「三つの過剰」解消後の景気拡大期から急激に増加しています。

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その結果、売上高利益率は第一次石油危機後の最高水準に達しています。

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記事には

そのうえで、「賃金の上昇を実現するためには、継続的な生産性の向上が不可欠」だとした。

ここで、賃上げが先か、生産性の向上が先かという議論が生じる。

とありますが、「生産性が継続的に向上しないから賃金を上げられない」わけではありません。1998年を境にして、生産性と賃金の連動が切れています。

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国際比較すると、生産性向上が賃金上昇に反映されない日本の異常さが際立ちます。下の三つのグラフは1998年→2014年の年平均変化率です。*3

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アベノミクスの政策の中で最も海外投資家の評価が高いのは「コーポレートガバナンス改革」だ。機関投資家のあるべき姿を示す「スチュワードシップ・コード」や、企業経営のあるべき姿を示した「コーポ―レートガバナンス・コード」の導入によって、日本企業の経営のあり方は大きく変化した。

端的に表れたのが、株主への配当である。

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これらのデータが示唆しているのは、株主様への上納金を増加させる圧力の増大が人件費抑制を招いていること、つまり、海外投資家の評価が高いコーポレートガバナンス改革」と賃上げがトレードオフの関係にあることです(上納金を増やす→利益率を高める→人件費抑制*4)。安倍政権は賃上げに消極的な企業に苛立っていますが、賃上げを妨げているのはアベノミクスの目玉のコーポレートガバナンス改革です。*5

麻生副総理がこう発言したのだ。

法人税率を下げろと言うから、下げて何をするのかと、私はいつも企業の人に申し上げている。労働分配率が3年前には70%を超えていたものが、今は67%ほどにまで下がっている。こういった状況が問題なのである」

法人税率引き下げによる税引き後利益の増分は、配当金と海外直接投資の原資になるとともに、コーポレートガバナンス改革で求められている高ROEに寄与しています。これらに高いプライオリティがある以上、賃上げに向かわないのは必然です。

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日本企業の経営のあり方を大きく変化させたコーポレートガバナンス改革とは、外人株主の儲けを増やすために日本人労働者を薄給で酷使すること、つまりは日本の植民地化であったようです。自分の手を汚さずに日本人から搾取できるから「アベノミクスの政策の中で最も海外投資家の評価が高い」のです。*6

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世界経済を破綻させる23の嘘

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富める国の賃金は、何よりもまず、移民政策によって決まる。[…]移民数はおもに政治によって決められる。だから、政府の自由市場への大規模な干渉について、なおも疑いをもつ人は、しばし熟考してほしい。わたしたちの賃金はすべて、大もとでは政治的に決められているのだということを。*7

日本売ります (ハルキ文庫)

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あの日本のように、そこに住んでる奴の誰もが気がつかないうちに、それこそ国ぐるみ、住んでる奴や建物ごっそり居抜きで、うすっ気味悪い奴に売りとばされているかも知れません。*8

ゼイリブ 通常版 [Blu-ray]

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参考:日本銀行「資金循環」

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totb.hatenablog.com

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*1:金融業、保険業を除く全産業、全規模について。

*2:この話題になると必ず「内部留保は現預金のことではない」と反駁する人が出てくるのが面白いところです。

*3:生産性向上が賃金上昇に反映されないことによる「失われた所得」と消費税率引き上げによる増収分を比べれば、日本経済の問題の原因がどちらにあるかは自明です。消費税と財務省にこだわっていては、問題の本質は見えてきません。

*4:さらに詳しくは後日の記事で。

*5:「海外投資家を助け、日本の労働者を挫く」がアベノミクス第三の矢です。

*6:1990年代後半からのアメリカ流「改革」は、苦境につけ込んで救済策と称する「教義」を植え付け(洗脳)、支配下に置くカルトの手口と同じです。日本は株主様至上主義カルトと老人性緊縮病に毒されていることになります。

*7:強調は引用者。

*8:[引用者注]民営化は売り飛ばすための第一歩です。