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日銀の「転進」を擁護してみる

2013年4月の量的・質的金融緩和(QQE)開始時はリフレ派から絶賛された日本銀行の黒田・岩田体制ですが、2%インフレの達成時期が当初の2年からどんどんずれ込み、ついには2018年度まで先送りされたことで、批判が強まっています。

www.asahi.com

www.zakzak.co.jp

そこで、黒田・岩田体制をあえて擁護してみます。

2%インフレが達成できていないことは事実ですが、リフレの理論で重要なのは現実のインフレ率ではなく、人々の予想に働きかけることで実体経済を好転させることです。つまり、インフレ目標を実現できなくても、実体経済を好転させられれば十分に及第点をつけられるのです。

実際、労働市場(≒雇用)は絶好調です。

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就業者増加の約2/3は医療・福祉で生じています。

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その波及経路は不明瞭ではあるものの、QQEは医療・福祉で特に女の就業者を増やすことに成功したと評価できるでしょう。

日本銀行は9月21日に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しましたが、これは従来の「量」から「金利」にターゲットを変更したことを意味します。

jp.reuters.com

これを「量的緩和が失敗した」と批判する人がいますが、医療・福祉での就業者大幅増という「目的を達成」したのだから、「他に転進」することは何ら問題ではありません。むしろ大成功と評価するべきでしょう。

ガダルカナル島の戦い - Wikipedia

このとき撤退は「転進」という名で報道され、撤退した将兵も多くはそのまま南方地域の激戦地にとどめ置かれた。2月9日の大本営発表では「ソロモン群島のガダルカナル島に作戦中の部隊は昨年8月以降引続き上陸せる優勢なる敵軍を同島の一角に圧迫し、激戦敢闘克く敵戦力を撃摧しつつありしが、その目的を達成せるにより、2月上旬同島を撤し、他に転進せしめられたり」と報じられている。

補足 

QQEでは前代未聞の大量の資金が供給されました。これだけ見れば「インフレにならないのが不思議」と思う人もいるでしょう。

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しかしこれは、銀行等の資産構成を変化させたに過ぎません。ほぼ同等のリスクフリー資産である日銀預金と国債の合計の増加ペースに変わりはありません。

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銀行等のリスクフリー資産シフトは継続中です。

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ほぼ同等のリスクフリー資産である国債と日銀預金を交換しても経済活動には影響しない、という当たり前のことが確認されただけでした。アベノミクス第一の矢のQQEは「大山鳴動して鼠一匹」で転進を余儀なくされたと言えます。

労働需給は改善しているものの、働き盛りの年代の男の就業率の上昇は小幅にとどまり、金融危機以前の水準には程遠い状況が続いています。「量は改善しているが質の改善は遅れている」と言えるでしょう。

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金利低下が企業の積極姿勢を引き出さない理由については以下の記事で考察しています。日本経済停滞の直接の原因は、企業が内部留保蓄積を優先して賃上げと設備投資に消極的なことですが、それは日銀の金融政策の失敗ではなく、株主重視経営の帰結であるということです。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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