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トランプ勝利はポリコレへのバックラッシュ

“専門家”の予測に反してドナルド・トランプアメリカ大統領選挙に勝利しました。

あなたに金持ちになってほしい

あなたに金持ちになってほしい

FiveThirtyEightのアナリストは、今回の選挙では出口調査の信頼性が低いことを警告していましたが、その通りになった形です。メディアとリベラルが作り出す「空気」によってトランプ支持を表明できなかった人々が、投票で本音を示したということでしょう。*1

The Silencing: How The Left is Killing Free Speech

The Silencing: How The Left is Killing Free Speech

「リベラルの良心」を自称するクルーグマンは、

とツイートしていますが、地方の白人は「トランプがこれからもたらすかもしれない災厄」よりも、「リベラルがこれまでにもたらした災厄・今後も確実な災厄」を脅威に感じていることを未だに理解できてないようです(だからリベラルが負けたわけですが)。*2

jbpress.ismedia.jp

どちらの党にも無視され、グローバル化の悪影響でも割を食ったブルーカラーの白人たちは意気消沈した。米国では史上初めて、白人の平均寿命が短くなっている。

傷口に塩を塗るかのごとく、白人の貧困層だけはいまだに物笑いの対象になっている。ポリティカル・コレクトネス(政治的な公正さ)のルールからも外されている。 *3

トランプは昨年8月の討論会では

I think the big problem this country has ― is being politically correct. I've been challenged by so many people, and I don't frankly have time for total political correctness.

今年7月の共和党の指名受諾演説でも

We cannot afford to be so politically correct anymore.

と言っています。また演説で「99%の味方」のサンダースに二か所で言及したことも、トランプがリベラル&ネオリベラルに追いつめられる庶民、特に白人貧困層の心を理解していたことを示しています。

www.huffingtonpost.jp

内心ではみんなポリティカルコレクトネスに媚びるのはうんざりしているんだ。俺たちは今、お世辞だらけの時代に生きている。俺たちは本当に、軟弱な時代にいるんだ。誰もが細心の注意を払っている。みんな、レイシストだとか何だとか責めているのを目にする

こちらが原文です。

But he's onto something, because secretly everybody's getting tired of political correctness, kissing up. That's the kiss-ass generation we're in right now. We're really in a pussy generation. Everybody's walking on eggshells. We see people accusing people of being racist and all kinds of stuff.

イギリスのBrexitでは

www.newsweekjapan.jp

まだ正気の人々と怒り狂った人々、エリートと大衆の分断だ。極右やトランプが無知な大衆をだますなら、目を覚まさせるのがエリートの役目だ

business.nikkeibp.co.jp

欧州の右派ポピュリスト政党には、共通点がある。彼らはイスラム教徒の移民に批判的であり、多文化主義や複数主義に反対する。彼らは自国民の利益を優先し、リベラリズムに批判的だ。さらに、これらの政党は反グローバリズム、反ユーロ、反EUという点でも一致している。ポピュリストにとって、EUによる政治統合や経済統合は、自国の利益をないがしろにするグローバリズムの象徴なのだ。

と、「自国の利益を優先するポピュリスト」に批判的な論評が溢れましたが、自国民の生活を第一に考えない政治こそ正しい政治と考えるリベラルエリートの異常性がよく分かります。狂人が自分たちを「正気の人々」と認識しているわけです。

今回のトランプ勝利も、ポリコレ教を掲げるリベラルに対する土着民のバックラッシュと言えるでしょう。ポリコレ教が中世ヨーロッパのカトリックとすれば、トランプやヨーロッパの「極右」はプロテスタントに相当するようにも見えます。*4*5

ヨーロッパ的普遍主義

ヨーロッパ的普遍主義

人権や民主主義、市場の優越性や競争の自明性、科学的実証性など、現代社会において自明と思われている概念は、不平等の構造を拡大・深化させるレトリック、「普遍主義」という暴力に支えられているのではないか。

Listen, Liberal: Or, What Ever Happened to the Party of the People?

Listen, Liberal: Or, What Ever Happened to the Party of the People?

Professionals are a high-status group, but what gives them their lofty position is learning, not income. They rule because they are talented, because they are smart.

mainichi.jp

彼らは自分たちが社会的に高い立場にいると思い、大衆を軽蔑的に見ています。そして「上から目線」でポピュリズムを語っている。私は高学歴の大集団が、ある種の愚かさを生んでいると思うのです。

本当のエリートとは、社会の多くの人々に対して責任を負っているのだと自覚している人たちのことなのです。

これは日本のフェミニスト上野千鶴子の発言ですが、

バックラッシュ!  なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?

バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?

新自由主義的なサクセスに対して、負け組の依拠する文化的なシンボルは、ズバリ家族共同体です。バックラッシュ派…の根っこにあるのは家族と共同体の価値、それがキーワードだと思います。伝統的に見ると、家族と共同体というのは、最後のセキュリティ・グッズでした。このセキュリティ・グッズが崩壊していくことに対する、断末魔の悲鳴がバックラッシュの正体なのではないでしょうか。

この「断末魔の悲鳴」に応えたのがトランプだったと言えるでしょう。

欧米のリベラルは、移民やマイノリティを助け土着民を挫くことに熱心ですが、これは白人に多い狂信的反捕鯨主義者と共通する心理構造を持つように思われます。*6

捕鯨(イルカ)主義者は「鯨はヒトと変わらない動物→捕鯨は殺人に等しい→捕鯨する日本人は犯罪者・食人族→日本人を成敗することは正しい」というロジックですが、これはリベラルの「異民族も自分たちも同じ人間→異民族の移動の自由を制約することは人権侵害→移民に反対する自国民(土着民)は人権の敵→土着民を成敗することは正しい」と同じ構造です。*7

同じ人間ではあっても、移民はdisempowerされた存在なので、様々な面で甘く扱われます。「移民が土着民を襲撃してもニュースにしないが、土着民が移民を襲撃したら“深刻な差別”として大ニュースにする」のがリベラルメディアの約束事です。

イギリスはスリランカの植民地支配において、少数派のタミル人を優遇して多数派のシンハラ人を支配する分割統治を行いました*8。似た例は他にも多くありますが、近年の欧米のリベラルが自国でやってきた「マイノリティを優遇して土着民を圧迫する」「上下が中間層を挟撃する」はこれと同じ構図です。リベラルエリートは弱者の味方ではなく、弱者(というよりマイノリティ)を利用して庶民を搾取する強欲集団だということです("Greed is good")。旧共産圏におけるノーメンクラトゥーラと変わりありません。

過去記事から再掲します。

ネオリベが金儲けのために移民を推進し、それに一般大衆が反発すると、ネオリベに代わってリベラルがポリコレを振りかざして「レイシスト」と攻撃するという、ネオリベとリベラルの二人三脚が続いていたわけです。

上野千鶴子によると「負け組を足蹴にする」のがリベラルだそうですが、これは欧米のリベラルにも共通する思想です(マイノリティはケアの対象)。トッドが言うところの「本当のエリート」とは対極にあります。

何でフェミニズムが、彼らの不安のケアをしなければならないのですか? 女にケアを求めるのは筋ちがいでしょう。そういう人たちがフェミニズムの妨げになるかもしれないので、降りかかる火の粉は振り払い、じゃまなものは足蹴にしなくてはならないから、対策は必要だとは思いますよ。私は社会工学的で管理主義的な発想を持たないので、彼らをケアする、つまり慰撫したり統制したりしようとは思いません。自分のケアは自分でする、これがフェミニズムの自己解放の思想の基本のきです。*9

欧米の政治が示しているのは、日本でも外国人労働者(≒移民)を大量に受け入れると、移民の味方をするエリート中心の政治勢力と、それに対抗する土着日本人の政治勢力が激しく対立する分断が生じるであろうことです。*10

追加:参考にジジェクの動画を貼っておきます。

www.youtube.com

後は過去記事を参考にどうぞ。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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アレクサンドリア [DVD]

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*1:Silent majorityと書きたいところですが、総得票数ではわずかにクリントンがトランプを上回ったので"majority"とまでは言えません。

*2:夏場に話を聞いたアメリカ政治を専門とする某大学教授は「ヒラリー・クリントンの地滑り的勝利がメインシナリオ」と言っていました。日本のエリートがアメリカのエリートから情報を仕入れるため、判断にバイアスがかかってしまう好例です。また、ワシントンDC在住の国際公務員は「自分の周囲にはトランプ支持者は誰もいない」と言っていましたが、実際、トランプの得票率はわずか4%でした。「分断」が深刻なことがよく分かります。

*3:強調は引用者、以下同。

*4:今回の選挙では「プロテスタント」が勝利しましたが、人口動態は将来の「カトリック」の逆転勝利を示唆しています。

*5:ネオリベ勢力が土着勢力に勝利した日本の「郵政選挙」の逆バージョンとも言えます。

*6:個人的印象ですが、欧米のリベラルはこの約10年間で加速度的に狂信度を増したように感じます。

*7:ポリコレ教徒の異常な攻撃性は、アレクサンドリア図書館を破壊し、ヒュパティアを惨殺したキリスト教徒を想起させます。「多様性」の名の下に絶対的「正しさ」を強要するポリコレ教(political correctness)は、現代に復活したネオキリスト教とも言えそうです。

*8:スリランカ内戦の遠因。

*9:[引用者注]自己解放→貧困も自己責任→エリートは庶民の生活について責任を負わない

*10:前者がいわゆる(構造)改革派、後者がヨーロッパの「極右」に相当します。日本に国家社会主義的な「極右」が存在しないのは、外国人が問題になるほど多くないためとも考えられます。