Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

トランプと安倍とグローバリゼーション・パラドクス

アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は、"Make America Great Again"の具体策として

  • 製造業の国内回帰
  • 不法移民の送還

を主張しています。生産力・仕事・賃金をアメリカ国内に留める"America first"の富国政策、軍事力強化と合わせると富国強兵策と言えます。

www.businessinsider.com

ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド: 経済学の95%はただの常識にすぎない

ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド: 経済学の95%はただの常識にすぎない

理論的には、農業やサービス業を含め、どんな経済活動で生産能力を強化しても経済開発は達成できる。だが実際には、大半の場合において、経済開発とは工業化を通じて、いやより正確には工業部門の開発を通じて達成される。アルバート・アインシュタインが「理論的には、理論と実践は同じである。だが実践的には、そうではない」と言ったのはけだし名言だった。

一方、日本の安倍晋三総理大臣は、

  •  もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。
  • 「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指します。
  • (企業活動に邪魔な)固い、岩盤のような日本の規制を、私自身をドリルの刃として、突き破ろうと思っています。
  • 永住権取得までの在留期間を世界最短とする。

と発言しています。

製造業復活よりもIR・カジノに熱心なようですが、外国人観光客増加には日本を「安い国」、すなわち「貧しい国」にするのが最も効果的です。*1

今のところ、その方針は順調に進んでいるようです。

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TPPに象徴されるグローバリズムを基準に評価するとトランプ×、安倍○になりますが、それは安倍首相が"Japan first"でないことを意味します。

安倍首相のいう「世界で一番ビジネスがしやすい環境」の実像が見えてきたのではないだろうか。それは、労働基準法など整備されていなかった時代、あるいは人権意識が希薄で搾取が横行する開発途上国のような状況だ。SEZ*2は本来、途上国に設置されて効果を発揮するものだが、国家戦略特区構想は日本を途上国並みの労働環境に逆戻りさせようというものなのだ。

国にも、国民にもメリットがない。負担は国民と国民が支える国家へ、利益は企業へ。これが国家戦略特区の正体である。

「自国民第一」ではない首相の支持率が60%超とは不思議な国です。

www.j-cast.com

補足

Dani Rodrikは"The Globalizition Paradox"で

  • Hyperglobalization
  • Democratic politics
  • Nation state(National sovereignty)

の三つが同時に満たせないトリレンマにあることを指摘しています(pick two, any two)。

これに従うと、

  • トランプ:民主主義と国家主権のためにハイパーグローバリゼーションを否定 
  • 安倍:ハイパーグローバリゼーションのために民主主義か国家主権を否定

となります。*3

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

diamond.jp

政治と企業が(ネオ)リベラル化して「自国民第一」ではなくなったことが日本と欧米を覆う閉塞感の原因です。原因は同じですが、欧米では大衆の反ネオリベ化が進む一方で、日本では「改革派」を自称するネオリベ勢力が高支持率を保っている点が大きく異なります。

totb.hatenablog.com

*1:観光立国≒日本を「見世物小屋」にすること。

*2:[引用者注]Special Economic Zone(特別経済区)

*3:欧米ではエリートがハイパーグローバリゼーションを推進し、それに反対する勢力を「極右」と決め付けています。「極右」の反対=「極左」が欧米エリートの本質です。