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「デフレの正体」は日本人の価値が下がったこと

これらの記事の続きです。「デフレの正体」について考察します。

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2011年3月2日の衆議院財務金融委員会で、リフレ派の山本幸三議員のこの質問に対して、

白川さんの発言でびっくり仰天したのが、二ページ目の一の4というところなんですが、中略の後、「名目賃金の伸縮的な調整はサービス価格の下落という形でデフレの原因ともなった。」

どういうことですか、これは。労働組合の幹部が聞いたらぶったまげるよ。自分たちが賃金引き下げを受け入れたのがデフレの原因だと言っているんだよ。

これはどういうことですか、日銀総裁

日本銀行白川方明総裁(当時)はこのように答えています。

日本とアメリカのインフレ率の違いというものを過去十数年間分析してみますと、九割方が財ではなくてサービスでございます。

サービスの値段がなぜ下がっているかということ、もちろんいろいろな要因がございます。そのうちの一つの要因として、サービスというのは、これは御案内のとおり、労働集約的な活動が多いということで、賃金の影響を大きく受けるわけでございます。

アメリカのPrice Indexes for Personal Consumption Expendituresと日本の消費者物価指数を比較します。

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財(goods)とサービス(services)に分けます。

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財価格よりもサービス価格に違いがあることが一目瞭然です。

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サービス価格と財価格の比です。日本は2003年から相対的上昇トレンドが止まっています。

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アメリカとの相対価格の下落が顕著なのもサービスです(財は1980年代からのトレンドの延長線上)。サービスの対米相対価格がトレンド線から外れて急落し始めた時期と、本格的にデフレに突入した時期は一致しています。トレンドが継続していれば、2015年のサービス価格は現実よりも約3割高くなっていたことになりますが、これは現在のサービス価格が「本来の水準」を約2割下回っていることを意味します。

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スイスも2011年後半からユーロ危機(不安)→スイスフラン高によるマイルドなデフレに陥っていますが、

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サービス価格は上昇を続けています。

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サービス価格が上昇しなくなったことが日本のデフレの特徴と言えます。

山本議員が主張したように、デフレの原因が金融政策の失敗であれば、財価格とサービス価格が等しく影響を受けていた(→サービス価格の相対的上昇トレンドが継続していた)と考えられます。サービス価格の財価格に対する相対的上昇が止まったことは、白川前総裁の「賃下げ→サービスのインフレが止まる→デフレ」あるいは「サービス価格を上げられない→賃下げ→デフレ」の因果関係が強いことを示しています。

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ところで、下村治『日本は悪くない―悪いのはアメリカだ』の巻末の「解説――恐るべき予言の書」に水木楊が次のように書いています。

日本は悪くない―悪いのはアメリカだ (文春文庫)

日本は悪くない―悪いのはアメリカだ (文春文庫)

昭和四十年代、卸売物価は安定しているのに、消費者物価ばかりが上がったことがあった。日銀は金融引き締めなどを検討していたが、下村さんは断言した。「上がっているのはサービス価格です。それだけ人間の価値が上がったのですから、心配いりません」

下村治が生きていれば、大企業が人件費抑制の一方で利益剰余金(内部留保)を急増させ始めた2003年以降の状況を「人間の価値が下がったのですから、心配です」と断言するかもしれません。

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同時期に急増したのは対外直接投資と配当金です。*1

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映画『ゼイリブ*2』のBlu-rayの解説に鷺巣義明は

ゼイリブ 通常版 [Blu-ray]

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80年代のレーガン革命…が別の銀河系からやってきたエイリアンによって行われていたら?……エイリアンにとって地球が第三世界であり、資源を搾取するための奴隷星と化している姿は、先進諸国が第三世界の資源を搾取する姿と重なっている。……THEY(彼ら)からすれば、地球のあらゆる資源を吸収すれば、別の惑星へと移っていくだけだが。

と書いていますが、これを

1990年代以降の構造改革が、別の国からやってきたエイリアン(外人/グローバル資本)によって行われていたら?……グローバル資本にとって日本が人的資源を搾取するための植民地と化している。……THEY(彼ら)からすれば、日本のあらゆるリソースを吸収すれば、別の国へと移っていくだけだが。

とすれば、日本の「デフレの正体」の説明になるでしょう。下村治を真似るなら「日本の労働者は悪くない―悪いのはエイリアン(とその手先)だ」です。日銀バッシングを繰り返したリフレ派は「デフレの正体」を隠蔽する役割を見事に果たしました。*3

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グローバル資本の賃下げ圧力(外患)に助力する国内勢力がフェミニスト/リベラルであることも見逃してはならないでしょう。これが左派の正体です。

president.jp

正規雇用者の給料を下げて、夫に600万円払っているのなら、夫に300万円、妻に300万円払うようにすれば、納税者も増えます。

www.asahi.com

男性が年収800万円を長時間労働で稼ごうとするよりも、男女が適正な労働時間で400万円ずつ稼ぐ方が、現代の経済状況に適合している。*4

フェミニストの男女平等とは「夫の稼ぎだけでは生活できない水準まで賃下げ→男女がフルタイムで低賃金労働」、リベラルの平等とは「日本人の賃金を途上国の水準まで下げる→同一労働同一賃金」です。

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*1:グラフのGDPは2005年基準。

*2:特殊なサングラスをかけると見えるエイリアンのサブリミナルメッセージには"MARRY AND REPRODUCE"、"WORK 8 HOURS"、"SLEEP 8 HOURS"、"PLAY 8 HOURS"などがありますが、これなら従ってしまう人は現代日本には大勢いるでしょう。

*3:2015年の東証の売買代金の7割が海外投資家によるもの。株式市場はフローとストックの両面で外人支配が強まっています。

*4:小熊はドナルド・トランプ米次期大統領と橋下徹大阪市長を同類と分析していますが、ネオリベラリズム新自由主義)に対してトランプは反対、橋下は賛成(推進)なので、完全な誤りです。小熊が両者の本質を全く理解していないことは明らかです。