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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「失われた20年」の真因はグローバリゼーション

日本経済

先日の記事の続きです。 

totb.hatenablog.com

麻生財務大臣のように「内部留保≒遊休資金」とイメージしている人が多いようですが、実態は異なります。

www.sankei.com

「企業の収益は最高を記録しておりまして、その稼いだカネがどこに行っているか。通常ですと配当か賃金か、設備投資の3つに回るのが基本ですが、3年間で総額75兆円の内部留保がたまって、給与に回ったのが3兆円。これだけ設備が老朽化していて、金利がただ同然の時代にどうして進まないのか知りませんが設備投資が8兆円。残りはじーっと持っておられる。何のために。私どものとこに来られて『税金を下げてほしい』と言われる。下げてどうするんですか、また内部留保を増やすんですか」

財務省「法人企業統計」から全産業(金融業、保険業を除く)のバランスシートをグラフにします。

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設備投資が進まないことを反映して有形固定資産等は増えていません。内部留保≒利益剰余金の増加に対応しているのは投資その他の資産です。

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投資その他の資産の主要項目である投資有価証券と有形固定資産+無形固定資産の比です。

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1997-98年の金融危機を境にして、企業が投資の重心を設備投資から有価証券投資にシフトさせたことが分かります。磯部昌吾「1980-2012年度における日本企業の財務構造の変遷」*1では、これが企業が国内市場を見限って海外市場に活路を見出したことの反映と分析されています。

国内需要が伸び悩む中で、日本企業は海外需要の取り込みに活路を見出してきたが、法人企業統計からは、そのデータが単体ベースであるがゆえに、関係会社の株式の保有や受取配当金の増加など、日本企業による海外事業の拡大を示していると考えられる変化がわかる。

経済産業省「海外事業活動基本調査」からも、日本企業の海外シフト("Japan passing")が確認できます。

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過疎化が進む地方の企業が都市部に拠点を移すように、グローバル化に目覚めた日本企業がホームバイアスを弱めたことが「設備が老朽化していて、金利がただ同然」でも国内投資が一向に盛り上がらない根本原因です。*2

「人口減少+グローバリゼーション」という構造要因に金融緩和は無力であり、リフレ云々は明後日の方を向いた議論です。財政出動も対症療法にはなっても原因療法にはなり得ません。

1月12日の日本経済新聞掲載記事で、『グローバリゼーション・パラドクス』の著者ダニ・ロドリックが

グローバル化、民主主義、国家主権の3つは同時に成り立たないという「世界経済での政治のトリレンマ」にしたがえば)いま欧米で起きているのは、明らかにグローバル主義やグローバル化への反発といえる。

エマニュエル・トッドが、

ドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利に驚きはない。2000年以降、自由貿易によって雇用が奪われ、白人有権者の心に耐えがたい痛みが生まれたからだ。トランプ氏の勝利は、労働者階級だけでなく、中間層の怒りでもあったのだ。

と分析したように、米欧ではハイパーグローバリゼーションに対する一般大衆のバックラッシュが強まっていますが、安倍政権は自由貿易TPP)と移民(外国人労働者)という時代錯誤の政策を積極的に推進しています(ガラパゴス?)。

その帰結が「日本を取り戻す/日本再興」とは対極の「“ストロー効果”による空洞化&治安悪化」という荒廃した社会(デトロイト?)であることは想像に難くありません。*3

totb.hatenablog.com

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グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

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グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書)

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自由貿易は、民主主義を滅ぼす

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自由貿易という幻想 〔リストとケインズから「保護貿易」を再考する〕

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企業行動の変化は経済学よりも経営の専門家が的確に認識しています。冨山和彦の分析は参考になります。

上昇気流に乗るのは誰だ!

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補足

この3年間に限れば現金・預金も急増していますが、長期的には投資有価証券の増加が上回っています。

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財務リストラ完了後、資産は増加に転じていますが人件費は一向に増えません。雇用重視から株主重視への転換が背景にありますが、これも「自国民の労働者よりも外国人株主を優先する」グローバリゼーションの一側面です。

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参考

京都を外資に売り飛ばすことが「日本再興」だそうです。

jbpress.ismedia.jp

怪奇大作戦 DVD-BOX 下巻

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*1:財務省ファイナンス』2013年12月号

*2:地元企業的な「地域経済に貢献」という観念が「海外シフトの原資を捻出するために徹底的にコストを切り詰める」に百八十度転換。

*3:「改革派」の正体は「日本を外資に)売り飛ばすハーメルンの笛吹き男です。