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トランプ大統領の「本気」~Americanism対Globalism

ドナルド・トランプの「過激」な発言が本気だったことにショックを受けた人々がいるとの記事ですが、

2015年からトランプをウォッチし続けていれば、「本気」は何ら衝撃的ではありません。トランプは一貫して反ポリコレ、反グローバリズム、反エスタブリッシュメントを庶民層に訴えていました。*1

その主張が支離滅裂なものではなくそれなりの理があったことは、トッドやピケティも認めています。*2

AERA(アエラ) 2017年 1/30 号 [雑誌]

AERA(アエラ) 2017年 1/30 号 [雑誌]

「誤解してほしくないが、個人的にはトランプ氏を応援していない。ただ彼の支持者たちの反乱には理がある」

www.asahi.com

ポピュリズムとは、先進国の庶民層がグローバリゼーションと格差拡大に直面して抱く「自分たちが見捨てられた」との感情がもたらす、混乱しているものの理のある反応だ。

共和党指名受諾演説の

The most important difference between our plan and that of our opponents, is that our plan will put America First. Americanism, not globalism, will be our credo. *3

などの言葉からは、トランプがかなり正直に「自分が正しいと思うアメリカ社会のあり方」を訴えていたことが伝わってきます。TPP離脱や壁建設はこの信念に沿ったものであり、有言実行しただけです。

壁建設は日本でも評判が悪いようですが、

www.sankei.com

壁(フェンス)建設は、中東からバルカン・ルートを進んでくる大量の不法入国者に悩まされた東欧諸国が行ったことと同じです。

www.theguardian.com

そもそも不法移民は約1100万人もいると推計されています。人口比を日本に当てはめると400万人強です。

www.washingtonpost.com

壁建設は「アメリカへの入国を正規ルートに限定する」ものであり、主権国家としては当然のことです("A nation without borders is not a nation")。トランプを批判する日本人は「密航の取り締まり体制をザルにして、韓国人、北朝鮮人、中国人などが百万人単位で不法入国できるようにせよ」と主張するのでしょうか。*4

トランプは大統領就任演説で

The establishment protected itself, but not the citizens of our country.

エスタブリッシュメントを批判しましたが、これは冒頭のFTの記事の

The theorists of the New Economy said it should be possible to compensate the “losers”. But that never happened. Because when the money came in, the people who managed the new economy did not recognise the losers as belonging to the same community.

「ニューエコノミーの勝者が(多くがトランプに投票したであろう)敗者を同じコミュニティに属すると認識しなかった」との分析に通じます。

チャールズ・マレーが指摘する「大衆を無視する劣化エリート」です。

階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現

階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現

新上流階級の人々は政治に積極的でありながら、国民の暮らしを支えるために自分の地位を生かすという場面になると、急にそっぽを向いて職務離脱(AWOL*5)するのである。

イギリスのメイ首相はさらに突っ込んだ分析をしています。

www.independent.co.uk

But today, too many people in positions of power behave as though they have more in common with international elites than with the people down the road, the people they employ, the people they pass in the street. 

But if you believe you’re a citizen of the world, you’re a citizen of nowhere. You don’t understand what the very word ‘citizenship’ means. 

勝ち組=国際エリート=世界市民は、自分をローカルコミュニティの一員とは認識しなくなるので、必然的に「敗者」に補償する気も湧いてこないのです。植民地における白人のようなものです(them and us)。

トランプは大統領選挙をAmericanismとglobalismの対決、一般化するとlocalismとglobalismのGL対決と認識していましたが、トッドの

「一つの国というより帝国と化した米国に主導された時代、グローバリゼーションが国を乗り越えるという夢が絶頂に達し、そして墜落していくのを見た。一つの時代の終わりと、別の時代の始まりを示している」

という見方が正しければ、ソ連崩壊(ロシア8月革命)に匹敵するような歴史的イベントだったことになります*6

トランプ革命が成功するのか、それともグローバリストの巻き返しにあって骨抜きにされるのか、目が離せません。

アメリカの壁 (ケイブンシャ文庫)

アメリカの壁 (ケイブンシャ文庫)

totb.hatenablog.com

*1:上流階級から共産主義者が出たように、富豪のトランプが庶民に味方しても不思議ではありません

*2:ファクトチェックと称してトランプの主張を支離滅裂と決め付ける報道が目立ちますが、枝葉ばかり見て幹を見ていないと言わざるを得ません。有権者にとって重要なのは各論ではなく総論です。

*3:強調は引用者、以下同。

*4:オープン外構にしていたら無断侵入者が絶えないので、やむを得ず塀を立てることは、自衛であって差別や暴挙ではないでしょう。

*5:[引用者注]Absent Without Leaveの略。

*6:トランプ大統領に自由貿易を執拗に迫る安倍首相は、トランプにはアンシャンレジーム復活を目論む反動勢力に見えているかもしれません。