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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

失われた20年における「テクノロジーから女手へ」

日本経済

ひとつ前の記事では、企業が株式市場の投資家の要求に応じて資本効率の向上を目指すようになった結果、設備投資の抑制(→資本装備率の低下)と低賃金労働の増加が生じたと分析しましたが、みずほ総合研究所エコノミストEyes(2015年5月28日)「収益率向上と経済成長を同義とするには」でも同様の分析がされています。*1

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/opinion/eyes/pdf/eyes150528.pdf

実質賃金の低下が雇用拡大、期待株主資本コストの上昇が投資抑制要因に

企業の収益率重視が資本装備率の上昇を抑制して雇用増と投資抑制に

財務省「法人企業統計」から主要指標の10年移動平均をグラフにして、このことを再確認します。*2

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企業の収益率(資本効率)重視が設備投資と資本装備率の上昇を抑制し、低賃金労働力の数頼みの経営に走らせたことが読み取れます。資本効率を向上させるためには、投資が不要な人力に頼る方が「効率的」なのです。

新たに加わった「人力」とは女と退職者です。女を労働市場に引き込むために、まず男の雇用が破壊されました。

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totb.hatenablog.com

最大の労働需要が高齢化に伴う介護サービスで生じたことも、資本装備率が高まらない一因です。

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過去20年間の日本経済では「資本設備から女手へ」あるいは「テクノロジーから女手へ」の構造変化が生じていることになります。火縄銃から機関銃へと最新技術に更新していくのではなく、銃は老朽化するに任せて、代わりに薙刀を持たせた女を動員するようなものです(これが「女の社会進出」の実態)。*3

最近話題のAmazonヤマト運輸の関係は、IT革命のアメリカと人力への退行を起こした日本を象徴しているようです。*4

voxeu.org

Most famous is perhaps the different choice of technique in printing. Although the Chinese had invented the printing press, commercial printers preferred to use a more labour-intensive technology, woodblock printing. …; typically, the pressing in China is done by humans, in Europe by a machine.

生産年齢人口の減少が始まった時期に、省力化投資の促進ではなく、女と退職者の労働力化という持続不能な近視眼的対応に走ったことは、日本経済にとって取り返しがつかない失策です(←エリートの劣化)。*5

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大東亜戦争末期のようになってきました。

鈴木貫太郎 - Wikipedia

7月に陸軍将校の案内で、鈴木は内閣書記官長の迫水久常とともに国民義勇戦闘隊に支給される武器の展示を見学したが、置かれていたのは鉄片を弾丸とする先込め単発銃、竹槍、弓、刺又などすべて江戸時代のしろもので、迫水が後年の回想(『機関銃下の首相官邸』)で「陸軍の連中は、これらの兵器を、本気で国民義勇戦闘隊に使わせようと思っているのだろうか。私は狂気の沙汰だと思った」と記すほどのものであった。

日本にも「最後の転落」が迫っているようです。*6

最後の転落 〔ソ連崩壊のシナリオ〕

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鉄砲を捨てた日本人―日本史に学ぶ軍縮 (中公文庫)

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totb.hatenablog.com

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[補足]

増えている固定資産は投資有価証券です。企業は国内での設備投資を控える一方で、ウェスチングハウス買収のような金融投資を積極化させています。人力シフトと同様、資本効率を高めるためには「効率的」だからです。

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*1:みずほ総研はいいレポートが多いのでお勧めです(回し者ではありません)。

*2:金融業と保険業を除く。「資本」は土地と建設仮勘定を除く有形固定資産、人員数は期中平均役員数+期中平均従業員数で計算。

*3:設備のヴィンテージ(平均年齢)も顕著に上昇しています。これは、最新技術の導入が遅れていることを意味します。

*4:Amazon(とベゾス)の利益のために日本人が奴隷的労働するようになったとも言えます。

*5:橋本政権から安倍政権に至るまでの経済政策は、国内外の投資家の利益のために国民生活を犠牲にするものになっています。西日本の某地方公共団体は、ハゲタカファンドに乗っ取られたように見えます。

*6:ソ連はトッドが『最後の転落』を著した15年後に崩壊しました。