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[グラフ]法人企業統計~資本の「日本離れ」

1日に公表された財務省「法人企業統計」から主な系列をグラフにして企業行動を確認します。*1

経常利益は過去最高を更新する一方で、設備投資はこれまでの循環のピークに遠く及びません。

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人件費も1990年代末から全く増加していません。

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麻生財務大臣は1月に、この企業行動を批判していました。

www.sankei.com

「企業の収益は最高を記録しておりまして、その稼いだカネがどこに行っているか。通常ですと配当か賃金か、設備投資の3つに回るのが基本ですが、3年間で総額75兆円の内部留保がたまって、給与に回ったのが3兆円。これだけ設備が老朽化していて、金利がただ同然の時代にどうして進まないのか知りませんが設備投資が8兆円。残りはじーっと持っておられる。何のために。私どものとこに来られて『税金を下げてほしい』と言われる。下げてどうするんですか、また内部留保を増やすんですか」

借入金利は1%にまで低下しています。

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内部留保≒キャッシュポジション」という誤解が根強いようですが、利益剰余金に対応して増えているのは現預金ではなく投資その他の資産(主に投資有価証券)です。

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金利がただ同然」なのに設備投資が低調なのは、1990年代末から「内部資金→金融投資(→投資その他の資産)」が投資の主体になったため、金利が低下しても「銀行借入→設備投資(→その他の有形固定資産)」が刺激されないためです。

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企業が設備投資から金融投資にシフトした背景には、金融資本市場からの「高資本効率」の圧力があります。

www.bloomberg.co.jp

一橋大学の伊藤邦雄教授が中心となってまとめた経産省の報告書(伊藤レポート)では、グローバルな機関投資家が日本企業に求める目指すべきROEの最低ラインとして8%を掲げている。生保協によると、13年度の日本企業のROEは平均で8.5%だった。

人口減少のために潜在成長率が低下している日本で海外並みの高資本効率を目指すと、投資のハードルレートが上昇して資本が国内投資に向かわなくなり、それを補うための過重労働(強制労働)が蔓延することになります。日本経済は「浸透圧による脱水症状」に陥っているようなものです。*2

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日本の悲劇は、政治経済の中枢にいる意欲的なエリートが、有害な「高資本効率経営」を正しいと信じ込んでいることです。

diamond.jp

私が聞いているところでは、10年前にも省庁内では英国版のスチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードをどう日本に導入して定着させるかという議論はあったということですが、その時には環境的にそうした考えを実現するのはかなり困難だったということです。

その頃官庁でそのような議論をしていた優秀な官僚の人たちは、ちょうど今現役で事務次官などの要職につかれています。

その方々が、日本経済の状況が悪化していく様子を見ながら、なんとかしなければならないと思っていた。そこに安倍さんという経済政策に熱心な総理大臣が出てきて、一緒に一連の改革をされたと。

日本の(劣化)エリートには、ミクロの「正しさ」がマクロでは有害になることが理解できていないようです。

クルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクヴォルト - Wikipedia

もっとも避けるべきは愚かで勤勉なタイプで、このような者にはいかなる責任ある立場も与えてはならない。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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*1:金融業と保険業を除く。

*2:安倍晋三「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」