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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「もったいない」と投資不足~日本経済とプロクルステスの寝台

ゲーテの『ファウスト』第二部では、経済の潜在産出量を実現するためには、労働力・資本設備・技術に加えて、信用創造によって供給されるマネーが不可欠であることが描かれています。

金(かね)と魔術―『ファウスト』と近代経済 (叢書・ウニベルシタス)

金(かね)と魔術―『ファウスト』と近代経済 (叢書・ウニベルシタス)

大事業とは――われわれが知っているように――経済の領域では人為的に貨幣価値をつくり出すことである。それは、諸要因による価値創造ではあるが、はっきりと認識のできる業績に見られるようなものではない価値創造であり、したがってまた、経済学的意味で因果関係が説明できるようなものでもない価値創造であり、それゆえにそれは魔法や魔術による価値創造である。われわれは、ゲーテが作品で魔術の力をどのように見ているのかはすでに確認してきた。重要なことは、それらの魔術の力はただ一緒に働きあう場合「のみ」魔術的効果をあげることができるということである。それらの力とは、*1

  • 埋蔵されている地中の財宝を貨幣(紙幣)に変えることが可能だという空想力、すまわち埋蔵金が紙幣の担保になるという想像、
  • 貨幣(紙幣)は合法化されるという国家権力が与える印象、 
  • 所有権掌握と結びついた人間の欲情、すなわち暴力、所有欲、吝嗇、
  • 運送手段、スピードのマルチ化による人間の活動空間の拡大化、
  • 人間以外のエネルギー、労働のマルチ化による生産力の拡大化、
  • 発明の才と技術の進歩である。

これはいわゆる「桶理論」のことです。日本の労働者の質が世界最高で日本の技術が世界一だったとしても、マネーの供給量が不足すると、経済水準は潜在産出量を下回ってしまうことになります。

リービッヒの最小律 - Wikipedia

www.irasutoya.com

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マネーは大別すると民間向け信用と政府向け信用から創造されます。民間向け信用を拡大するために中央銀行がゼロ金利まで利下げしてもなおマネーが不足するのであれば、政府の国債発行が過少ということになります。

ところが、日本の国債マネーストックの残高は「失われた20年」においても増え続けており、「国債発行が過少→マネー不足→デフレ」という因果関係には見えません。

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不足しているのはマネーというよりも投資です。「マネー不足→投資不足」ではなく「投資不足→マネー不足」の因果関係ということです。

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参考までに同期間のアメリカです。 

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企業は資本効率を高めるために設備投資から金融投資にシフトしています。

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他方、公共投資抑制の根底には日本的精神の「もったいない」があります。「新幹線は時速260kmで十分」「高速道路は4車線で十分」という精神です(詳しくは下の参考記事を)。

この「もったいない」精神による公共投資抑制は「プロクルステスの寝台」を想起させます。

プロクルーステース - Wikipedia

成長に合わせて寝台を大きくする(技術進歩に応じて投資を拡大する)のはもったいないため、技術進歩による成長分を切り落としているのが日本の実情です(技術進歩はインフラ輸出に反映)。これを続けていれば、いずれは成長力が失われて「寝台」に合うようになるわけです。ほとんど狂気の沙汰ですが、これを真面目に約20年間も続けているのが日本人です。*2

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

参考

toyokeizai.net

30年以上前に建設された区間で時速320キロ運転が行われているのに、最新の技術で建設されたはずの盛岡―新青森間で時速260キロ運転にとどまっているのはなぜか。

答えは、盛岡以北が全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づく「整備新幹線」だからだ。北海道、北陸、九州の新幹線も、同様である。全幹法で規定される整備計画には、営業最高速度が時速260キロメートルと記され、これが今も適用されている。

toyokeizai.net

togetter.com

nikkan-spa.jp

nikkan-spa.jp

*1:箇条書きは引用者による。

*2:「低金利国債発行して資金調達→研究開発やインフラ投資を増額」を20年間続けていれば、全く異なる日本が実現していたことでしょう。