読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

サッチャーの警告と日本経済~人を呪わば穴二つ

日本経済

新自由主義ネオリベラリズム)に基づく経済政策「サッチャリズム」を強力に推し進めたサッチャー英首相は、1990年11月の辞任直前に、野党議員の「1979年に比べて上位10%と下位10%の格差が著しく拡大した」との批判に、次のように答えました。

[H]e would rather the poor were poorer, provided the rich were less rich. That way you will never create the wealth for better social services, as we have.

So long as the gap is smaller, they would rather have the poor poorer. You do not create wealth and opportunity that way.

これが、日本のネオリベの次のような主張につながっています。

diamond.jp

イギリスの元首相のサッチャーが言ったように、金持ちをいじめて貧乏にしても、もともとの貧乏人はもっと貧乏になるだけなのです。

ところが、日本で過去20年間進められたネオリベ「改革」は、名目GDPが全く成長しない「失われた20年」を作り出しただけでした。

その理由は簡単で、サッチャーの警告に反して「金持ち(上位1%を除く)をいじめて貧乏にした」からです。

国税庁民間給与実態統計調査」で1997年と2015年の男の平均給与を比べると、どの年齢階級でも約1割減少しています。

f:id:prof_nemuro:20170418082440g:plain

給与階級別では、

  • 400万未満が増加
  • 400万円~2000万円未満が減少
  • 2000万円以上が増加

と、上位1%を除いて全体が貧しくなっています。

f:id:prof_nemuro:20170418081322g:plain

f:id:prof_nemuro:20170418081325g:plain

f:id:prof_nemuro:20170418081324g:plain

そもそも、賃金・俸給は国民所得の約6割を占める最大の構成要素なので、改革派を自称する勢力が唱える「シロアリ退治」「公務員人件費削減」などは経済成長ではなく経済縮小を目指すものに他なりません。

実際、人件費抑制が本格化した1997-98年から国民所得は長期停滞を続けています。

f:id:prof_nemuro:20170419162804g:plain

f:id:prof_nemuro:20170418214149g:plain

日米比較すると、賃金の伸びの差がそのまま名目GDPの伸びの差になっています。賃金抑制に躍起になる日本と、賃金を増やし続けるアメリカの差は広がる一方です。

f:id:prof_nemuro:20170420222615g:plain

f:id:prof_nemuro:20170420120330g:plain

f:id:prof_nemuro:20170421001953g:plain

バーナンキは1999年のペーパー"Japanese Monetary Policy: A Case of Self-Induced Paralysis?"で、日本銀行の金融緩和不足が日本経済を麻痺させていると論じましたが、"Self-Induced Paralysis"の本当の原因は官民挙げての人件費削減だったということです(→だからQQEはリフレ派の期待通りの成果を上げなかった)。

なぜこのようなバカげた国民貧困化政策が(経済学者の反対もほとんどないまま)延々と続けられているのかですが、「赤字企業再建のためには水膨れした人件費にメスを入れなければならない」という経営コンサル的な発想をマクロ経済運営に持ち込んでしまったためではないかと考えられます。

企業の場合、思い切ったコスト削減がV字回復をもたらすことはあり得ますが、一国経済における支出削減は経済縮小に直結するため、「支出削減→経済縮小→支出削減→・・・」の無限ループに陥ってしまいます。

国民的コストカット運動(→デフレ)によって漁夫の利を得たのが、給与2000万円以上の上位1%と資本家です。

給与を減らす力は、大別すると

  • 「中」の給与が高すぎるから引き下げよという「下」からの突き上げ
  • 「下」の願望に応えて「中」の給与を引き下げる「上」からの下押し圧力

の二つあります。給与体系の決定権を持つ最上位層には「上」からの下押し圧力が存在しない一方、自分に続く層は地盤沈下(弱体化)するので、力が相対的に強まります。そのため、自分たちで自分たちの報酬を増やす「御手盛」が容易になるのです。これが、給与所得者の上位1%だけが豊かになったメカニズムです。

人件費が減少した分、企業所得が増えています。

f:id:prof_nemuro:20170418214153g:plain

財務省「法人企業統計」でも、労働から資本への所得移転が確認できます。この期間に利益剰余金(いわゆる内部留保)は235兆円増加しています。

f:id:prof_nemuro:20170420120317g:plain
toyokeizai.net

日本でも外国人社長やプロ経営者がトップに就任する例も増え、高額な報酬をもらうケースも出てきている。・・・・・・日本でも超高額な報酬を得ている上場企業役員は確実に増えている。 

役員が有能だから高額報酬になったのではなく、人件費削減で浮いたカネを株主と山分けしているだけです。

サッチャーが野党議員の批判に

 [A]ll levels of income are better off than they were in 1979. 

と反論したように、サッチャリズムレーガノミクスは経済格差は拡大させたものの、経済成長に失敗したわけではありませんでした。

しかし、官民挙げて人件費削減に励んだ日本は、20年間も名目GDPが停滞を続けるという経済的「失敗国家」に成り果てています。

「人を呪わば穴二つ」と言いますが、「無能な連中の給与カット」を支持した日本の大衆のSchadenfreudeは、自分自身の給与をダウンさせる"shoot oneself in the foot"を招いたわけです。ネオリベ政策云々以前の問題です。

「貧乏人を豊かにすれば、自分ももっと豊かになる」というポジティブ・シンキングで経済運営してもらいたいものです。

地獄少女 1 [DVD]

地獄少女 1 [DVD]

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com