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歯科医師過剰と政治主導

歯科医師の供給過剰が経営難や質の低下を引き起こしていることはよく知られています。

president.jp

biz-journal.jp

歯科医師過剰問題 - Wikipedia

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その原因は、半世紀近く前の「政治主導」にあります。

日本経済の変容―倫理の喪失を超えて

日本経済の変容―倫理の喪失を超えて

将来の歯科医師過剰が明確であるのに、なにゆえ、これほどの数の歯学部増設を文部省が認めたかについて、歴代の責任者はすべて、その新設に与党の実力政治家がからんでおり、その力の前に受け付けざるをえなかったと述べている。これが政治家の利益によって動く“政治主導”なるものの実態である。

1990年にはWHO(世界保健機関)に

「いくつかの国での歯科医学校の乱増は非難さるべきであり、この種の無計画な活動によって生ぜしめられた資源の浪費を認めざるを得ない」

と批判されています。

私学は公益よりも経営(私益)を優先する傾向があるため、いったん歯学部設置を認めてしまうと、定員削減に対する「抵抗勢力」になりがちです。公益のためには、そのような事態が生じないよう、担当官庁が(政治家の圧力を排して)新規参入を制限しておく必要があったのですが、後の祭りです。

このエピソードは、私益のために新規参入を狙う私学は、質を担保するための参入制限に「既得権益」「岩盤規制」「抵抗勢力」とレッテルを貼って「政治主導*1」に働きかけることが効果的であることを示しています。そのための特区制度もちゃんと用意されています。*2

国家戦略特区構想は日本を途上国並みの労働環境に逆戻りさせようというものなのだ。

国にも、国民にもメリットがない。負担は国民と国民が支える国家へ、利益は企業へ。これが国家戦略特区の正体である。

私物国家―日本の黒幕の系図 (知恵の森文庫)

私物国家―日本の黒幕の系図 (知恵の森文庫)

補足

伊東光晴は、1980年代以降の新自由主義市場原理主義を推進した学者たちを、イデオロギーのために現実を無視する観念論者と批判しています。

原理主義マルクス主義を学んだ者の多くが・・・・・・一転して、原理主義的市場信仰論者に変わっていく。・・・・・・かれらは、いずれの場合にも、イデオロギーで現実をとらえようとする観念論者なのである。

リベラルがネオリベラル化する理由でもあります。

totb.hatenablog.com

*1:利権政治や縁故資本主義のニュースピーク表現。

*2:特区や政治主導は「我田引鉄」を裏ではなく表で堂々と行うためのもの。