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都議選の雑感~民意で多元的社会から全体主義社会に移行する日本

東京都議会議員選挙で都民ファーストの会が圧勝し、自由民主党は惨敗ということなので、1990年代からの政治と社会について考察(妄想)してみます。*1

大衆社会の政治 (現代社会科学叢書)

大衆社会の政治 (現代社会科学叢書)

コーンハウザーは

  • エリートへの接近可能性(非エリートのエリート入り)
  • 非エリートの操作可能性 (エリートによる非エリート操作)

の二点から、社会を

の四つの類型に分類しました。近代化以前の共同体社会が、近代化によって他の三つの社会に移行します。

政治学の基礎

政治学の基礎

コーンハウザーは、自由民主主義が安定するのは、多元的社会だとした。企業、労働組合、教会など、自律的な社会集団が多元的に存在し、個人が複数の集団に所属している社会では、人々は画一化されにくい。 

多元的な社会集団を欠いている場合には、「原子化された個人*2」はむきだしの状態で社会にさらされ、孤立感と疎外感を味わい、精神的に不安定になるため、エリートの操作を受けやすくなる。また、中間集団がないと、大衆の政治参加も無制約で混乱したものとなるので、民主政治は脆弱性を帯びることになる。*3

ファシズム共産主義には多くの相違があるが、人間生活に対する全体的な支配をもくろむ運動という点では共通しており、全体主義といわれる。そこでは自律的な中間集団の存在は許されない。

中間集団とつながった(癒着した?)族議員たちによる「古い自民党」政治が実現していたのが多元的社会になります。

「○○族」を既得権者の抵抗勢力として攻撃したのがネオリベラルの小泉首相です。2005年の郵政選挙は、多元的社会を目指していた党内の勢力を一掃する一種の自己クーデターと言えます。

国政レベルでは「新しい自民党」の支配が確立したものの、地方政治では「古い自民党」の残存勢力が無視できません。そこで、残存勢力の掃討役を買って出たのが「改革派(実体はネオリベ)」の首長・地方政党です。自民党の国政に不満を持つ国民が地方選挙において「改革派」を勝たせる→地方の古い自民党が弱体化する→中央の新しい自民党の地方支配が広がる→全国ネオリベ化、という展開です。大阪の維新、東京の都民ファーストの会は、ネオリベラル革命の実現のために地方の「古い自民党」を掃討するネオ自民党の別働隊になります。

ファシズム共産主義とは多くの相違があるものの、規制緩和補助金カットによって自律的な中間集団を撲滅しようとするネオリベ改革派が目指しているのも、一種の全体主義社会と言えそうです。*4

反自民党を掲げて政権を奪取した日本新党*5民主党も、既得権益批判・規制緩和志向など、本質はネオリベラル革命政党です。ケインズは『一般理論』に「既得権益よりも考え方(idea)が危険」と書きましたが、「改革」すればするほど事態が悪化していくことは、「日本新党的な考え方*6」が日本の経済社会を破壊してきたことを示しています。「日本新党的なもの」は一部の利益のために社会の秩序を破壊するいわばがん細胞のようなものであり、既に政界全体に転移しています。

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(⇧1970~80年代の輝かしい成果を1990年代以降の「改革」で完全に破壊。「古い自民党」をぶっ壊すことは日本をぶっ壊すことでした。「改革」とは「官から民へ」をスローガンに掲げた日本版大躍進政策文化大革命です。)

1990年代以降、日本の政官財学は権力分散・合議的な体制からトップが強い権限を持つ体制に「改革」しましたが、民主集中制になっただけのようにも見えます。

日本の改革がモデルにしたアメリカには、トランプ大統領が苦戦していることに示されるように、トップを牽制する制度・慣習・文化が存在します。巨額報酬が批判される企業のCEOも、業績を上げられなければお払い箱です。

成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学

成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学

業績が悪かった場合の企業の対応も速くなっている。こんにち、役員は厳しく評価され、望まれた結果を出さなければただちにお払い箱になる。・・・・・・S&P500社のCEOのうち、2012年に退任したCEOの平均在任期間は、2000年に退任したCEOよりも短くなっている。

このような制度・慣習・文化が存在しない日本に「強いトップ」の仕組みを導入すれば、エリートがノーメンクラトゥーラとなっても何の不思議もありません。*7

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)

ナポレオンが独裁者としてどんなにひどいまねをしても、四本足であるかぎりは、仲間なのだから、じぶんたちを決定的に裏切ることはないと動物たちは信じている。だからこそ、ほかの豚たちといっしょに、ナポレオンみずからが、前足に鞭をもち、二本足でのったりと歩き出す問題の場面(第十章)は、他の動物たちにとって、驚天動地の出来事なのである。*8 

リベラルエリートが仲間意識を感じるのは、自国の大衆よりも外国のリベラルエリートです。これが「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」の意味するところです。

totb.hatenablog.com 

totb.hatenablog.com

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日本新党 責任ある変革

日本新党 責任ある変革

日本改造計画

日本改造計画

*1:フランス国民議会におけるマクロン新党「共和国前進」大勝、社会党壊滅と似ています。フランスについては別記事で考察するかもしれません。

*2:[引用者注]新自由主義革命を起こしたサッチャーの有名な言葉"There is no such thing as society. There is living tapestry of men and women ..."

*3:[引用者注]退職した高齢者は社会集団に所属しない「原子化された個人」になりやすいため、催眠商法に騙されるように、「改革」のイメージに操作されやすくなります。一般的イメージとは逆に、これこそシルバーデモクラシーです。

*4:最近では農協がターゲット。

*5:1992年の参院選小池百合子が政界入り。

*6:公共サービスの民営化、公的支出削減、公有財産売却などの行政のスリム化、地方分権という名の地方切り捨て・一極集中、経済では規制緩和(→寡占化)、社会面は「女の社会進出」や子育て支援などのリベラル寄り。

*7:帰化動物が天敵がいない新環境で爆発的に増えるようなもの。

*8:訳者解説より。