Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「安倍政権は経済重視」という印象操作

安倍内閣総理大臣が2012年末の就任記者会見で

強い経済は、日本の国力の源であります。強い経済の再生なくして財政再建も日本の将来もありません。

内閣の総力を挙げて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、この三本の矢で経済政策を力強く進めて結果を出してまいります。頑張った人が報われる日本経済、今日よりも明日の生活が良くなると実感できる日本経済を取り戻してまいります。

と述べたこともあってか、「安倍政権は経済重視」という印象を持つ人が多いようです。そこで、三本の矢についてファクトチェックをしてみます。

第一の矢の金融政策は、日本銀行が量的・質的金融緩和で大量のマネタリーベースを供給しました。

f:id:prof_nemuro:20170704231817p:plain

しかし、日銀の資金供給とは銀行等の資産構成を変化させるもので、直接的に市中のマネーを増やすものではありません。 

f:id:prof_nemuro:20170704231702p:plain

マネーストック(M3)の増加ペースはQQEの前後で変わらず、増加は主に国債の増加によるものです。

f:id:prof_nemuro:20170704231807p:plain

企業は相変わらず資金余剰を続けています。

f:id:prof_nemuro:20170704231646p:plain

第二の矢の財政政策ですが、公的固定資本形成の増加は微々たるものです。

f:id:prof_nemuro:20170704231527p:plain

一般政府の資金不足は縮小しています(緊縮気味)。

f:id:prof_nemuro:20170704231622p:plain

リフレ派の代表的論客で現在は日銀審議委員の原田泰が言うようにやってみたたものの、予想通りにはいかなかったようです。

ironna.jp

公共投資を減少させるとGDPは増大する関係があるということである。

1980年代以降のデータを虚心に見ても、財政政策の効果が小さくなっているのは明らかであり、金融政策だけでも、景気は刺激されるとわかった。*1

誇大宣伝の金融政策と財政政策に比べると、第三の矢の成長戦略は着実に前進しています。

固い、岩盤のような日本の規制を、私自身をドリルの刃として、突き破ろうと思っています。今度こそ、日本をいい国、強い国にして、次の世代に渡すことができないようでは、いままで生きてきた意味がありません。*2

新しい成長戦略でも、岩盤のように固い規制や制度に果敢にチャレンジしました。多様な働き方を実現する労働制度改革や能力ある外国人材の活用に踏み込みます。60年ぶりに農協の抜本改革を断行します。医療でも患者本位の新しい制度を導入します。国家戦略特区も規制改革のメニューをさらに増やし、速やかに実行に移してまいります。*3

成長戦略は多岐にわたりますが、その一つの「観光立国」では訪日外客数の激増を達成しています。

f:id:prof_nemuro:20170704231455p:plain

その主因は変動相場制移行後の最低水準までの大幅円安(日本の大安売り)です。

f:id:prof_nemuro:20170704231718p:plain

規制緩和」も寄与しています。

住民の生活は二の次です。

www.asahi.com

www.sankei.com

成長戦略の目玉の国家戦略特区なるものへの疑念も強まってきたようです。*4

安倍首相のいう「世界で一番ビジネスがしやすい環境」の実像が見えてきたのではないだろうか。それは、労働基準法など整備されていなかった時代、あるいは人権意識が希薄で搾取が横行する開発途上国のような状況だ。SEZ*5は本来、途上国に設置されて効果を発揮するものだが、国家戦略特区構想は日本を途上国並みの労働環境に逆戻りさせようというものなのだ。

国にも、国民にもメリットがない。負担は国民と国民が支える国家へ、利益は企業へ。これが国家戦略特区の正体である。

安倍首相が執念を見せる成長戦略の目標は、一般国民が「今日よりも明日の生活が良くなると実感できる日本経済を取り戻」すことではなく、世界中のお友達の儲けを増やすために国民生活を守る「岩盤規制」を破壊することのようです(←「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」)。

今日は、皆さんに、「日本がもう一度儲かる国になる」、23年の時を経てゴードンが金融界にカムバックしたように、「Japan is back」だということをお話しするためにやってきました。*6

一般国民は蚊帳の外であるにもかかわらず、「安倍政権は経済重視」のイメージがあるのは、株高のためではないかと思われます。

ファンダメンタルズの企業利益は史上最高水準にありますが、これは人件費の抑制と表裏一体です。財務省「法人企業統計(四半期別調査)」によると、1997年度→2016年度で全産業(金融業、保険業を除く)の人件費は8.6兆円減、経常利益は44.5兆円増です。 

f:id:prof_nemuro:20170704231410p:plain

f:id:prof_nemuro:20170701192232p:plain

需給面では、年金積立金と日本銀行が買い手になっています。

f:id:prof_nemuro:20170704235235p:plain

f:id:prof_nemuro:20170704231128p:plain

安倍首相の「経済重視」とは企業・グローバル投資家・グローバルエリートを儲けさせる(レントシーキングしやすくする)ことで、それを「経世済民」のように印象操作してきたのがアベノミクスだったと言えそうです。*7

大企業の業績回復の果実が、国内の中小・小規模企業、そして、その従業員の皆さんに、行き渡らないようであれば、アベノミクスは失敗であると、私は考えています。*8

totb.hatenablog.com 

totb.hatenablog.com

*1:金融政策とはマネタリーベース供給を増やすこと。

*2:2013年6月19日

*3:2014年6月24日

*4:「岩盤規制」という印象操作。

*5:[引用者注]Special Economic Zone(特別経済区)

*6:2013年9月25日

*7:第一の矢と第二の矢は第三の矢のカモフラージュ。

*8:2013年12月19日