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リフレ派と豚

東日本大震災の直前に衆議院財務金融委員会で白川日本銀行総裁(当時)を罵倒するなど、政界における日銀批判の急先鋒=リフレ派の代表格だった山本幸三地方創生担当大臣が、

獣医学部をつくって獣医師を増やせば、ペット診療の「価格破壊」が起きて小動物獣医師の給与が下がり、相対的に給与が低いとされる公務員獣医師の不足が緩和されるという持論を述べた。

と、かつてリフレ派が批判していた構造改革派と同様の価格破壊・賃下げを主張していることが話題になっています。山本大臣以外の有力なリフレ派論客も、TPPや農協解体、解雇規制緩和などを熱烈に支持する構造改革派そのものになっています。

このリフレ派の「転向」に困惑している人もいるようですが、リフレ派を初期からウオッチしていれば何ら不思議ではありません。*1

例えば、リフレ派として有名な二人の経済学者は、2001年の著書に次のように書いていました。

構造改革論の誤解

構造改革論の誤解

われわれ自身は、90年代の日本で進展したさまざまな制度改革、すなわち、規制緩和行政改革、金融ビッグバンなどの意義を大いに評価している。また、2001年4月に、国民の圧倒的支持を背景に成立した小泉政権のもとで進められている一連の改革、すなわち、特殊法人公益法人改革、都市再生計画、公的金融機関の見直し、財政支出の見直し等についても、それを熱烈に支持している。つまりわれわれは、構造改革そのものには大賛成なのである。

この頃はデフレが不況を深刻化する危険性があったため、リフレ派は「構造改革は後回しにして今は大規模金融緩和を」と主張していたわけです。しかし、「構造改革そのものには大賛成」である以上、不況の深刻化の懸念がなくなれば構造改革支持の地が出てくるのは必然です。*2

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いわゆる構造改革に反対する人は「敵の敵は味方」ということでリフレ派を「決定的に裏切ることはない」同志と思っていたのでしょうが、その本質は『動物農場』の豚と同じだったということです。*3

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)

ナポレオンが独裁者としてどんなにひどいまねをしても、四本足であるかぎりは、仲間なのだから、じぶんたちを決定的に裏切ることはないと動物たちは信じている。だからこそ、ほかの豚たちといっしょに、ナポレオンみずからが、前足に鞭をもち、二本足でのったりと歩き出す問題の場面(第十章)は、他の動物たちにとって、驚天動地の出来事なのである。*4

参考 

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より2016年の職種別年収上位*5

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日銀につぶされた日本経済

日銀につぶされた日本経済

*1:野口旭がHotwiredに連載していた「ケイザイを斬る!」を読んでリフレ派に入信した人も多いのではないでしょうか。

*2:リフレ政策が思っていたような効果を上げなかったために、活路を求めて構造改革への傾斜を強めているとも考えられます。

*3:通常の悪口としての「豚」の意味ではないので誤解のないように。

*4:訳者解説より。

*5:年収=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与・特別給与額

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