Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

金融に乗っ取られて貧しくなっていく日本経済

過去20年間の日本経済の相対的凋落(と中国の急成長)は劇的です。

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その直接の理由は、金融危機が発生した1997年を境に、名目GDPが上昇トレンドから「ボックス相場」に移行したことです。 

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経済成長のパターンを「貿易財産業における技術進歩→生産性向上→賃金上昇→非貿易財産業の賃金上昇→非貿易財(サービス)価格上昇→サービスの財との相対価格上昇(ボーモルのコスト病)」として、日本経済のどこにトラブルが発生したのかを分析します。

サービスの財との相対価格は2003年から上昇を止めています。

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トレンドが続いていれば、2016年度は現実値から1.2倍弱になっていました。消費者物価指数に占めるサービスのウェイトは約50%なので、CPI総合は1.1倍です。

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日本経済は1997年あるいは2003年に構造変化を起こしていることが示唆されますが、1998~2002年は企業がバブルの後始末のデレバレッジ(「三つの過剰」の解消)と、新たな環境に適応するためのリストラを進めた時期です。

白川前日銀総裁は、リストラの一環の人件費抑制・削減がサービス価格のインフレ率低下とデフレを招いたと分析していました。

日本とアメリカのインフレ率の違いというものを過去十数年間分析してみますと、九割方が財ではなくてサービスでございます。

サービスの値段がなぜ下がっているかということ、もちろんいろいろな要因がございます。そのうちの一つの要因として、サービスというのは、これは御案内のとおり、労働集約的な活動が多いということで、賃金の影響を大きく受けるわけでございます。*1

財務省「法人企業統計」からは、

  • 1997年度以降、利益は低迷、人件費と設備投資の抑制が続く
  • リストラが一巡した2003年度以降、利益は急増するが人件費と設備投資の抑制が続く

ことが確認できます。

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付加価値のうち、営業純益だけが突出して増加しています。

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その結果、労働分配率は第一次石油危機後の最低水準に落ち込んでいます。

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一方で、利益率は高度成長期並みの高水準に上昇しています。

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2003年頃から労働者が企業と株主に一方的に「搾取」される状況になっていますが、この背景には、橋本龍太郎首相の金融ビッグバン*2によって日本に浸透した「企業の唯一の目的は株主価値の最大化」という考え方(株主資本主義)があります。

株式投資家の要求を集大成した経済産業省の「伊藤レポート」は、当然のことながら投資家から歓迎されています。

business.nikkeibp.co.jp

diamond.jp 

藤野 もう僕はこのレポートを読んで本当に驚きました。僕が常々思っていたこと、そして、ことあるごとに言ってきた問題点と処方箋が書かれていたからです。こんなに実情に合ったレポートを読める日がくるとは、とまさに衝撃でした。

藤野 伊藤レポートでは日本企業のROEの低さを問題視し、欧米並みのROE、つまり最低でも8%を目指すべきだという指針を強く打ち出しています。

村上 父はもともと通産省でずっと国益を最優先に考えながら働いてきた人間なんです。その中で、上場企業にコーポレートガバナンスを浸透させるという仕事もしていました。そのように、「上場企業のあるべき姿を追及して世の中を変えたい」という強い思いで動いていたことを知っていたので、そこが世間には違う形で伝わっているのは非常に残念な気持ちでした。*3

伊藤レポートはアベノミクス第三の矢の成長戦略にも反映されていますが、このことは、安倍政権が投資ファンドが儲かるようなことを国益と見なしていることを意味します。アベノミクスとは日本国民ではなくグローバル投資家の側に立った経済政策ということであり、日本の中枢が私益を追求する投資ファンドに乗っ取られたとも言えます。*4

今日は、皆さんに、「日本がもう一度儲かる国になる」、23年の時を経てゴードンが金融界にカムバックしたように、「Japan is back」だということをお話しするためにやってきました。*5

もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。

「Buy my Abenomics」

ウォール街の皆様は、常に世界の半歩先を行く。ですから、今がチャンスです。 

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政治家はグローバル投資家のエージェントであり、日本の一億二千万人の生活や、よりよい就業機会に責任を持つ時代は過ぎ去りました。*6

日本は悪くない―悪いのはアメリカだ (文春文庫)

日本は悪くない―悪いのはアメリカだ (文春文庫)

忘れてはならない基本的な問題は、日本の一億二千万人の生活をどうするか、よりよい就業の機会を与えるにはどうすべきか、という点なのである。

資本金十億円以上の企業の2015年度のROEは7.4%なので、株式投資家の「最低でも8%」の要求は「今後も人件費の抑制を続けよ」を意味します。

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危ういROEブーム (週刊エコノミストebooks)

危ういROEブーム (週刊エコノミストebooks)

現在のような環境下で企業がROEを高めることを至上命題としてしまうと、本来必要なはずの設備投資を減らしたり、人員削減やコストカット、企業の合併・買収(M&A)を進めたりするなど、手っ取り早く結果を求める方法が採用されやすくなる。*7

ROEは企業が株主から要求される「金利」として捉えることもできるから、実力以上のROEの水準が求められているとすれば、事実上の「引き締め」を招く。*8

パイが一定なら、「ROEを上げよ」「賃金を上げよ」という両方の要求を実現するのは無理。であれば、声の大きいほうが勝つ。*9

ROEに縛られて、ゼロから研究開発をしなくなった企業は、M&Aを重視する経営へと変質せざるを得ません。研究開発や内部留保に充ててきた利益は、すべて配当に回すように株主から求められます。こうなれば、産業界全体に投入される研究開発の資金や機会が減り、新しい技術や産業は生まれなくなります。これが「株主資本主義」の帰結です。

北野や原が指摘するように、企業は設備投資からM&Aにシフトしています(固定資産の主体が有形固定資産から株式へ)。

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国民(労働者)が国内外の株式投資家に搾取される国が経済成長できない敗者になるのは必然ですが、これが橋本~小泉~安倍と20年間続くワシントン・コンセンサス的改革の成果です。*10

www.bloomberg.co.jp

潤沢な資金を持つ強者対安い賃金で働かされる弱者ー。国際通貨基金IMF)は日本の企業と被雇用者の関係をこのようにみる。労働市場のこの問題に対策を講じなければ日本全体が敗者になると、対日審査責任者のリュック・エフェラールト氏が指摘した。

幻滅 〔外国人社会学者が見た戦後日本70年〕

幻滅 〔外国人社会学者が見た戦後日本70年〕

官庁、大企業が社費で、毎年、新社員の一番優秀な人を幾人か、ときどきはヨーロッパだが主として米国へ、MBAや経済学・政治学修士・博士号をとりに送られた人が大勢いた。

その「洗脳世代」の人たちが、いよいよ八十年代に課長・局長レベルになり、日本社会のアメリカ化に大いに貢献できるようになったというわけだ。

ケインズの警告が的中しています。

ケインズ『一般理論』第24章

知的影響から自由なつもりの実務屋は、たいがいどこかのトンデモ経済学者の奴隷です。虚空からお告げを聞き取るような、権力の座にいるキチガイたちは、数年前の駄文書き殴り学者からその狂信的な発想を得ているのです。こうした発想がだんだん浸透するのに比べれば、既存利害の力はかなり誇張されていると思います。もちろんすぐには影響しませんが、しばらく時間をおいて効いてきます。というのも経済と政治哲学の分野においては、二十五歳から三十歳を過ぎてから新しい発想に影響される人はあまりいません。ですから公僕や政治家や扇動家ですら、現在のできごとに適用したがる発想というのは、たぶん最新のものではないのです。でも遅かれ早かれ、善悪双方にとって危険なのは、発想なのであり、既存利害ではないのです。*11

民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる

民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる

国を内部から崩壊させるための活動は、スパイと新秩序のイデオロギーを信奉する者の秘密地下組織をつくることから始まる。この地下組織は、最も活動的で、かつ、危険なメンバーを、国の政治上層部に潜り込ませようとするのである。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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*1:2011年3月の衆議院財務金融委員会における日本銀行の白川総裁(当時)の発言。

*2:外患誘致

*3:赤字は引用者。

*4:自民党が支持基盤を「大企業+ドメスティックな中小企業・各種団体(農協等)」から「グローバル企業・投資家」に転換したということ。大企業がグローバル化して「日本を卒業」したことで、対立軸が「国内―海外」から「グローバル勢―ドメスティック勢」に変化しています。自民党を支持してきたドメスティックな業界は「岩盤規制」に守られた抵抗勢力に認定されてしまいました。

*5:2013年9月25日ニューヨーク証券取引所における安倍首相スピーチ

*6:先日、フランスのマクロン大統領は人々を"les gens qui réussissent et les gens qui ne sont rien"(成功者と“無”の人)に二分しています。マクロンにとって“無”の人々はどうでもいい人々なのでしょう。

*7:北野一(バークレイズ証券マネージングディレクター)の発言。

*8:[引用者注]国債金利の低下は実力の低下、ROE国債金利のスプレッド拡大は実力以上のROE追求=引き締めを意味します。

*9:[引用者注]声の大きいほう=株主

*10:バブル崩壊不良債権問題による経済混迷→株主資本主義という毒を薬と思って飲む→体調が悪化する→さらに薬の量を増やす→死亡?

*11:強調は引用者、以下同。具体的には誰になるかを考えてください。