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企業の財務戦略~金融危機の前と後

脇田成は企業の行動が1997年の金融危機を境に変化したことが、マクロ経済の慢性的需要不足を招いたと指摘していました。

賃上げはなぜ必要か: 日本経済の誤謬 (筑摩選書)

賃上げはなぜ必要か: 日本経済の誤謬 (筑摩選書)

以前は①企業利潤が上昇後、

  • ②人件費を先導に、③企業純資産、④設備投資の3者がバランスよく上昇していたが、
  • 98年度以降、経験法則が崩れ、優先度が②純資産、③設備投資、④人件費の順になった

まとめると金融危機対応モードの後遺症から、大きく分けて、

自己資本の増大、つまり企業貯蓄増大による需要減少効果

②人件費が増大しないため、需要不足で生じる過剰設備

という2つの「合成の誤謬」 問題が生じたわけです。 

企業行動の変化を財務省「法人企業統計」からグラフで確認します。*1

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人件費と設備投資に比べて、株主の取り分(配当金と内部留保)が著しく増えています。

脇田はこれを「金融危機対応モードの後遺症」としていますが、1998~2002年度のリストラ完了後も延々と続いていることは、理由が別にもあることを示唆しています。

下は三菱重工業の「MHIレポート2016」からCFOメッセージの抜粋ですが、

当社グループは依然成長過程にあるため、積極的な成長投資のシーズマネー確保およびリスクバッファを考慮して、自己資本は引き続き増強していく考えです。一方で、株主価値の最大化に向けては資本効率の向上も不可欠だと認識しており、2015事業計画では2017年度のROE10.2%を目標に掲げています。

つまり現在の当社は、自己資本を厚くしながら、同時に収益性を改善し、ROEを向上させるステージにあると考えています。このためには、収益性の高い事業を見極めて重点的に経営資源を投入することと同時に、収益性が低い事業やリスクに見合わない事業を十分に検証して投入する資源を絞る、つまりは事業の選択と集中が重要だと考えています。*2

日本企業が全体として

の両立を目指すようになったとすれば、日本経済が2つの「合成の誤謬」 問題による慢性的需要不足に陥ったことを合理的に説明できます。日本経済停滞の主犯は日銀でも財務省でもなく、企業の黒幕のグローバル投資家ということです。

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より合理的な異論・反論があればよろしくお願いします。

補足

アクティビストのポジショントーク

toyokeizai.net

内部留保をしすぎた結果、自己資本は日本企業の全社合計で約500兆円規模に達している。これだけのおカネが企業内に滞留しているというのは、貯めすぎだと思う。500兆円のうち2割か3割、100兆〜150兆円は減らしていいだろう。それだけのおカネが社会に回れば、経済全体に良い資金循環が生まれるのではないか。

人件費を抑制して増やした内部留保を減らすのであれば、株主ではなく従業員に還元するのが道理でしょう。消費税減税よりもはるかに強力な景気刺激策になります。

(家計から企業への大規模な所得移転⇩)

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totb.hatenablog.com

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*1:対象は全産業(金融業、保険業を除く)の全規模

*2:強調は引用者。