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物価目標先送りの「原因と結果」

岩田規久男日本銀行副総裁(2016年度の報酬は2775万2千円)は2013年3月22日の就任記者会見で

2年経って、2%がまだ達成できない、2%近くになってもまだ達成できていない場合には、まず果たすべきは説明責任だと思います。ただ、その説明責任を自分で果たせないということ、単なる自分のミスジャッジだったということであれば、最高の責任の取り方は、やはり辞任だと思っています。

と述べていましたが、2年でマネタリーベースを2倍に増やしてCPI上昇率2%を目指した量的・質的金融緩和は、4年でマネタリーベースを3.5倍にしても2%を達成できず、先送りを続けています。

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QQEの前後でマネーストック(M3)の増加ペースは変わらず、増加も政府向け信用(≒国債)増加によるものです。

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この事態を

  1. マネタリーベース供給が足りない(リフレ派の診断)
  2. デフレあるいはディスインフレの原因はマネタリーベース不足ではない

のどちらと判断するかですが、リチャード・クーは正常な人であれば2を選ぶだろうと書いていました。医師(リフレ派)は藪医者だったということです。

The Holy Grail of Macroeconomics: Lessons from Japan?s Great Recession

The Holy Grail of Macroeconomics: Lessons from Japan?s Great Recession

At the risk of belaboring the obvious, imagine a patient in the hospital who takes a drug prescribed by her doctor, but does not react as the doctor expected, and, more importantly, does not get better. When she reports back to the doctor, he tells her to double the dosage. But this does not help, either. So he orders her to take four times, eight times, and finally a hundred times the original dosage. All to no avail. Under these circumstances, any normal human being would come to the conclusion that the doctor's original diagnosis was wrong, and that the patient suffered from a different disease. 

多くの経済学者やエコノミストは金融政策と財政政策に原因があると思い込んでいるようですが、デフレとの関係が強く疑われるのは、1997年秋の金融危機後の構造改革と企業行動の激変です。*1

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企業の

  • 自己資本比率の引き上げ
  • 資本効率の向上(←株主重視)
  • 人件費の抑制

は、マクロ的には強烈な「緊縮政策」として作用します。つまり、企業の黒字化・純負債削減を引き起こした構造改革こそデフレの原因ということです。

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これに消費税率引き上げや公共事業削減が追い打ちを加えたとすれば、日本経済が1997年度から長期停滞に陥ったことを合理的に説明できます。日銀は無関係なので、QQEにはプラセボ効果しかなかったわけです。*2

失われた〈20年〉

失われた〈20年〉

「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」*3

(⇧雇用や日本経済が滅茶苦茶になったのは、このような思想=株主資本主義が支配的になったため。)

詳しくは関連記事を参照してください。

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

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参考

Yamagata Column in Voice 2010/01

さて、この処方箋は簡単だ。インフレ期待を起こせばいい。これほど簡単なことはない日本銀行がお金をいっぱい刷り、これからも当分そうしますよ、と言えばいい。*4

インフレ期待を高めて景気を回復しろ、デフレはまずいぞ、という理論をメジャーにしたのは、昨年ノーベル賞を取ったポール・クルーグマンだ。それをいちはやく日本に紹介したのは、ぼくの人生の数少ない自慢の一つだ。

というわけで、読者諸賢におかれましては、とにかくデフレはよくないもので、日銀がその気になればすぐに解決できるんだということだけでもこの一文から読み取っていただければ幸甚。

岩田さんと黒田さんとスティグリッツさんの話

断言しましょう。大変な好景気がやってきます。バブルを知らない若い世代は、これを見てビビって目を回すでしょう。

次の総選挙は、消費税引き上げ後の多少の混乱を乗り越えたあとの、絶好調の好景気の中で迎えることになります。

クルーグマンバーナンキ浜田宏一、中原伸之と、日銀を罵倒していたリフレ派の教祖たちが、信者を置き去りにして続々と脱会しています。ヴゥードゥー経済学で「失われた20年」からの脱却を妨げた藪医者を一人挙げるとすれば、文句なしにクルーグマンです。

totb.hatenablog.com

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*1:グラフは財務省「法人企業統計」より全規模・全産業(金融業、保険業を除く)について。

*2:財政出動は対症療法にはなっても原因療法にはならないということ。

*3:1994年2月25日の「舞浜会議」におけるオリックス・宮内社長の発言。

*4:強調は引用者、以下同。