Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

アベノミクスのファクトチェック

安倍内閣総理大臣は8月3日の記者会見で

最優先すべき仕事は経済の再生です。安倍内閣は、これからも経済最優先であります。

4年間のアベノミクスにより、雇用は200万人近く増え、正社員の有効求人倍率も1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず一つ以上の正社員の仕事がある。政治の大きな責任を果たす。やっとここまで来ることができました。

アベノミクスの「成果」を強調するとともに、経済最優先の方針を改めて示しました。

自由民主党の役員も同調しています。

高村副総裁

先ほど役員会で総裁に、総裁の5月3日の憲法発言は憲法論議を党内外で活性化させるのに大変よかったけれども、これからは党にお任せいただいて、これからは内閣としては経済第一でやっていただきたいとお願いしてきたところであります。

岸田政務調査会長

今日までアベノミクスは雇用の創出や賃金、あるいはGDPにつきましても大きく膨らんでいくなど、大きな成果が挙がっていると認識をしております。そして、ぜひこの政策をしっかり進めながら成長と分配の好循環を完成させなければならない。このように思っています。

そこで、アベノミクスの成果について検証します。

2012年12月の安倍首相就任直後から就業者数が増加に転じたことは事実ですが、これがアベノミクスの成果というよりも「タイミングが良かった」のではないかという指摘があります。

就業者数の増加が始まったのは、13年初めである。政策が効果を発揮するには時間的なラグが存在する。就業者数のラグは、他の多くの経済指標よりも、長いであろう。ところが、安倍政権が始まるといきなり就業者数が増加し始めたのである。これは逆に安倍政権成立前には、就業者数の増加の準備ができあがっていたことを示すであろう。

2012年平均と2016年7月~6月平均の就業者数を比べると、男+42万人、女+175万人です。一般的に、女が働く主な理由は「家計を支えるため」なので、女の就業者急増は、依然として家計にゆとりがないことの反映とも考えられます。

f:id:prof_nemuro:20170804234920p:plain

有効求人倍率の上昇も事実ですが、民主党政権時からのトレンドが継続しているだけです。

f:id:prof_nemuro:20170804235017p:plain

分子の有効求人と分母の有効求職者も、安倍首相の就任前後でトレンドに変化はありません。

f:id:prof_nemuro:20170804235248p:plain

f:id:prof_nemuro:20170804235133p:plain

f:id:prof_nemuro:20170804235206p:plain

「織田がつき羽柴がこねし天下餅 座して喰らふは徳の川」という言葉がありますが、安倍首相は徳川家康のように時系列的に運に恵まれていたということでしょう。

安倍首相は2013年12月19日には 

大企業の業績回復の果実が、国内の中小・小規模企業、そして、その従業員の皆さんに、行き渡らないようであれば、アベノミクスは失敗であると、私は考えています。

と述べていましたが、財務省「法人企業統計」から全産業(金融業、保険業を除く)の人件費・経常利益・設備投資を資本金規模別に比較すると、

f:id:prof_nemuro:20170805000417p:plain

f:id:prof_nemuro:20170805000435p:plain

f:id:prof_nemuro:20170805000158p:plain

失敗と判断せざるを得ません。

名目GDPも税を除くとリーマンショック前の水準に戻っただけで「大きく膨らんで」はいません。

f:id:prof_nemuro:20170804235842p:plain

就業者1人当たり実質GDP(≒労働生産性)の伸び率はほぼゼロです。

f:id:prof_nemuro:20170804235427p:plain

昨日の記者会見では第一の矢「大胆な金融政策」と第二の矢「機動的な財政政策」の言及はなく、第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」による一点突破を図るようですが、

構造改革こそがアベノミクスの最大の武器であります。突破力のある人材を積極的に登用し、時代のニーズに応える改革を断行いたします。

自民党内の若手(?)議員からも疑念を呈されています。

この20年間の経済政策のキーワードは「緊縮財政」「規制緩和、自由化」「グローバル化」でした。実際にこれらの政策は少なからず実現されています。しかし、その結果、日本経済は停滞したままなのです。「何かが間違っている」と考えるべき時に来ています。

ちなみに、安倍首相が構造改革の突破口に位置付けている国家戦略特区の有識者等からの「集中ヒアリング」で、*1

規制改革のショーケースとなる特区も、総理大臣である私自身が進み具合を監督する「国家戦略特区」として、強い政治力を用いて、進めます。*2

このような人物が大量の提案をしていることには要注意です。

ロバート・フェルドマン - Wikipedia

具体的に必要な改革とは何か。私は大きく分けて、1)労働市場改革の仕切り直し、2)規制改革と民営化の加速、3)審議会の少数精鋭化など合理的な政策決定システムの再構築、4)政策決定・運用プロセスの透明性向上策、5)より大胆な法人減税、6)予算支出の再配分、7)内閣改造後の経済優先姿勢、の7つのシグナルを新たに発する必要があると考える。

既得権益化した(特に大企業の)正社員雇用システムは、企業や経済の競争力を損ね、ゾンビ化を招いてしまっている。

構造改革で得するのは誰でしょうか。これまでのところ、アベノミクスは大企業と投資家にとっては大成功でしたが。

「日本を、取り戻す。」とか「経済で、結果を出す。」といったスローガンが、現実に達成されなければされないほど、まさにそのことによって、国民は「日本は取り戻せる」「経済で結果は出る」と信じたくなるのではなかろうか。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

*1:首相官邸トップ>会議等一覧>地方創生推進室>国家戦略特区ワーキンググループ>有識者等からの「集中ヒアリング」

*2:2013年7月26日