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Googleを解雇されたエンジニアの主張はニセ科学か?

Googleは男女の先天的な分布の違いをダイバーシティに反映させるべき」とのメモを作成したエンジニアJames Damoreは解雇されてしまいましたが、原文が公開されたことで、マスメディアの"anti-diversity"や「根拠を欠いた一方的な内容」などの報道がフェイクニュースであることが明らかになりました。*1

https://firedfortruth.com/

I value diversity and inclusion, am not denying that sexism exists, and don’t endorse using stereotypes. When addressing the gap in representation in the population, we need to look at population level differences in distributions. If we can’t have an honest discussion about this, then we can never truly solve the problem.

要するに、こういうことです。

男性と女性は本来、全く違うんです。同じようにしたら歪みが出てくるんは当たり前です。

Damoreはジョナサン・ハイトを参考にしたということです。

メモの内容に賛成・反対双方の専門家に取材して形式的にはバランスを取った報道も出てきました(実質的には誘導していますが)。

www.bbc.com

進化心理学者のジェフリー・ミラーは極めて肯定的です。

Geoffrey Miller, the evolutionary psychologist, told the BBC that Mr Damore got "most of the science right" and showed "pretty good judgment about what we know and what we don't know".

恋人選びの心―性淘汰と人間性の進化 (1)

恋人選びの心―性淘汰と人間性の進化 (1)

Quillette Magazineへの投稿では、男女差に関する専門家であるミラーが概ね正しいと認めるメモを、ダイバーシティ担当VPのダニエル・ブラウン(MBA/女)をはじめとする門外漢がニセ科学と断定したことへの皮肉を交えて詳しくコメントしています。*2*3

An anonymous male software engineer recently distributed a memo titled ‘Google’s Ideological Echo Chamber’. Within hours, this memo unleashed a firestorm of negative commentary, most of which ignored the memo’s evidence-based arguments. Among commentators who claim the memo’s empirical facts are wrong, I haven’t read a single one who understand sexual selection theory, animal behavior, and sex differences research.

When the memo went viral, thousands of journalists and bloggers transformed themselves overnight from not understanding evolutionary psychology at all to claiming enough expertise to criticize the whole scientific literature on biological sex differences. 

For what it’s worth, I think that almost all of the Google memo’s empirical claims are scientifically accurate.

マッケンローの「セリーナ・ウィリアムズが男子ツアーに参戦すればランキングは700位程度」のコメントにもSJWの批判が殺到しましたが、専門家を納得させる根拠に基づいたものは皆無だったようです。今回のGoogle騒動も同じということでしょう。

改めてメモの妥当性ですが、ドリーン・キムラの指摘に基づき、数学の才能と興味の男女差について検証します。

なぜ理系に進む女性は少ないのか?: トップ研究者による15の論争

なぜ理系に進む女性は少ないのか?: トップ研究者による15の論争

いくつかの科学の分野で女性数が少ないことは、両性の間にある生まれつきの才能と興味の差によるものであることを裏づけるエビデンスは強力だ。*4

SMPY研究によると、数学分野を自分で選ぶ若い女性は数学の適性検査では確かにしばしば男性よりずっと優秀ではあるが、特に数学が重視されない分野の方を選ぶ。このことから、才能だけではなく、数学指向の活動に対する興味に関して両性で分布に差があることが示唆される。さらにそれは、工学や物理学のように数学の高い学位が必要な科学分野で女性が少ないことを意味するであろう。

15歳を対象とした2015年のPISA(学習到達度調査)では、35か国中6か国(フィンランド、韓国、ノルウェースウェーデンラトビアアイスランド)で数学的リテラシーの平均点が女>男となりました。これを「潜在的には女≧男」の根拠にする人もいるようです。

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しかし、これらの国々では、読解力で男が女を大きく下回ります。

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奇妙なことに、読解力の差の小ささはほぼ決まって、男子が優位な数学での大きな開きを伴う。

その逆もまた真実だ。数学において女子のレベルを男子と同等に引き上げたアイスランドノルウェースウェーデンは、不自然なほど大きな読解力の男女差に苦しんでいる。

OECDが最後に大規模な研究を行った2003年以降、一部の国では男子が読解力において女子に追いつき、その他の国では、女子が数学での差を大きく狭めた。しかし、両方を成し遂げた国は1つもない。 

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この「奇妙なこと」の最も合理的な説明は、

  • 数学的リテラシー潜在的才能は平均的に男>女
  • 読解力の潜在的才能は平均的に女>男
  • 北欧諸国は女をエンパワーすることで数学の男女差を逆転させたが、これは男をネグレクトすることでもあったため、読解力の男女差が拡大した(これがリベラルが大好きなフィンランドの教育の正体)*5

となるでしょう。*6

The War Against Boys: How Misguided Policies are Harming Our Young Men

The War Against Boys: How Misguided Policies are Harming Our Young Men

なお、読解力ではすべての国で女>男ですが、これを「男が抑圧されている証拠」「男にもっと教育を」と叫ぶリベラルは皆無同然です。この非対称性についてもDamoreは指摘していました。

Men’s problems are more often seen as personal failings rather than victimhood,, due to our gendered idea of agency.

こちらの記事では、先進国ではコンピュータサイエンスを専攻する女は少ないものの、インドやマレーシアでは50%超だったことを、男女差が先天的なものではないことの証拠としています。

Prof Dame Wendy Hall, a director of the Web Science Institute at the University of Southampton, points to the wide variation in gender ratios in computing internationally, which she argues would not be seen if there were a universal biological difference in ability between the sexes. While only 16% of computer science undergraduates in the UK – and a similar proportion in the US – are female, the balance is different in India, Malaysia and Nigeria.

しかし、この主張はメモの中で反駁されています。*7*8

Note that contrary to what a social constructionist would argue, research suggests that “greater nation-level gender equality leads to psychological dissimilarity in men’s and women’s personality traits.” Because as “society becomes more prosperous and more egalitarian, innate dispositional differences between men and women have more space to develop and the gap that exists between men and women in their personality becomes wider.” We need to stop assuming that gender gaps imply sexism.

やわらかな遺伝子 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

やわらかな遺伝子 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ずいぶん皮肉な話だが、社会が平等になるほど、先天的な要因が重要になる。だれもが同じ食料を手に入れられる世界では、背丈や体重の遺伝性が高くなる。・・・・・・同様に、だれもが同じ教育を受けられる世界では、最高の仕事は、生得的な才能が最も高い人のものになる。これがつまり、実力社会という言葉の意味するところなのである。*9

教訓:公平な社会では「生まれ」が強調され、不公平な社会では「育ち」が強調される*10

インドやマレーシアやナイジェリアは先進国よりもはるかに性別分業の規範が強いため、女は自由に職業を選択できるわけではありません。ところが、IT産業は新しい産業であるため、「女の仕事ではない」という抑圧が強くありません。そのため、意欲のある女が多く集まり、女の割合が高くなるのです。*11

一方、先進国の女はナイジェリアのように抑圧されていないため、幅広い選択肢から自分の興味に応じて専攻を選べます。先進国ではほぼ共通して、女は人文社会系と理系では医学・生物学に集まる傾向があります。昔は男カルチャーが蔓延していた医学でも、近年では女の割合が高まっていることは、IT分野の女の少なさは「興味の乏しさ」の反映であることを強く示唆します。

In fact, in the west, female participation in computer science has plunged since the mid-80s, while female participation in medicine and other scientific fields has increased steadily.

実際、PISA2015で数学リテラシーで女が男を最も大きく上回ったフィンランドでも、ICT専攻の80%以上は男です。

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下はデンマークのものですが、この男女比のグラデーションを社会的抑圧によるものとするのは無理筋でしょう。

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男が多い学科と女が多い学科を各10ピックアップしたのが下のグラフですが、

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Damoreメモの内容を裏付けるエビデンスです。

Women on average show a higher interest in people and men in things 

仮に数学的才能に男女差がないとしても、興味の差の存在を否定することは困難です。社会の影響を受けていない幼少時から興味の対象に男女差が存在することには強力なエビテンスが積み重なっています。*12

ドリーン・キムラは次のように指摘していますが、男における看護や教育に相当するのが女ではITだとすれば、すべては合理的に説明できます。

看護や教育の場において男性の数が足りないと聞くことはないが・・・・・・大半の人が、これらの分野に男性が乏しいことは、男性がその才能や興味に乏しいことを反映していると考えており、実際、それはほとんど正しい。

社会全体のジェンダーフリー化が進んだ and/or 数学の平均点で女が男を上回る北欧諸国でもIT分野に女が少ないわけですが、これも性差別が原因であると言うのであれば、批判側がその根拠を示す必要があります。

興味深いのは、女が少ない仕事には土木作業員や配管工、炭鉱夫、自動車修理工、トラック運転手、漁師、さらには金融機関のトレーダーやクォンツなど他にもあるにもかかわらず、なぜかITばかりが男女差別と騒がれることです。このことは、リベラルがITを特別視していることを示唆しますが、これについては分析する価値があるでしょう。

  • 保育や看護、教育に女が多い→無問題
  • 土建や漁師に男が多い→無問題
  • 短距離走は西アフリカ系黒人が強い→無問題
  • 長距離走は東アフリカ系黒人が強い→無問題
  • アメフトはポリネシア人が多い→無問題
  • 読解力の平均点が女>男→無問題
  • 数学の平均点が男>女→深刻な性差別
  • ITエンジニアは白人の男が多い→深刻な人種差別・性差別

米国では史上初めて、白人の平均寿命が短くなっている。

傷口に塩を塗るかのごとく、白人の貧困層だけはいまだに物笑いの対象になっている。ポリティカル・コレクトネス(政治的な公正さ)のルールからも外されている。

トランプ大統領のどこが好き?

「彼がポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)じゃないところ」

注:僕はこの意見をとても多く耳にした。インタビューの少なくとも3分の1はそうだった。 

「リベラル派による暴力的、そして経済的な攻撃は問題だな。妻とわたしはベイエリアに越したばかりだが、ここにはもっと寛容で、優れたアイデアを持つ人が公平に評価してもらえる土地だと思っていた。実際には、互いがつねに他人の思想犯罪を見つけ出そうとしているようなところだったよ」

シリコンバレーは信じがたいほど異なる視点を歓迎しない」

科学よりもイデオロギーを優先した今回の解雇騒動は、地動説を否定したガリレオ裁判のようなものです。リベラルの知的退行が進んでいます。

Galileo's Middle Finger: Heretics, Activists, and the Search for Justice in Science

Galileo's Middle Finger: Heretics, Activists, and the Search for Justice in Science

⇩リベラルの教義と矛盾する科学(進化心理学)への攻撃が始まりました。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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追記

自称"Darwinian left"のピーター・シンガーも、Damoreメモの妥当性を認めた上で、解雇したGoogleを批判しています。

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

ダーウィニアン・レフトは以下のことをすべからず、、、、、

[略]

  • すべての不平等が、差別や偏見、抑圧や社会条件に原因があると決めてかかること。これらが原因であることもあるだろうが、すべての場合そうだとすることはできない

ダーウィニアン・レフトは以下のことををすべし、、、

  • 人間の本性というものがあることを受け入れ、それについてもっと知ろうとすること。そうすれば人間はどういうものかについての証拠のうち、最も利用できるものに基づいた政策が可能である

*1:このメモの主旨の一つは「男女にはIT分野での適性や関心に分布の違いがあるので、ITエンジニアの男女比が半々にならないことは性差別の結果とは言えない」ですが、多くの人がこれを「女はITエンジニアに向いていない→差別発言」と認識してしまうようです。

*2:批判者は「進化心理学ニセ科学」と断定したことになりますが、それを言うなら社会学でしょう。

*3:ミラーは、SJWの①性や人種・民族による差は存在しない、②ダイバーシティにはメリットがある、の主張が矛盾していることも指摘しています。WSJはこれを"The ‘Diversity’ Paradox"として記事にしました。

*4:は引用者、以下同。

*5:北欧の男女平等の本質は「女上げ&男下げ」ということ。男の弱者にとってはディストピア

*6:仮に平均が同じでも分散が異なると確率が異なります。例えば、平均0、標準偏差1の正規分布では、偏差値85以上の発生確率は0.02%ですが、標準偏差が1.2になると0.18%と約8倍に高まります。サマーズは数学や物理のトップ級研究者に男が圧倒的に多い理由の一つに「男は分散が大きい」というエビデンスを挙げたところ、「女は劣る」と曲解されてハーバード大学総長を辞任に追い込まれました。SJWが確率統計を理解できないことは確かなようです。

*7:例えると「実力本位で駅伝チームを結成したら東アフリカ系黒人の男が多数を占めたが、これは人種差別や性差別とは言えない」です。集団によって分布に違いがあるため、いわば当たりが出る確率も集団によって異なるということです。

*8:グローバリゼーションが各国の経済構造の違いを収斂ではなく拡大させるメカニズムと似ています。

*9:[引用者注]マラソンの世界トップスクラスが東アフリカ系黒人で占められて多様性が失われたのはこのため。

*10:[引用者注]平等と多様性はトレードオフ

*11:旧共産圏で工学系に進む女が多かったのは、進路選択に国家が介入していたため。

*12:多人数の子供を観察してきたベテランの幼稚園教諭や保育士にとっては常識。