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[グラフ]内部留保~企業規模別

財務省「法人企業統計」から全産業(金融業、保険業を除く)のいわゆる内部留保についてグラフで確認します(二つ前の記事と被ります)。

全規模の利益剰余金は1998~2016年度にかけて平均約15兆円(GDP比約3%)のペースで増加しています。

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資産側でそれに対応するのは投資有価証券と現金・預金です。

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内部留保(利益剰余金)の急増は、企業が本来の資金不足から資金余剰になっていることを意味するため、問題視されているのです。

次に、企業規模別に見ていきます。ここでは便宜的に資本金10億円以上を大企業、10億円未満を中小企業と表します。

資産合計は大企業と中小企業でほぼ半々です。

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利益剰余金もほぼ半々ですが、投資有価証券は大企業、現金・預金と土地は中小企業に偏っています。

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こちらは時系列比較。

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現金・預金が月平均売上高(月商)の何か月分を見ると、

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中小企業はリーマンショック後の急増が継続して過去最高水準、大企業はアベノミクス期に急増して列島改造ブーム、バブル期と同水準です。大企業では過剰流動性による金融資産投資ブームが生じていることが示唆されます。

大企業の資産構成比を見ると、利益剰余金が急増し始めた時期から、有形固定資産→投資有価証券への主役交代が生じています。大企業がバークシャー・ハサウェイのような投資会社、持株会社的のようなものへとリストラクチャリング(事業再構築)を進めたことが鮮明です。

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大企業の営業外収益の増加は、投資収益で稼ぐようになってきたことを示しています。

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利益剰余金の原資の営業純益が付加価値に占める割合は、中小企業よりも大企業の上昇が目立ちます。高度成長期を大きく上回る高水準です。

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必然的に、人件費が付加価値に占める割合(労働分配率)は、中小企業よりも大企業の低下が大きくなっています。

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総括すると、大企業が高利益率を目標にするようになったためにトリクルダウンが生じず、中小企業の防衛的な現預金積み増しを促進していると考えられます。

 国立国会図書館「調査と情報」の『企業の内部留保をめぐる議論』*1では

①近年の利益剰余金の増加は大企業が牽引しており、その運用先は現預金よりも海外企業に対する投資である可能性が高い、・・・・・・③ただし中小企業に限れば、利益剰余金の増加と現預金の増加は連動しており、その理由としては資金繰りの悪化への備え等の動機がある、と考えられる。

日本企業の積極的な対外直接投資の現状を見ると、M&A を始めとする対外直接投資等の原資として戦略的に現預金を保有している企業も多いのではないかと推測される。

と分析されていましたが、この状況は3年後の現在も継続中になります。

現預金と投資有価証券(と内部留保)の大幅な増加は、アベノミクスが「経済の好循環」に失敗したことを示していますが、その根本原因は大企業の海外シフト、すなわちグローバル化+株主利益最大化ということです。

totb.hatenablog.com

*1:鈴木絢子(2014)